原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その238 2020年12月821日
大飯「合格」取消判決にきちんと反論せず、基準地震動の考え方を確認して誤魔化す規制委
〜総ての原発を止め、基準を作り直し、審査をやり直せ〜
 12月4日の大飯3,4号機設置許可取消判決(大阪地裁、森鍵裁判長)は、多くの専門家から批判され続けていた原子力規制委員会の「新規制基準」と基準地震動策定にとどめを刺すものだ。訴訟団にブラボーと言いたい。 その後、原子力規制委員会は12月9日の定例会議のトピックスで話題にし、石渡委員が「ガイドの文章そのものも誤解を招くような文章になっているのではないかという感じはいたします。」とまで発言した。 そして、次の週16日の定例会議で「議題3 基準地震動の策定に係る審査について(案)」を論じ、原子力規制庁担当が用意した「1.基準地震動の策定に係る審査の基本的考え方」、「2.大飯発電所の基準地震動の策定に係る審査」の文章を元に、「ばらつき」とか「不確かさ」の議論をして、作文・修正をし、修正文を原子力規制委員会の見解とした。 これらの議論は何だろう? 判決に対して何ら言及することなく、反論することなく、自分たちの基準・ガイドについて、作文して見解を示しただけだ。他の原発への影響を避ける為の全く姑息な会議だ。 地震審査ガイドに誤りがあるのであれば、直ちに誤りを正すべきだ。総ての原発の「合格」を取り消し、総ての原発を止め、ガイドをつくり直してから再審査するべきだ。

 当然、記者会見でも多くの記者から糾弾された。【12月9日記者会見から】◆更田委員長 我々の審査に何らかの過誤も欠落もなかったと考えており、その判断に自信を持っています。(地震審査)ガイドは言ってみればサービス。◆記者 このガイドの中の不確かさとばらつきの部分の相当な過誤というか誤解が生じてしまっているような気がする。◆更田委員長 ガイドを修正するといっても、それは飽くまで表現の修正であって、技術的・科学的な中身に関して変更しようと考えていることは全くありません。◆記者 判決要旨で、この地震モーメントの値なんだかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなくと書かれている。ほかの原発審査でも検討されていないのであれば、…繰り返される恐れがある。こういう検討について、もう一度し直すお考えはないのでしょうか。◆記者 樋口英明裁判長のときに、実際にそういう予想をはるかに超える地震が何度も起こっているじゃないか。◆更田委員長 基準地震動だって無限大にするわけにはいかない。◆記者 こんな非合理な、無反省で、非科学的な基準をどうして委員長が追認しているのか。…。樋口裁判も今回の判決も「不備がある」と言っているじゃないですか。不備じゃないということを分かりやすく説明してくださいよ。…原発推進委員長じゃないですか、実質的に。◆記者 運転差止とか許可取消が出ること自体が、例えば規制委がきちんと審査をやっているのかということを揺るがせることにならないかという気もする。…社会との対話とか、説明だとかそういったことがちょっと不足がなかったか。◆記者 3.11の反省からできたこの規制委員会に対する期待というものが揺らいでいる。地震大国の中で原発を稼働させるということの危険性がある。
本「原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!」シリーズでも、例えば次の様に指摘してきた。その3 地震国日本で地震評価は最低水準〜地震のことを自身で調べる自信なし?〜その101 大飯原発地震動再計算のごまかし〜試算と称して真の再計算を避ける非「科学的」原子力規制委員会〜その104 大飯原発地震動試算騒動が示す田中委員長の傲慢〜島崎−規制委・規制庁面会が明らかにする基準地震動計算の過小評価〜その134 東北地方太平洋沖地震から学べ!「基準地震動」見直しを〜野津厚さん(海上・港湾・航空技術研究所)が伊方「最大加速度1000ガル超え」を予測
 実際に、柏崎刈羽原発で最大加速度2058ガル(2007年7月、新潟県中越沖地震)を、あるいは一関で最大加速度4022ガル(2008年6月、岩手・宮城内陸地震)を観測しているのだ。「合格」とされた原発の基準地震動はせいぜい1000ガルとあまりにも小さい。 原子力規制委員会は総ての原発を止めて新規制基準を作り直せ、の声を強めよう。