原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その221 2020年4月16日
福島第一原発事故の反省を踏まえずバックフィットで稼働を止めない規制委
〜「毎日新聞」が暴く原子力規制委員長によるバックフィット軽減指示と虚偽説明〜
 「その215」(2020年1月15日)に引き続き、毎日新聞の厳しい
規制委バックフィット対応批判を紹介し、規制委がバックフィットで
実用炉を止めることを避けていることを糾弾する。
 バックフィットは、福島第一原発事故を受けて「核原料物質、核燃料
物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下、炉規法)を改訂し、既に
許可を得た施設に対しても新たな規制基準の既存施設への適用を義務
づけたもので、次の条項で規定されている。

第43条の3の14(発電用原子炉施設の維持)
 発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で
定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。…
第43条の3の23(施設の使用の停止等)
 原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造若しくは
設備が…基準に適合していないと認めるとき、…、その発電用原子炉
設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は
移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な
措置を命ずることができる。…

 原子力規制委員会が2015年11月13日に「新たな規制基準のいわゆる
バックフィットの運用に関する基本的考え方」を定め、経過措置の
期間設定を基本とするとしながらも、「安全上緊急の必要性がある
場合には、新たな規制基準の新設・変更に際し、当該規制基準を即時に
適用することもあり得る」と厳しく適用することも可能としている。

 ところが、大山(鳥取県)噴火時の火山灰想定が過小評価されている
関電3原発(高浜、大飯、美浜)に求める対策を検討した折に、規制委
が非公開事前会議でバックフィットを軽減したことを毎日新聞が
暴いたのだ。

<原子力規制委 更田委員長の「虚偽説明」明白に 事前会議の
音声記録入手 資料を基に議論主導>(毎日新聞3月25日19時00分)
https://mainichi.jp/articles/20200325/k00/00m/040/232000c
<原子力規制委員会が非公開の事前会議で、関西電力に求める火山灰
対策の2案を1案に絞り込む方針を決めた問題で、更田豊志委員長が
2案を比較する資料を基に議論する様子を収めた音声記録を入手した。
更田氏はこれまでの記者会見で「資料を基に議論した事実はない」と
繰り返し主張し、議事録の未作成は公文書管理法に抵触しないとの
見解を示していたが、この説明が虚偽であることが明らかになった。>

 詳細は非公開事前会議の音声記録もアップされていて非常に興味
深い上記記事サイトをご覧いただきたい。


 大山火山の噴火規模の新知見を適用するに当たって、原子力規制
委員会が未だにブレーンストーミングと言い張る非公開事前会議を
開催し、関電が稼働している高浜・大飯に運転停止命令を出さない
ようにしたのだ。
 さすが、原子力規制委員会は再稼働推進委員会である。
 なお、この問題については、毎日新聞日野行介記者が毎水曜の
記者会見で厳しく更田委員長を追及している。次の動画あるいは
速記録をご覧いただきたい。
https://www.nsr.go.jp/nra/kaiken/index.html
 ここでの更田委員長の発言も興味深い。
 「小さな変化のために発電所を即刻止めなければならないという
ような議論は、バックフィットを大きく阻害する」、「全てが止める、
止めないの話になるというのは、改善に決して結びつかない」。
 この考えは、巨大津波襲来の新知見への対策を原子力安全・保安院が
徹底できず東電トップが防潮堤対策を避けた為に福島第一原発事故を
起こした事実(勿論、地震による配管破断などの影響も否定できない)
を考えれば、絶対に認めることはできない。
 いい加減な「新規制基準」といい加減な審査で稼働容認している
原発に対してでも、新知見が出てきたらすぐに適用して対応できて
いない原発はすぐに止めるべきだ。
 それゆえ、高エネルギーアーク損傷(HEAF)対策、代替循環
冷却系の設置、インドネシアで起こった噴火による警報無き津波発生、
…などの新知見へのバックフィットについても、規制委を厳しく
監視しないといけない。