原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その193  2019年3月2日
【続】放射線審議会は非科学的な被曝強要審議会
〜早野・宮崎論文だけでなく内藤論文も誤り!(牧野淳一郎)〜
 前号(その192)で、原子力規制委員会の中の放射線審議会が、宮崎真・
早野龍五論文の引用を引っ込めても、現在の空間線量率と個人線量とを
比較して個人線量が低いと主張し、放射線審議会は被曝強要審議会だ、
と述べた。
 牧野淳一郎さんも岩波科学3月号の「3.11以後の科学リテラシー」
で同様の主張をし、さらに放射線審議会が引用しているもう一つの内藤ら
による論文の間違いを指摘、より厳しく放射線審議会の結論を批判してい
るので、続けて紹介する。


 まず、ICRP勧告が、追加被曝1ミリSv/年を達成するのは無理なの
で、短期間ならこれだけ我慢してねと「緊急時被ばく」を強要する論理の
可笑しさに言及。
 続いて、<宮崎早野論文の問題は、科学者コミュニティにとどまらな
い、極めて大きな社会的影響がある。この論文は「放射線審議会」におけ
る議論の資料になっているから>と指摘。

 更に、もうひとつ引用されていた内藤らの論文
「Measuring and assessing individual external doses during the
rehabilitation phase in litate village after the Fukushima Daiichi
nuclear power plant accident (Naito et al., J. Radio. Prot. 37,
2017)」が、飯館村の住民38名についての被曝線量と空間線量率との関係を
論じているが、「内藤論文には実は致命的な欠陥といってもよいものが」
ある。

 すなわち、
○空間線量率は航空機サーベイであり除染結果を反映できるだけの空間
分解能がない
○除染した宅地エリアの実際の線量に比べて、航空機サーベイでの空間
線量値は2〜5倍程度高くでている(表1を示し、例えば草野では、
除染前5、除染後0.6、航空機サーベイ1〜1.9マイクロSv/h)
○このため、内藤論文の結果をもって、現在の空間線量率と実行線量が
関係付けられている基準は過剰に厳しいということはできず
○放射線審議会では、…故意か無知によるものかはわかりませんが、航空
機モニタリングの値と実効線量の関係から…「相当程度の裕度があった」
と結論している。非科学的な議論といっても差し支えない
○現在の基準(被曝が1ミリSv/年以下であるための空間線量率は0,23
マイクロSv/h)は適切であることが示唆される(牧野さんの結び)

 要するに、放射線審議会は、空間線量と実行線量(個人被曝線量)とを
比較するにあたって、宮崎早野論文ではガラズバッジ測定で個人被曝線量
を低く推定して、内藤論文では空間分解能がない航空機サーベイで空間線
量を高く推定して、どちらの論文でも空間線量と実行線量との比を高いと
主張し、「現在の空間線量率と実行線量が関係付けられている基準は過剰
に厳しい」という方向の議論を進めている。
 放射線審議会が、住民に被曝を強要する非科学的に審議会であることが
良く分かる、原子力規制委員会と同様に。

(参考)放射線審議会ページ
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html