原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その189  2019年1月8日
泊原発がずっと止まりっぱなしの3つの理由
〜活断層の見誤り、非常用電源のずさん管理、9月6日の全道停電教訓〜
 日本一危険と言われる東海第二原発の適合性・運転延長を認可した原子力
規制委員会は、審査した総ての原発を合格させる「再稼働推進委員会」で
ある。そんな原子力規制委員会も泊原発の再稼働を認めるのは至難の業で
あろう。以下にその理由を列記する。

1.渡辺満久さんと小野有五さんが指摘する敷地内の断層活動時期問題

 次の再稼働は泊原発3号機かと危惧して倶知安で、全国相談会を開催した
のは2年前の10月だった。幸い小野有五さんほかが活断層問題などを原子力
規制庁に指摘して適合性審査がしばらく審査が止まった。
 そんな中で「泊原子力発電所敷地内の断層活動時期に関する問題〜原子力
規制委員会による適正な審査のために(2)」(渡辺満久、小野有五)が岩波
科学2018年11月号に発表された。
 指摘された問題は次の2点。
<○北電による「下部・中部更新統の岩内層」という根本的に誤った見解
を、規制委が4年間にわたって安易に受け入れていた…。泊原子力発電所及
びその周辺地域の地形発達史を科学的に検証していれば、北電の根本的誤り
を早くから指摘できたはず。
○断層構造にもとづく活動時期の判定方法に根本的な誤りがあった。>
 そして次のように結んでいる。
<これまでにも指摘したように事業者へのヒアリングだけでは不十分で
ある。変動地形や地形発達史の専門家へのヒアリングをおこなうか、その
ような専門家を交えた有識者会合を設置することが必要であろう。>

 3.11直後の原子力安全・保安院の検討会議には井野博満さんや後藤
政志さんが入っていたが、原子力規制委員会が選ぶ有識者や検討委員は
ほとんど原子力推進派ばかりである。上記結論を取り入れない限り規制委
の審査は信用できない。規制委は、泊原発合格を出す前にこれらの指摘に
きちんと答えないといけない。

2.非常用ディーゼル発電機の管理も出来ずに保安規定違反する北海道電力

 12月19日の規制委定例会議の議題1は「北海道電力(株)泊発電所3号機に
おけるBディーゼル発電機起動回路の接続不良に係る保安規定違反と今後の
対応について」であった
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/00000396.html
 泊原発3号機の運転開始(2009年12月)からディーゼル発電機の一つが
ずっと稼働不可の状態であったのだ。
 ディーゼル発電機は重要度分類クラス1である。福島第一原発事故を見て
も分かるように外部ディーゼル発電機は原発の命綱であるのに、この点検を
北電が怠っていたのだ。
 規制委が大好きな「安全文化」の欠如の証明だ。安易に北海道電力の保安
規定違反を許してはいけない。

3.全道停電が教える泊原発稼働の危険性

 9月6日の「平成30年北海道胆振東部地震」の全道停電時には、6年間も
稼働していなかった泊原発のプールにある使用済み核燃料を冷やす為に外部
電源を必要とした。電気を得る為の原発が、止まってから6年経っていても
外部の電力を必要とする、情けない装置である。おまけに、2で述べたよう
にディーゼル発電機の管理も北海道電力はいい加減なのだ。
 さらに、大規模停電に関する第三者の検証委員会が、北海道電力泊原発
1〜3号機(出力計207万キロワット)が運転中に地震などで同時停止する
と道内は全域停電に陥る恐れがあるとの検証結果を公表した。
 このことは牧野淳一郎さんが「3.11後の科学リテラシー」(岩波科学
11月号)で指摘している。
 北海道電力が「過去10年の最大の計画外停止」しか考慮していなかった
問題とともに、「泊原発が緊急停止するような地震が起こったとすれば、
今回の苫東厚真発電所より大きな電力が一気に失われて、高い確率で北海道
全体がブラックアウトし、さらに泊原発は外部電源が喪失する、という、
極めて危険な状態になります。」と。
 最後の指摘は他の地域でも心配で、特に高浜・大飯の4基が稼働している
近畿地方でブラックアウトが起こったらどうなることか。また、太陽光や
風力を制御している九州でも起こりうるのではないか。
 以上、1,2,3の理由から、「泊り」原発は止まりっぱなしにしておく
べきだ。プールを冷やし続けながら。

○東海第二には、これから1740億円もかけて安全対策を施すという。その
費用は、実は、東京電力と東北電力の支援で捻出するという。…。
 つまり、関東や東北全体の消費者などの負担で東海第二を動かす
わけだ。…。全く理不尽な話ではないか。
○茨城県や周辺6市町村の同意が必要だ。…裏金を含めて様々な便宜
供与を…。いくらお金を出しても、住民の反対が強い地域では同意を得るの
は難しいだろう。

そして、
<結局、電力会社の都合で再稼働が決まり、それを規制委が応援するという
構図になっている。勿論、今後は、政府も全面的支援するだろう。>
と結んでいる。

 以上、日頃私たちが主張してきたことを非常に明解にまとめられている。
東海第二の適合性審査への「行政不服審査法」に基づく審査請求に弾みが
つく。
 また、中西経団連会長の年初会見での国(経産省)への不信感の表明も
あり、<昔のままの政策>を進める経産省や原子力規制委員会の方針転換
が強く求められている。