原子力規制委員会は再稼働推進委員会! その159 2018年2月20日 原子力規制委員会は<原子力ムラ>の一員 〜新藤宗幸「原子力規制委員会−独立・中立という幻想」(岩波新書)から(下)〜 |
2017年末発売の岩波新書「原子力規制委員会―独立・中立という幻想」 が面白い。 行政に詳しい新藤宗幸さんが、5年余り前(2012年9月)に国家行政組織 法第3条にもとづく行政委員会として発足した原子力委員会が独立性も中 立性も維持できていないことを分かり易く説明している。その158に続き同 書から興味深い文の一部を紹介する。 (その158の続き) ○原子力規制機関に求められ行為規範は、第1に「独立性」と中立性」、 第2に「公開性」、第3に「専門性」と「市民性」。これらについて原子 力規制委員会には多くの疑問。 ○新規制基準について次の問題を指摘 ・緊急時対策所に免震構造であることを義務づけていない。 ・日本政府が事故報告書で多数基立地の欠陥を認めているにも拘らず、同 一敷地内に複数の原子炉を設置している状況に何らの規制もくわえていない。 ・原発立地自治体と周辺自治体の避難計画の策定と審査を原発の安全規制 の要件としていない。 ○適合性審査の問題 ・「入倉・三宅式」とよばれる計算式では震源の大きさが1/3から1/4 程度の小さな値になる、再計算が必要、と島崎元委員長代理の指摘に対し て、規制委は再再計算を拒否。 ・原子炉圧力容器が中性子の照射によって劣化することから原子炉の耐用 年数は30年から40年と想定されてきたにも拘らず、また細野原発事故担当 相が運転延長は「例外中の例外」と述べていたにも拘らず、規制委は高浜・ 美浜の運転延長を認めた。原子力規制委員会の専門的知見とその社会的責 任が問われている。安倍政権による原発政策と無縁ではないだろう。 ○原子力規制委員会・規制庁は「専門科学的・技術的判断」という言葉で 自らの行動の正当性を主張しつつ、政権中枢の意思に寄り添い具体化して いるのだ。原発再稼働や老朽原発寿命延長を「正当化」している科学的・ 技術的判断に込められた政治性を、指摘しておかねばならない。 ○新規制基準はあくまで原発プラントに対象を限定した技術基準であって、 「事故は起こりうる」を基本として住民の生命と生活の保障を最重視した 立地指針=立地審査指針ではない。 ○原子力規制委員会が策定した「原子力災害対策指針」でUPZを原子力 施設から半径30キロメートルとしているが、その適正さについて議論が残 されており、原発訴訟の焦点のひとつ。 ○原子力規制委員会は電力事業者の申請を一件たりとも「不適合」とはし ていない。 ○「お上」の定めた新規制基準への懐疑の眼が薄れ、3.11が「風化」 してしまうことを危惧する。 … 最後に、新藤さんは、「政権さらには利害関係集団から中立な規制機関を 創ることは、重要課題としてありつづける」と結んでいる。 興味を持たれた方は是非読んでいただきたい。 以上 |