原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その157   2018年2月7日
原子力規制委は放射線審議会を使って被ばくを強要する委員会
〜ガラスバッジ測定から「毎時0.23マイクロシーベルト」を緩めるな!〜
 「その155」の心配が一歩進んだ。1月17日の定例会議に続き24日の定例会議と
記者会見でも、更田委員長が放射線審議会を通じておかしなことを指示した。
 24日定例会議の議題終了時に佐藤長官官房放射線防護企画課長(放射線審議会
事務局)が、「先週の金曜日(1月19日)に開催された放射線審議会で、更田委員
長のおっしゃいました空間線量率と被ばく線量の評価についても、現状の整理の
一環として、放射線審議会の方でまずは検討していきたいということで、私ども
事務局から、提案させていただいて、放射線審議会の方で御了解いただきまし
た。」と報告。

 更田委員長が「0.23μSv/hという値が用いられてきた経緯がありますけれども、
その後、随分データが蓄積されたので、事実関係の確認をきちんとしてほしい。
一部報道では除染目標云々という言及があったけれども、別に除染目標について、
何かどうこう言ったわけでは全くなくて、あくまで空間線量率と被ばく量との間
の関係をすっきりさせましょうというのが趣旨。それでは、放射線審議会での方
の議論を事務局としてきちんと支えるようにしてほしい」と応じ、伴委員も「空
間線量率と個人線量の関係をこれまで得られているデータでもってしっかり見る」
とフォローした。

 そしてこの日の午後の記者会見では、「空間線量率と個人の被ばく線量との関
係を明確にしましょう」、「別に除染の基準を見直そうといった意図は全くない」
と話しながら、そのあと他の記者の質問に答えて「今回は、まずとにかく2つの
異なるパラメータの間の相関関係について、きちんと積み上げて、例えば、従来
の0.23と1ミリというものの値にどれだけの保守性があるのかということを明確
にしましょうというところのまず第1段階。その上で、これを適用する、何々に
適用する上でどのぐらいの保守性が必要かというのは、これはまた別の議論で
す。」と第2段階まで考えているのだ。

 そして、その根拠の学術論文として早野先生と答えた。確かに早野龍五東大理
学部教授は、伊達市の6万人の住民全員にガラスバッジを配付して積算線量を出
した結果から、「1時間あたり0.23マイクロシーベルトの空間線量がある地域で
生活しても、年間の追加被曝線量は1ミリシーベルト(1mSv)に達しないことを示
す」と結論付けている。

 しかしこの動きは科学的でも技術的でもなく、本当におかしい。
 ちくりん舎の青木一政さんの資料も借りて、以下にその理由を3つ述べる。

1.ガラスバッジの線量積算は過小評価
○ガラスバッジは前面からの放射線のみを積算、全方向からの放射線に対して低
めに検出する、(0.68倍2013年平山論文、4割減をメーカも認めている)
○身体による遮蔽を考慮できない
○胸に着けるので常時装着は困難(きちんと装着している市民の数が稀)
○行動パターンによる個人差を無視して平均値評価

2.0.23mSv/hでも低すぎる
 矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授)の「日本政府は放射能から住民のいのちを守
らない」から。
 <汚染に関するもう一つの重大な日本政府の過失
 日本の汚染表示には重大な誤りがあります。日本政府の空間線量率を年間被曝
線量に換算する係数が2倍以上大きなものになっています。年間1mSvは、空間線
量率(時間当たり)から求めるときには単純に1年間の時間を掛けて1mSvになる
0.114μSv/hが相当します。
 ところが日本政府は追加被曝量(自然放射能に加えて原発事故で追加された量)
の計算として0.23μSv/hを年間1mSvに対応させています(これは自然バックグラ
ウンドとして0.04μSv/h、原子炉から放出された放射性物質で年間1mSvに相当す
る0.19μSv/h)。実際の年間被曝線量を半分以下の年間量に計算させています。


3.既に危惧していたこと
 「その141」で紹介した『「心の除染」という虚構〜除染先進都市はなぜ除染を
やめたのか』(黒川祥子、集英社インターナショナル)では、既にこの動きを危惧
していた。
 <この伊達市の「実験」は今後、原子力災害が起きた時の貴重な「前例」とな
るだろう。全市民が着用したという前提のもとでのガラスバッジデータから追加
被曝基準も引き上げられていく。原子力を推進する勢力にとって都合よく、使い
勝手のいい「前例」が、福島第一原発事故後にこうして作られたのだ。>と。

4.「場の線量から人の線量へ」論の危険性(青木一政さんから)
 しきい値無しLNTモデルを前提に「場の線量」(年間1mSv)を一般公衆に適
用している中で、放射性業務従事者の被ばく防護の考え方を一般公衆に無理に適
用して「人の線量」のみの管理で被ばくリスクをとることは危険である。

 この動きは田中俊一前原子力規制委員長も関与しているであろう。12月20日に
更田現委員長が福島に行って田中氏と会い、田中氏は飯館村の復興アドバイザー
に赴任した。
 原子力規制委員会が放射線審議会を操って福島の人たちに被曝を強要しようと
しているのだ。しっかり監視・警戒しよう。