3月10日に行われた「田中委員長職員訓示(東京電力・福島第一原子力発電所の事故から6年にあたって)」が、今の委員長の姿勢を如実に現している。是非ご一読を。
http://www.nsr.go.jp/nra/kaiken/h29_0310_01.html
1 福島の現状の分析
以下は、イチエフへの「心配」を軽視し当事者意識が薄すぎるが、福島の現状を簡潔に示している。
○11市町村のうちこれまでに5市町村、新たに4自治体の避難が解除されたが、避難解除の自治体の帰還率は10%〜20%に留まる。
○住民の帰還を妨げているのはイチエフについての心配だけではない。
「帰還した後の仕事や生活のこと、子どもの教育のこと、病院のこと。事故前と違う放射線の環境下で暮らすことへの健康不安、眼前、目の前に山積みになっている除染廃棄物に対する不快感など、様々な課題が山積しています。」
○県外の住民への差別やいじめによって、言葉に尽くせない苦悩と怒りに苦しんでいます。
○原発事故の被害は、時間とともに解決すると言うよりも「先の展望を見出せないままに6年が経ってしまった」
2 被ばくの強要
問題は、「原発事故の被害は、時間とともに解決するというよりもむしろ問題が複雑化し、課題が増えている」として、次の説明で県民に被ばくを強要することだ。
○「年間1mSv」という目標値と、現実に達成できる除染のレベルとの間に開きがある。
○「空間線量から年間の被ばく線量を推定する方法についても、もっと現実に即した見直しが必要」。
○食品の摂取基準、出荷基準、海水浴場の使用基準、田畑の作付制限など放射線防護に関するさまざまな基準が、「実態として整合性のある合理的な基準にはなってい」ない。国が提示する基準は、国民にとって極めて重いもの。
○様々な放射線防護に関する基準や規則について、常に科学的な検討を加えることは、地味な仕事かもしれませんが極めて重要な仕事。
○「判断の先には、国民の健康や生活があり、福島県の復興、風評被害の問題があります。新たに生まれ変わる放射線審議会には、科学的な立場から合理的かつ整合性のある放射線防護基準を提示して頂けることを強く願っている」
福島に寄り添うように表現しながら、「風評被害」、「科学的」、「合理的」、「整合性のある」を持ち出して、放射線防護基準を緩めることを放射線審議会に要請しているのだ。
原子力規制委員会と放射線審議会による被ばく強要を許してはいけない。
3 再稼働の推進
検査の役割が重要、審査や基準に新しい知見に応じて改善、再処理施設をはじめ核燃料取り扱い施設の審査も大詰め、廃炉と廃棄物の安全確保も重要と述べながら、「科学的・技術的な基盤に立ち、中立的・合理的な規制に取り組んで頂きたい」と結んでいる。不合理で緩やかに過ぎる「新基準」と「審査」で沢山の「合格」を出しておきながら「中立的・合理的」と言っても誰も信じない。
以上
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