政府は9月21日に原子力関係閣僚会議を開催し、高速増殖原型炉「もんじゅ」について「廃炉を含めて抜本的な見直しをする」とした。このきっかけは、2015年(昨年)11月に原子力規制委員会が文科省に対してもんじゅ運営主体である日本原子力研究開発機構を代えるように「勧告」したこととされていて、原子力規制委員会の点数が上がっているようだ。
騙されていはいけない。もんじゅの1万点近くの点検漏れが明らかになったのは規制委発足直後の2012年11月であり、「勧告」が出されたのはそれから3年も経過した後で、川内原発1・2号機の再稼働直後である。
まして、もんじゅについての過去の経緯を考えれば、この廃炉方向付けはあまりに遅すぎる。
以下はウィキペディア等より。
(1)もんじゅはトラブル続き、20年間で稼働250日
1983年 1月25日:建設準備工事着手
1995年 8月29日:発電開始、12月8日:ナトリウム漏洩事故発生
2010年 5月6日:10時36分運転再開、5月6日・7日:放射性ガスの検知器が誤作動
5月8日:10時36分臨界確認。試験として約1時間後、19本の制御棒のうち2本を挿入し未臨界とした。
8月26日:原子炉容器内に筒型の炉内中継装置(重さ3.3トン)が落下。長期の運転休止(炉内中継装置の引き抜きは2011年6月24日に完了)。12月28日:非常用ディーゼル発電機3台のうち1台の故障が判明
2011年 3月23日:イチエフ事故を受け、福井県はもんじゅの安全性確保について文部科学省に申し入れ
2012年 9月発足直後の規制委に「ナトリウム漏えい検出設備異常」報告
(2)訴訟が示すもんじゅの不正
・許可無効を求める裁判
もんじゅの原子炉設置許可についての行政訴訟(1985年提訴)で、2003年1月27日に名古屋高等裁判所金沢支部がもんじゅの設置許可処分が無効であることを確認する判決。2005年5月30日、最高裁判所が国の勝訴を確定。
・もんじゅ西村裁判
1995年12月8日に発生したもんじゅのナトリウム漏洩火災事故において、事故現場の様子を撮影したビデオ隠蔽が発覚。虚偽発言の会見の翌日1996年1月13日、ビデオ隠しの特命内部調査員としてマスコミ報道の矢面に立たされていた動燃総務部次長の遺体発見。警察発表で自殺とされその後マスコミの追及は尻すぼみに。遺族は損害賠償請求訴訟を起こしたが、2012年1月31日付けで敗訴決定。西村裁判2訴訟係争中。
(3)根本的に安全性欠如
冷却材に通常の原子力発電所で使われる水の代わりに金属ナトリウムを使い、発電タービンは水蒸気作動であるため、2つの熱伝達部分をもっている。炉心の金属ナトリウムからタービン系統の水部分へは薄い蒸気発生器の壁を通じて熱伝達を行う。蒸気発生器の壁は薄いため、ピンホールが発生する可能性を完全には否定できず、ピンホールが発生してしまった場合、金属ナトリウムが蒸気発生器の水と化学反応を起こして爆発事故を起こす可能性がある。実際、イギリスで事故が起きている。
すなわち、もんじゅは当然廃炉にするべきであったのだ。規制委は再稼働を実現してからもんじゅ問題を投げかけ、安倍政権は伊方3号機でプルサーマル発電を試みられてからもんじゅ廃炉を言い出した。経産省は、仏日共同の高速炉「ASTRID」計画や茨城県実験炉「常陽」の活用などで核燃料サイクルを延命させようと目論んでいる。 「原子力マフィア」たちの策略に騙されずに、核燃料サイクルは破綻している、「トイレなきマンション」解消まで使用済み核燃料を増やすな・再稼働するな、と訴え続けよう。
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