岩波「科学6月号」の大論文特別企画「日本の原子力安全を評価する」(「もっかい事故調」田中三彦さんほか)の紹介を続け、沢山の重要な「危険」を引用する。
防御の階層として立地―設計―検査―設計事故―過酷事故―防災に分け、テロと安全文化についても評価している中で、今回は検査、設計事故、過酷事故を駆け足で説明する。 (2)検査・試験による異常・不適合の検知(5点満点で約2.5点)
プラント停止中に検査を実施する。
・日本の検査要件と検査技術が後進的だった
・日本の検査官による検査は、過度にパターン化され、技術的レベルも低い
・日本の電力事業者は、運転業務以外、重要な検査・試験も含め、大部分の実務をプラント・メーカーに委託していて、隠蔽やねつ造を醸成する温床となった
(3)設計基準事故・事象への対策(同約2.5点)
・福島事故に直面して、日本の原子力事業者も規制者も、過酷事故の発生に本気で備えてこなかったことが問題点として内外から指摘された
・福島原発事故における「事故時操作手順書」問題:吉田所長は「事故時操作手順書」を無視して「アドリブ」で事故対応に当たった
・自然現象に対しても火災に対しても人的破壊行為(テロ)に対しても、ハードルの高い設計基準の設定を回避してきた
・なぜ発生頻度が高く長時間復旧不能な全交流電源喪失(SBO)を設計基準事象に選定しなかったのか
(4)過酷事故評価と対策(約1.5点)
・新たに導入した過酷事故対策の主要な部分は人的対応に依存
・過酷事故シナリオの選定が限定的であり、発生確率が同等で影響がより過酷と思われるものがある
・複数基が設置されている原子力発電所では、原子炉事故の同時多発を考慮しなければならない、米国では福島事故からの教訓を受け止めているが、日本では検討不十分
・過酷事故対応を支援するための計測機能が未改善
・中央制御室の居住性に不安
・緊急時対策所の対応能力と設備に問題
・事故対応設備の無動力化、自動化、恒設化の採用が限定的で、迅速な人的対応への依存が過大
・地下水の流入による汚染水対策が不十分
・フィルターベントの操作などは、意識的な法令違反行為となりうる
・高度な電気工学や機械工学の知識があったとしても、実務的な技能が欠けていたのでは、それを活かすことができない
以上、川内原発や伊方原発の稼働が恐ろしくなりますね。 |