岩波「科学6月号」の大論文特別企画「日本の原子力安全を評価する」(「もっかい事故調」田中三彦さんほか)の紹介を続け、沢山の重要な「危険」を引用する。
防御の階層として立地―設計―検査―設計事故―過酷事故―防災に分け、テロと安全文化についても評価している中で、前回紹介した立地基準((1)と書いたが(0)に訂正)の評価点は1.7点(5点満点、10人が評価)で全体の平均点と同レベルだった。 今回は防御の階層の第1層:堅牢な設計で、評価点は2.5程度。 (1)堅牢な設計
安全上の脅威となり得る自然現象(地震、津波、噴火、強風、他)に対し、十分保守的に設計基準を設定していること。
・原発が多数の系統(システム)で構成され、各系統が多数の装置や機器で構成され、各機器は多数の部品で構成されている。安全は上層設計によってこそ守られなければならないが、そのような設計思想が日本ではあまり尊重されなかった。
・日本の「新規制基準」とは、実は、大小さまざまなパッチワークの詰め合わせセットである。
(耐震性について)
・地震による影響の受けやすさはこれまでの苦い経験によって十分に裏づけられてきた。従来の設計基準地震加速度の設定の甘さについては、根本的に大胆に見直さなければならない。ところがそのような決意や取り組みは見受けられない。
(引用者;島崎氏ー規制委バトルが原子力規制委員会の姿勢を如実に証明している)
・耐震性の強化が可能なのは機器の一部だけである。構造物そのものに対する補強は実施的に不可能である。
・設計基準地震加速度が引き上げられると裕度が減る。
・中越沖地震後の点検で柏崎刈羽原発の鉄筋コンクリートの建屋には多くの亀裂を確認。
・強い地震動が比較的長い時間作用する場合、徐々に剛性が低下し応答スペクトルが低周波側にシフトする実験データあり。
(その他)
・津波に対して、海底地滑りの起源が評価されていない。
・高速中性子の照射による脆化は知られているが、低合金鋼製の炉内構造物で一層顕著。
・応力腐食割れ、腐食疲労、燃料被覆管の酸化と水素脆化、格納容器の内面に施される塗料の重要性認識なし、振動による高サイクル疲労、コンクリートの劣化、などもある。
・不労不死の鉄鋼も合金鋼もない。古いプラントほど古い材料で制作され、古い工法で施工され、悪い環境にさらされてきた部品を含んでいる可能性がある。
地震を考えれば、老朽化を考えれば、日本で既存原発を動かすなんてとんでもないことである。
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