伊方3号機も再稼働を目前にしてトラブルが起こった。一次冷却水のポンプ故障で再稼動は8月にずれ込む。川内でも高浜でも伊方でも、再稼働の直前または直後にトラブルが発生している。川内・高浜は30年、伊方3号機は20年も前に稼働開始した古い原発だから当然かも知れないが、原子力規制委員会の「新規制基準」と審査の甘さが露呈しているとも言えよう。
さて、岩波「科学6月号」の大論文特別企画「日本の原子力安全を評価する」(「もっかい事故調」田中三彦さんほか)の紹介を続ける。 科目別評価法を採用し、内部起因事象ー外部起因事象、防御の階層として立地―設計―検査―設計事故―過酷事故―防災に分け、テロと安全文化についても評価している。 (1)立地基準
そもそも原子力発電所は事故を起こし得る施設であるという考えを出発点とし、克服することが実質的に困難か著しくコスト高である場所と、事故が起きてしまった場合の影響が大きすぎて設置によって期待される利益を帳消しにする場所は、候補地から排除するべきとの常識を原理としている。
日本では、1964年に策定され1989年に原子力安全委員会によって改訂された原子炉立地審査指針は3ページの軽薄なもので、20年以上放置され続けた。
・地震による影響の受けやすさについては、日本は圧倒的に世界一であることは前回紹介した。
・活断層については、米国NRCでは、「長さ300m以上の地表断層が8km以内にあるような敷地は原子力発電所としては適さない」と明記され、第四期地質年代(260万年前から現在)に生じた変動を警戒し、調査範囲は320kmもしくはそれ以上。だが、日本の基準は、活断層は12万年―13万年以降のものでよく、敷地内にあっても原子炉建屋の真下を通っていなければよしとしており、すべてにおいて甘い。
・津波の発生メカニズムとして海底地滑りを重要視していない。
・建屋の基礎レベルと地下水流も甘く、絶えずポンプで汲み上げながらでなければ運転できない(福島第一原発)は不適。柏崎刈羽原発の場合、原子炉建屋の最地階(地下5階)は海面下32.5mという深さ。
・火山についてはIAEAの安全指針があり、溶岩流が100kmにも及ぶ可能性、火砕流が秒速50m以上で150km先に到達する、と書かれている。直径20kmの姶良カルデラ内にあって頻繁に噴煙を上げる桜島の火口から、わずか40kmほどしか離れていない川内原発は言うに及ばず、本来は設置禁止区域内にある原発が他にもあるのではないか。
私見であるが、立地基準を見直して厳格に適用すれば、日本の総ての原発は不合格ではないか。 以上 |