原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その94   2016年5月11日

「熊本地震における川内原発への影響と見解」(原子力規制委)に反論
中央構造線断層帯が火を吹いているのに川内原発を止めない原子力規制委員会

 
連休直前の4月28日に原子力規制委員会は「平成28年熊本地震における九州電力川内原子力発電所への影響と見解について」を公表した。権限があるのに川内原発を止めない理由説明は次だ。

平成28年熊本地震における九州電力川内原子力発電所への影響と見解について
平成28年4月28日 原子力規制庁
http://www.nsr.go.jp/news_only/20160428_01.html

 4月18日開催の原子力規制委員会では、現状において川内原子力発電所を停止する必要がないとの見解を示していますが、その内容について説明します。

A 今回の地震により川内原子力発電所で観測された最大の揺れは、数ガルから十数ガル程度であり、原子炉を自動停止させる設定値である80から260ガルに比べて小さいものです。
B 川内原子力発電所の新規制基準適合性審査では、今回地震が発生している布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯の2つの断層帯が連動して、一度に動くことを想定し、長さ92.7km、マグニチュード8.1とし、発電所に与えるこの地震の影響は、100ガル程度と評価しています(今回の地震で最大のものは、マグニチュード7.3)。
また、詳細な調査の結果、川内原子力発電所の敷地内に活断層の存在は認められていません。しかしその上で、あえて活断層が存在すると仮定して、「震源を特定せず策定する地震動」についても評価し、最終的に620ガルという基準地震動(注)を設定しています。
この地震動に対しても、安全上重要な設備の機能が損なわれないことを審査会合において確認しています。
C このように、地震によって原子力発電所の安全性が損なわれないよう審査において確認していますが、引き続き地震の状況を監視し、原子力発電所の状況について情報発信に努めるとともに適切に対応していきます。

(注)基準地震動:原子力発電所の耐震設計において基準とする地震動。発電所敷地の地下における最大の地震の揺れのこと。
参考資料【PDF:950KB】

(符号A、B、Cは筆者追記)

熊本で大地震が続き中央構造線に火が点いたのに川内原発を止めない理由を「科学的」と称して「政治的」に説明し、九州・全国・地球の総ての命に危険背負わせる、正に再稼働推進委員会の面目躍如たる公表である。

以下、手短に反論する。
A あらかじめ設定した原発自動停止要件には達していないことを説明しているだけだ。ただ、地震発生後川内原発ゲート前を九電関係の多くの技術者が行き来しており、何らかのトラブルがあったのではないかという心配がある。制御棒が曲がって入らなくなったとのうわさ(真偽未確認)もある。
B 川内の適合性審査について説明している。面白いのは、審査での想定地震がマグニチュード8.1で今回の地震の最大のマグニチュード7.3がより小さいと主張し、一方で審査で「最終的に620ガルという基準地震動を設定して」いると書きながら、今回の地震で「最大加速度は益城町の観測点の1580ガル」(防災科学技術研究所)について何も述べないことだ。基準地震動の約2.5倍の加速度が隣の県で観測されたのに! 石橋克彦神戸大名誉教授(地震学)は、「既往最大の観測地震動を全原発の基準地震動の下限にするべき」と提案していたのに!
 地震対策については、新規制基準にも設置変更許可審査にも工事計画認可審査にも多くの致命的な誤りがあり免震棟無しで稼働している問題も指摘してきた。それらのことを全く無視し隠蔽しながらの苦しい説明だ。
C 「引き続き地震の状況を監視し、原子力発電所の状況について情報発信に努める」ことは当然である。が、中央構造線に火がつき毎日熊本他で地震が続いているのに、川内原発を稼働させたままでは「適切に対応して」いることにならない。

 更田委員が言ったように、川内以外の原発は、既に稼働を止めて2年以上経過しプールの核燃料も少しは冷えて来ている。にも拘らず、熊本地震が続き気象庁も今後の地震を予測できないと言っているのに、川内1号機、2号機を高温のまま稼働し続けることは全くナンセンスだ。