原子力規制委員会は再稼働推進委員会! その52 2015年6月18日 規制委が批判しない鹿児島地裁決定の間違い 川内原発却下は「安全性評価の考え方が根本的に間違っている」 |
4月に、原発再稼働差止仮処分申請に関する決定が2つ出た。高浜原発3、4号機については運転差止仮処分が認められ、川内原発1、2号機については運転差止仮処分が却下された。規制委は、福井地裁決定を露骨に批判し、鹿児島地裁決定を黙認した。 2つの決定について、牧野淳一郎さん(理化学研究所)が岩波「科学6月号」で基準地震動問題について分析しているので紹介する。 [1]安全目標を3桁もどうやって上げた?(1000炉年で1回事故発生) 事故確率を求めるもっとも確度の高い方法は「これまでの実績」を使うことである。日本では、これまでの40年の間に、最大数でほぼ50基の運転がされてきていて(福島で)1度大事故が起こった。原発3基の事故だけれど少なめに1度とカウントすると、40年間の平均を25基と仮定すれば、1000炉年で1度事故が起こった、つまり、国内の実績としての事故の発生頻度は『1000年に1度』程度である。 原子力規制委員会が作成した安全目標は、セシウム137の放出量が100TBqを超えるような事故の発生頻度が『100万年に1度』程度を超えないように抑制することである。 何をどうやって、これまでに比べて3桁も事故頻度を減らしたのか? [2]基準地震動を過少評価(10年で5回も基準地震動超過地震が発生) 鹿児島地裁の決定は、地域的な傾向を考慮して平均像を用いた検討を行うことは相当であるとし、過去10年間でその当時の基準地震動を超過した地震動が4つ(5ケース)発生していることを認めながら、これらの基準地震動超過地震の存在が新規制基準の不合理性を直ちに基礎付けるものではないとしている。 しかしながら、日本に20か所の原発サイトとしてこの10年で5回この「基準地震動」を超える地震が起きているので、1カ所あたりでは『40年に1度』くらい起こっている。基準地震動超過地震の発生は「極めてまれ」なはずでそれを『1万年〜10万年に1度』と考えると、少なくとも「基準地震動」の計算は発生確率を250〜2500倍くらい過少評価していることになる。 川内原発についてはこの基準地震動を620ガルに変更しているが、上記ギャップを埋めるものではない。 「まだ事故が起きていないので、事故が起きないと判断することが直ちに不合理とはいえない」とする鹿児島地裁仮処分却下の論理。 安全性評価の考え方が根本的に間違っている。 (参考)岩波「科学6月号」3.11以後の科学リテラシーno.32 牧野淳一郎 |