原子力規制委員会は再稼働推進委員会!
その4  2014年

拡散シミュレーションによるUPZ30kmは
「科学的・技術的」でなく政治的押しつけだ
沢山の現実性のない前提をおいて30kmを我々に押しつけた
原子力規制委員長は「科学的・技術的」判断をし、政治的判断をしないと何度も言っているが、規制委は実は非「科学的・技術的」でかつ政治的な提言を出して、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全…」を脅かしている。その一つが緊急時防護措置準備区域UPZ30kmである。
 40kmも離れた飯館村への高濃度汚染、3.11直後に米国政府が80km圏外避難を指示、近藤駿一前原子力委員長の「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」で250kmに及ぶとしこれを福井地裁が採用、各地からの風船飛ばしの結果等を見れば、UPZ30kmがあまりに狭すぎることは明らか。
 30kmとする為に規制庁が使ったのが拡散シミュレーション。2012年秋の規制委発足後間もない時期に間違ったシミュレーション結果を何度も発表したことはご記憶でしょう。何度も間違った結果を出して何度も報道させて30kmを民衆に刷り込んだのかも知れない。が、この拡散シミュレーションが曲者。
 シミュレーションは、現在のシミュレーション技術やコンピュータ能力からいくつもの前提条件を定めるが、今回使われた拡散シミュレーションモデルは、定常で、地形を考慮しない2次元モデルで、年平均評価である。すなわち、ガウスプルームモデルで、「定常で一様な風向・風速のもとで、拡散方程式を解いて濃度を求めるもの」を「年間を通じた気象条件」を参照して計算している。
 事故が起こった時にどれだけ離れた距離にまで放射性物質が到達するかを評価するのに、定常モデルで分かる訳が無い。当然飯館村への高濃度汚染は再現できなかったであろう。おまけに、毎時の風向・風速データを使うのに、基準時刻の風向は基準方向にしたまま風速データのみを各時間の値を使って評価している(規制庁防災課談)。実際には起こっていない風を使って計算している訳だ。また、米国で開発されたMACCS2コードを使っているが、起伏の激しい山国日本で地形を全く考慮していないことも欠陥だ。更に、評価基準の実効線量100mSvも高すぎる。
 規制委は、沢山の現実性のない前提をおいて、もっともらしい濃度分布図を見せて、30kmを我々に押しつけた。非「科学的・技術的」で政治的だ。