経産省・エネ庁は「今だけ、金だけ、自分だけ」の大嘘つき!
その177 2021年7月26日
放射能汚染水を海に流すな! 米スリーマイルと同様に環境アセスメントをせよ!
〜環境影響評価せずに汚染水(「処理水」)を数十年かけて福島の海に流すな!〜
 本シリーズその168(2021年4月16日)の中で私は次を書いた。
◆環境省は環境アセスメントをせよ
 経産省は、ロンドン条約ゆえに福島陸域からの「海洋放出」という名の実質「海洋投棄」を計画している。総計120万?、トリチウム総量860兆Bq(他の多核種も現在告知濃度超え)を、更に追加処理して大量の水で希釈して陸域から海に流そうとしている。ならば、環境アセスメントをするべきだ。2012年に環境基本法・原子力基本法が改正され、放射性物質も環境汚染対策の対象になっている。環境省は、モニタリングに留めずに環境アセスメントをするべきだ。

 この主張を裏付ける文を紹介する。尾松亮<素通りされたスリーマイルの教訓(3)〜「処理水処分」決定プロセスと住民参画(上)>(岩波科学7月号)だ。「メルトダウン事故後に発生した大量の汚染水をどう扱うか」の課題に米スリーマイル島原発(TMI‐2)事故のケースでは、環境影響評価をして「河川放出計画」を撤回した。その経緯はつぎのとおり。
・1979年3月 スリーマイル島原発2号機事故
 事故と収束対策時に大量の汚染水発生(処分時8700トン)
・事業者GPUの方針は、規制基準に従って汚染水を直接サスケハナ川に放出
・住民からの反対で差し止め
・ランカスター市(25q下流)が裁判を起こし、NRC(米原子力規制委員会)、GPUと和解協定:「環境影響評価書」完成まではサスケハナ川への放出は行わない
・「環境影響評価書」(1981年3月)で処分方法の決定先延ばしを決定
早期河川放出計画は事実上撤回
・最終版「環境影響評価書」で「処分方法を決定しない」という結論
・1986年、GPUが処理水を蒸気化して気中放出処分法を提案
・周辺住民から強い反対があったが、NRCは最終的に1989年9月に蒸気化放出を認める
・1991年1月に処理水の蒸気化を開始、2年半後に放出処分完了、223万ガロンを蒸気化放出

 尾松氏も、蒸気化放出が良かったかどうか、汚染水の規模も異なる、としながらも、「事故起源汚染水への対策」をめぐる「意思決定プロセス」の日米の相違を強調。NRC、事業者、地元自治体などの当事者が、決定内容の条件や対象期間などを文書に規定しているのだ。
 詳細は同論文を御覧いただきたい。尾松氏は、「デブリ冷却に使用する水」、「廃棄物処理施設で使用した水」などの汚染水(処理水)の増加を懸念し、次のように結んでいる。
<政府は「海洋放出」を決定したが、海洋放出の開始時期、放出される処理水の量、海洋放出時の情報公開ルール、「処理水とはそもそもどこまでの範囲を指すのか」など、決まっていないことは多い。仮に今後海洋放出が強行されてしまう場合でも、住民、自治体の参加のもとで議論するべきテーマは「風評被害対策」だけではないはずだ。>
  
 日本では、2012年に環境基本法と原子力基本法が改正され、放射性物質も環境省が環境影響評価しないといけない。それゆえ、数十年に及ぶ大量の「処理水の海洋放出」事業について、環境省が環境影響評価をするべきだ。
 また、尾松氏の文が示すように、この問題を事業者べったりの経産省に任せるのではなく、日本でもせめて米国と同様に、原子力規制委員会が乗り出すべきだが、歴代委員長が海洋放出を推奨している今のNRAには残念ながら何も期待できない。
以上