経産省・エネ庁は「今だけ、金だけ、自分だけ」の大嘘つき!
その173 2021年5月16日
「想像力」を鍛えよう、戸谷洋志著「原子力の哲学」(集英社新書)が教える人類の愚かさ
〜広島・長崎・福島を経験した地震大国日本で脱原発を実現できない理由は「想像力」〜
 若い戸谷洋志さんが何と明解な文を書いてくれるのだ! 哲学の書「原子力の哲学」を読み始めて一番に感じた、同年代の斎藤幸平さん『人新世の「資本論」』もそうで一気に読めた。
 戸谷氏は、科学的・技術的な言説で原子力を語ることに限界があると考え、7人の哲学者の考察を紹介しながら、次の様に結んでいる。
・全面的核戦争の脅威とともに、一見平和的で人類の便益に適う原子力発電に、私たちが飲み込まれている現実が脅威だ
・自然科学的な専門知に基づく予測には限界がある
・破局が予測できたとしても人間にはそれを信じることができない
・脅威への抵抗の為に、@領域横断的な対話を、A想像力を鍛えよう、B落ち着いた態度で熟慮する余裕を!
           
 そう、専門知に基づく予測の限界と人間の想像力の無さが今の愚かな現実を招いている。とりわけ日本では、東電福島第一原発事故後10年を過ぎて、福島は全く終わっていないにも拘らず、経産省は今また第6次「エネルギー基本計画」で地球温暖化対策を口実に原子力発電を残そうとしている、十年止まっていた老朽原発まで動かして!
 私たちも、地球上の総ての生き物への想像力を鍛え、未だに原発を残そうとしている政治家や官僚たちに、科学的事実を突きつけながらより「想像力」を持つように訴えよう。

戸谷洋志著「原子力の哲学」(集英社新書)紹介
マルティン・ハイデガー、カール・ヤスパース、ギュンター・アンダース、ハンナ・アーレント、ハンス・ヨナス、ジャック・デリダ、ジャン=ピエール・デュピュイ。
本書は原子力(核兵器と原子力発電)をめぐる7人の代表的な哲学者の考えを紹介し、それぞれの人と思想の関係を整理する。
技術、自然、そして人間――。
原子力の脅威にさらされた世界はどのようなもので、そうした世界に生きる人間はどのように存在しているのか、その根源を問うていく。
◆目次◆
第1章 原子時代の思考――マルティン・ハイデガー
第2章 世界平和と原子力――カール・ヤスパース
第3章 想像力の拡張――アンダース 
第4章 世界の砂漠化――アーレント
第5章 未来世代への責任――ハンス・ヨナス
第6章 記憶の破壊――ジャック・デリダ
第7章 不可能な破局――ジャン=ピエール・デュピュイ
以上