原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その35   2021年9月22日
UNSCEAR2020年報告に騙されてはいけないー2
〜大幅に減った「経口摂取」甲状腺被曝を検証する〜
 その34で、岩波科学6月号特集「被曝影響評価をめぐる問題群」を参照し、UNSCEARをはじめ国内外の組織・個人が福島における被曝影響を小さくみせようとしていることを紹介した。岩波科学9月号からその続編というべき論文を紹介する。



 白石草<UNSCEAR2020年報告書で大幅に減った「経口摂取」甲状腺被曝を検証する>は、「2013年報告書」に比べ公衆の被曝線量推計値が大幅に減少している「2020年報告書」を検証し、<大幅な過小評価が生じている可能性が高い>と結んでいる。
 以下ではその一部を紹介する。
1 大きく変わった「2020年報告書」の被曝評価
 「2013年報告書」から次の様に「2020年報告書」で被曝評価が下がっている。
〇浪江町の乳幼児の事故1年目の甲状腺平均吸収線量 83mGy => 13mGy
〇シナリオ変更による吸収線量の大幅減少
楢葉町から田村市に避難した乳幼児82mGy=>楢葉町からいわき市に11.1mGy
飯館村から福島市に避難した乳幼児56mGy=>飯館村に長く留まっていた16mGy
〇津島地区や飯館村への3月15日夜のプルーム影響大幅減
〇避難所が外気を取り入れない高い遮断効果があったとして吸入による被曝線量を半減
〇ヨウ素の豊富な食事を理由に被曝線量全体を半減
◎最大の違いは、経口摂取の扱いで、32.79mGy => 1.1mGy〜数mGy
2〜10 「経口摂取」の甲状腺被曝はなぜ減ったか を詳細な資料で検証
 「日本は出荷制限が早かったため、チェルノブイリと異なり、内部被曝は少なかった」との言説は事実と大きくかけ離れていた。高濃度に汚染された食品は流通し続けた。

 なにゆえに、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が公衆の被曝線量推計値を大幅に過小評価したのか。イチエフ事故の影響を小さく見せようとしているのだ。そのことは、中川保雄「放射線被曝の歴史」の次の文から明らかだ。
<アメリカのビキニ核実験によって世界的に高まった死の灰への不安は、国連の下に「原子放射線の影響に関する科学委員会」を誕生させた。…。国連科学委員会は、本質的には、「原子力の平和利用」をスムーズに進めるためのものでしかなかった。…。原子放射線の影響に関する国連科学委員会は、名称こそ科学委員会とされているが、科学分野ではなく国家の代表から構成された。>
以上