原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう! その21 2019年8月29日 ICRPがドラフト文書を公開、いよいよ福島の被曝影響隠しの総仕上げか 〜牧野淳一郎さんが指摘する県民健康調査と東大・福島県立医大とICRPの大問題〜 |
発行したばかりの「岩波科学9月号」の「3.11以後の科学リテラシーno.81」(牧野淳一郎さん、神戸大学)が非常に重要な指摘をしている。引用して要約・紹介する。 ○福島県の甲状腺検査評価部会で提出された資料には、信じ難いミスがあり、それ以上に問題なのは「差がでにくいとわかっている解析方法を後出しで採用した」 ○福島県の甲状腺検査のまとめの文書はそのような様々な問題点を無視したもので「現時点において」という留保がつけられており、被曝との関係がないことを証明したものではもちろんない。 ○「県民健康調査」検討委員会および甲状腺検査評価部会の見解は、「福島では被曝によって甲状腺がんが増えないことが証明された」訳では全く無い。このことを強調しておく必要がある。 ○その20でも報告したように、7月19日に東大と福島県立医大の調査委員会が宮崎・早野論文について「発見しない」ことにした。きちんと検討することが求められる。 ? ところが、今パブリックコメント募集中のICRP Publications(109と111)の見直しでは、統計学的には大きな問題を含む甲状腺検査評価部会の見解が、検討委員会での確定をまたずに早速なんの留保もなく取り入れられている。 Childhood thyroid cancer cases found in Fukushima Prefecture are unlikely to be the result of radiation exposure after the accident.(パラグラフB42) 正に原子力ロビーたちのやり口だ。 ?牧野さんは、ICRPドラフトについて、次のようにまとめている。 < ◆ICRPはPublications109と111をアップデートし、緊急時被曝状況、現存被曝状況での参考レベルの設定の考え方を変更するドラフトを公開した。 ◆緊急時被曝状況では被曝量の上限を100mSVにとっているが、これは100mSv以下ではがんが増えない、ということを暗黙に仮定することで成り立つものであり、現在の科学的知見とは矛盾する。 ◆現存被曝状況では、参考レベルを現在の勧告より上げる方向になっており、これは単に除染・避難のコストを下げることが目標であろう。 ◆そもそもICRP勧告自体が、事故を起こして放射性物質をばらまいておいて、住民は被曝しても我慢しろ、というとんでもない代物だが、今回の変更はさらにもっと被曝しろ、というものである。 ◆小児甲状腺がんについても、「関連なし」という甲状腺検査評価部会の見解が検討委員会で確定される前に早速取り入れられており、これも大きな問題である。 これを受けて、安倍政権は原子力緊急事態宣言を解除するつもりなのだろうか。 (参考) 原子力資料情報室 第101回公開研究会「ICRP新勧告案の問題点〜パブコメ応募の手引き〜(仮)」 日 時:9月9日(月)18:45〜20:45(開場18:30)場 所:なかのZERO 本館「視聴覚ホール」(東京都中野区中野2-9-7)アクセス→https://www.nicesacademia.jp/zero/access/ 講 師:濱岡豊さん(慶應義塾大学商学部教授) 解 説:瀬川嘉之さん(高木学校) 資料代:500円(予約不要) 主 催・お問合せ:特定非営利活動法人 原子力資料情報室 |