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その8   2019年2月8日
ヨウ素131の土壌マップは超「過小」推定
〜文科省「放射線量等分布マップの作成」は小児甲状腺がんへの影響隠し!〜
「その7」末尾に書いたように、イチエフ事故後の文科省によるヨウ素土壌濃度マップ作成が、検出限界を悪用して超過小に推定している。できれば2011年9月の「放射線量等分布マップの作成等に係る検討会」をご覧頂きたい。
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/017/shiryo/1311431.htm)

資料第9−1−1号:文部科学省による放射線量等分布マップ(ヨウ素131の土壌濃度マップ)の作成についてに基づき、同検討会のいかさまぶりを説明する。
1 ヨウ素131半減期8日を悪用して過小推定
各メッシュ箇所5地点の表層5cmの土壌を採取してゲルマニウム半導体検出器でヨウ素131を測定している。土壌採取日は第1期(6月6日〜6月14日)、第2期(6月27日〜7月8日)と約1カ月の期間にまたがっている。ところが、資料第9−1−1に
「○今回の調査結果は、第1期土壌採取期間から第2期土壌採取期間までの日数があいていることから、マップを作成するにあたっては、第1期土壌採取の最終日である6 月14日時点に半減期を考慮して放射能を補正した。」と書いてある。
 これでは、特に第2期に採取した土壌を6月14日時点として半減期を考慮して放射能を補正すると、超過小に推定することになる。例えば6月27日採取分は1/3程度に、7月8日採取分は1/8程度に推定している。
2 検出下限値をゼロ扱い
 NDのゼロ扱いは一般には当然であるが、検出下限値が非常に大きい(数百〜数千Bq/u)ので、ゼロで無く検出下限値の半分とするとか、<最も確からしい値>を活用するべきである。
3 <最も確からしい値>を悪用して算術平均で過小計算
 I131が短半減期核種ゆえ検出下限値(試料ごとに可変)以下でも「見かけの放射能の値」が得られる。これを<最も確からしい値>と呼ぶか<参考値>と呼ぶかが検討会で議論されたが、5つの試料から各メッシュ(箇所と呼んでいる)の算術平均値を推定するに当たって、推定値が過小になるように計算している。それが次だ。

@同一箇所で採取した複数試料の核種分析結果が全て検出下限値以下の場合、その採取定地点の測定結果は不検出と見なす。
A同一箇所で採取した複数試料の核種分析結果が全て検出下限値以上の場合、それらの値を算術平均した値を使用する。
B同一箇所で採取した複数試料の核種分析結果のうち、1 試料でも検出下限値以上の値が存在する場合、その他の試料が検出下限値以下であったとしても、検出下限値以上の測定値及び検出下限値以下の場合に得られる参考値を算術平均した値を使用する。

@で5つの値がどれもNDか<最も確からしい値>であればそのメッシュはNDとする。
一方、Bで5つのうちひとつが検出限界値以上である場合に他の<最も確からしい値>をも算術平均の対象にするのだ。<最も確からしい値>を、@では平均対象外としながら、Bでは平均対象にするのだ。
 
 非常に分かりにくいと思うが、配付資料「土壌の核種分析結果(ヨウ素131)について」を見ると、メッシュ値がどのように過少推定されているかが分かる。その一部を例示する。
(福島市060N048) 5つの値は<287><28>,ND,<204>,<4>と総て検出下限値(約500)以下
メッシュ推定値はND(=0)
各試料の検出下限値の半分250、あるいは<参考値>の平均100に推定可能
(二本松市026N052)ND,ND,<482>,ND,1506で、検出下限値は500〜1400
メッシュ推定値は437(1506+482を5で割っている?)
NDと<>を無視すれば1506、<482>を生かしNDも検出限界の半分扱いすれば約700
(伊達市040N032) <1076>,<1042>,<356>,<928>,<437>で、検出下限値は全試料1000以上
メッシュ推定値はND(=0)
5つの<参考値>の平均をとれば680
(郡山市004S054)<808>,623>,ND,<151>,<647>で、検出下限値は1000〜2100
メッシュ推定値はND(=0)
4つの<参考値>とNDの平均で321、NDを検出下限値の半分とすれば447
(大熊町002S002) 3試料でND,<2243>,<4018>、検出下限値は4912,4914,6262
メッシュ推定値はND(=0)
<参考値>を生かせば約2000〜3100(これだけ大きな値をゼロ扱い!)
 以上、他にも比較的線量が少ないところで検出下限値が大きなところもNDと判断されているメッシュが多数ある。
 なお、この土壌核種分析結果の表の各ページには「※複数地点で採取した試料のうち、1つでも検出下限値以上の測定値がある場合、検出下限値以上の値及び検出下限値以下の値の中で最も確からしい値〈A〉を用いて算術平均している。」の断り書きしてある。

 以上、この文科省の検討会が各メッシュ点の値を小さく小さく推定したことを理解していただけたでしょうか。
 実は、この検討会を傍聴して、文科省に電話したら受けた人も「確かにその平均の計算方法はおかしいですね」と答えた。また、検討会で傍聴席から質問したら委員が「確かに安全側ということでは(検出)下限値を用いるのがあれなんですけど」と言いよどんだ。更に終わってからの文書質問に対して、文科省の担当はあれこれ縷々言い訳しながら最後に「計算手法を明確に情報提供、透明性は確保するよう努力された」とのFAXで逃げた。

 なお、これらの結果を使って、セシウム137 に対するヨウ素131の沈着量の比率を論じているが、上記を考えればこの議論も信用できない。
 何よりも、小児甲状腺が多発し、100mSvも浴びた少女が居たことも隠され、更にかの山下俊一氏が「深刻な可能性」を示唆した見解記録が隠されてきた(東京新聞こちら特報部)と同様に、「ヨウ素131の土壌濃度マップ」も、測定と統計のいろはに反する計算方法で過小に推定したのだ。
以上