サンプル・レジュメ4
(作成者)三輪隆・埼玉大学
(使用箇所)2002年7月13日の「宇都宮地区労・有事法制問題学習会」
(講演対象)一般向け
(講演内容)米国の先制攻撃戦略、「後方支援」加担の戦争責任、平和憲法こそ人間の安全の現実的な保障
2002.07.13.宇都宮地区労・有事法制問題学習会
有事法制と私たちの戦争責任
三輪 隆 (埼玉大学教員)
一、なぜ今、有事法案なのか?
「もし万一」をどう考えるか?
自然災害と武力攻撃の違い:能力だけでなく意図・利害の有無をみる
武力攻撃・戦争:相手にたいする働きかけの可能性 防止・回避が絶対に必要
災害:予知+防災+復旧、
1.日本有事の可能性は?
日本こそが<圧倒的な軍事力+4万在日米軍>をもって周辺に脅威を与えている
北朝鮮:GNP沖縄の約半分、燃料部品なく訓練不足の旧式大軍;命中率1/1400のロケット、核実験不能、大きな特殊部隊、
99.10.「東亜日報」<北の脅威を強く感じる>韓国11%、日本33%
中国:台湾に劣る通常兵器、侵攻能力なし、中距離ミサイル
東シナ海石油資源問題を軍事危機に至らせないためには非軍事的努力こそが必要
2.攻めてくる者もいないのに何故?
1)戦後米国の一貫した戦略
自由市場経済ルールの維持強制をとおして世界的優位(4%の人口で23%の富)を保つ。
「このルールへの挑戦者を孤立させ」、市場と資源へのアクセスを確保する。
冷戦以降の戦略見直し: 選択的関与、 「二つの大規模地域紛争」(中東・東アジア)への前方展開、
同盟国能力の最大限活用
97年 日米防衛協力の指針(新ガイドライン):60年安保の実質改定
99.5. 周辺事態法:米軍事作戦への「後方地域支援」参加(海外派兵)
2)なくてはならない在日米軍基地
日本の地勢的条件
「おもいやり予算」:本国に基地を置くより安上がり
94年北朝鮮「核疑惑」経験:1059項目要求
00.10. アーミテージ・ナイ報告「ガイドラインは上限でなく加減」
「有事立法の成立も含むガイドラインの誠実な実行」
M.グリーン「協力に消極的な民間機関や地方自治体に、必要な協力を行うことを強制できる権限を首相に与えるよう、更に立法措置が必要」
3)「軍事カード」をもった「普通の国」への日本支配層の渇望
日米軍事同盟強化、集団的自衛権行使、有事法制整備の提言:
99.3. 経済同友会「4つの緊急提言」、 01.3. 自民党国防部会提言
小泉人気と911事件による弾み
「自衛隊創設に匹敵する快挙」「今を逃したら今後3年たっても5年たっても、、、」
二、 軍が大きな顔をする「普通の」国家社会へ
3.有事法制:「テロとの戦争」を支える軍事態勢づくり
主眼は「グローバル有事」・周辺事態での発動
1) 「予測」「おそれ」段階からの発動
a)「周辺事態」との重なる「武力攻撃事態」
「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重大な影響を与える事態」
b)ガイドラインに組み込まれた事態認定システム
2) 民主的コントロールの欠如:「予測」段階から国会関与は原則事後承認
3) 地方自治体・公共機関の動員、「国民の協力」体制の立ち上げ 平時からの訓練へ
4.既に始まっている戦争準備
「テロ対特措法」による「後方地域支援」=参戦:戦争犯罪への加担は続いている
1)01.09.BPC「周辺事態+日本有事」作戦計画合意(統幕事務局長+在日米軍副司令官)
2)日米統合指揮所演習02.02.16〜20.:外務・国土交通・厚生労働省、海上保安庁、警察庁
3)「周辺事態」対処の危機管理マニュアル作成(秋田・岩手・広島・三重・滋賀など)
三. 「武力による平和」か非暴力の平和か?
5.保安官であることも止めた米国
1)介入政策を継承する共和党政権: 敵対者の能力に焦点を合わせた対応
前方抑止、強制進入部隊の投入、海外基地の強化
軍事革命:精密兵器による一方的攻撃と大量殺戮
戦略的コントロール:恒常的に敵の状況を監視し、その軍事・産業・政治的標的にたいする計画的な攻撃によってその力を削減したり、
必要があればそうした能力を壊滅することによって戦略目標を実現する一方的攻撃の方策
"テロとの戦い"の戦時宣言
冷戦期を上回る大軍拡へ:圧倒的軍事支配を維持
2)先制攻撃肯定へ転じた米軍事戦略
01.09. ラムズフェルド演説「最良の、そしてある場合に唯一の防衛とは、すばらしい攻撃にこそある」
06.01. ブッシュ
3)国防総省「核戦力態勢見直し」
「使える」核兵器開発の促進、核兵器と非核兵器との融合
「先制攻撃に対する抑止力」から先制攻撃使用へ
4)国連・国際法の無視と選択的利用
国際刑事裁判所不参加・PKO撤退: 初めから戦争犯罪を公認する
アフガン攻撃の現実:非人道的大量殺戮、あからさまな人種的蔑視、
6.非暴力による平和貢献へ
1)「武力による安全保障」は幻想
「国民保護」:都市化社会の軍事的防衛に限界
自衛隊は、「住民は既に避難」を前提にした訓練しかしていないし、できない。
「武力による安全保障」:イ)軍事的監視社会化 一部エリートだけを守る階層分断的抑圧の日常化
ロ)先制攻撃=米国に追随
2)「経済大国」の”被害者平和主義”
9条は、戦争責任を自ら果たせなかった日本に対する安全保障として外から挿入された
…「われらは、全世界の人々が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
…「平和を愛する人々の構成を信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
…戦争、武力による威嚇、武力の行使の放棄、
…戦力不保持、
…交戦権否認
自分たちだけは酷い目に会いたくないという"被害者平和主義"
"被害者平和主義"運動による平和憲法擁護:日本の安全保障に大きな成果
「経済大国」化=再び踏みにじる側に立つ時代に直面する限界
グローバルな新自由主義経済による収奪の上にたつ「豊かな社会」
恨まれる・憎まれるニホンになっていないか?
3)「経済大国」ニホンの世界史的責務
@.<憎まれない・尊敬される国>への途:「経済大国」ニホンの力能をどちらへむけるか?
これまでの世界史の中で、経済大国は同時に軍事大国だった
「経済大国」ニホンの軍事大国化は、米軍事行動の飛躍的強化への加担を意味する
*経済的力能を非暴力的平和保障へむける:武力紛争の背景にある貧困と格差の是正・解消への貢献
*平和憲法はその法的根拠:たとえ日本民衆が見捨てても世界の民衆運動の旗印になる
A.反グローバル化運動は平和運動を、平和運動は反グローバル化運動との連携を絶対的に必要とする
多国籍企業支配にたいする民主的規制にとって、多国籍企業支配の基礎である<自由市場経済ルールの維持強制>システムの根幹をなしている 米軍事行動にたいする国際的規制が絶対に必要
a)多国籍企業のグローバル支配に対抗する国境をこえた民衆の連帯と共同行動
b)政府・国際政治機構をとおしての多国籍企業規制
憲法に根拠規定をもつニホンの民衆運動の責任は大きい
*有事法制をつぶすことは、世界と日本の平和にたいする私たちの責任