●7月17日(月)
終日、原稿。書きまくって某科学技術情報誌にメールで送る。
●7月18日(火)
夕方、JCA-NET主催の国際シンポジウム「『エシュロン』を知っていますか?」に参加。この問題をいちはやくレポートしたイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベル氏の話などを聞く。
天笠啓祐氏の紹介で、某生協から、遺伝子組み換え食品について講演依頼がファクスで来る。ようするに、スケジュールの都合で不可能となった天笠氏の補欠である。それでももちろん天笠氏には感謝している。
●7月19日(水)
この日の昼間の行動については極秘。ほんとは書きたくて仕方がないのだが……。
夕方、中野にて、DNA問題研究会に出席。西村浩一氏が遺伝子治療について話すのを聞く。
その後、近くの喫茶店でお茶を飲んだのだが、ある若い人が、僕と同業者の○○さんの名刺を見て、「ライターって、どうやって喰っているんですか?」と聞いたところ、○○さんは「原稿料で喰ってるに決まっているだろ」と憮然として答えた。キレかけているように見えたが、当然である。○○さんがどのような質と量の仕事をしているのかも知らずに、そんなこと聞くべきではない。というか、それ以前の問題として、この若い人はものを書くということの価値をまったくわかっていないようだ。○○さんは「たとえば、コンビニで働けば、その時給に見合っただけのお金がもらえるでしょう。それにはそれだけの価値があるからだ。でもあなたは雑誌を読んで、そこに400字当たり何千円かの価値がそこに存在することがわからないのでしょう?」(大意)と言う。そしてこのような認識をもつ人は、この若い人だけではない。本誌先週号の金曜日のところにも書いたが、僕も同じような質問を受けたことが何度もある。
そうした人たちは、ようするに、活字媒体を読まない人なのだろう。
●7月20日(木)
祝日なんて関係ないフリーライターであるが、妙典まで自転車で行って、ラッセル・クロウ主演、リドリー・スコット監督『グラディエーター』を見る。秀逸。スコットの『ブレードランナー』は僕の人生に影響を与えた映画であり、『エイリアン』や『ブラックレイン』もずいぶん楽しく観させてもらったが、『1492コロンブス』あたりで「ん?」と思っていたので、『グラディエーター』にもあまり期待していなかったのだが、素晴らしい出来のエンタテイメント映画である。スコットは次に、『羊たちの沈黙』の続編『ハンニバル』を監督するとか。楽しみである。
●7月21日(金)
昼間、原稿。最後の原稿を某科学技術情報誌編集部にメールで送る。合計11ページも書いてしまった。
夕方、「民衆のメディア連絡会」の定例会に出席。「教えられなかった戦争」シリーズで知られる映画監督・高岩仁氏の話を聞く。戦争に関するドキュメンタリー映画というと、戦争被害者の声を伝えることで平和を訴えるあきりきたりな主張(失礼!)が多いが、このシリーズでは、太平洋戦争勃発の起源など、戦争の経済的側面に鋭くメスを入れ、しかも同じ構造が終戦直後から現在まで続く「第2の侵略」となっていると喝破している。もっと観られてよい映画であると思う。(この映画と定例会については、長めの批評的感想を書いたのですが、ご興味のある方には送ります。ご連絡を。)
●7月22日(土)
終日、雑務。
夜11時過ぎてから、突然、近くで住宅工事が始まる。道を防いで、巨大なクレーンで材料を運んでいるのだが、うるさくてかなわない。たまらず、工事の監督に問いつめると、「前もって説明したのですが……すいません……」と平謝り。「そんな話聞いていない。うちは『近所』ではないのか?」というと、「とんでもないです」とおろおろ。名刺をゲットし、部屋に戻ってむりやり寝る。寝られなかったが。
●7月23日(日)
終日、雑務。
* * *
最近ふと思ったことがある。若い人たち----といっても僕より4、5歳しか違わないのだが----と同席していると、やたらと彼/彼女らの携帯電話が鳴り、さっと席を立って、すみっこで話しているのを見ることが多い。いっしょに歩いていて、ふと振り返ると、彼/彼らは歩きながら携帯電話で誰かと話している。彼/彼女らが僕より忙しいようには見えない。彼/彼女らはそれほどの収入がないくせに、毎月何千円も携帯電話に使うのだろう。ある出版関係者が「われわれのライバルは、携帯電話とインターネットだ」と言っていたが、もっともである。出版社が苦しくなるはずである。彼らが毎月携帯電話に使う何千円かを、ファッション雑誌とマンガに使ってくれれば、出版界は少しは快復するだろう。
僕も携帯電話(PHS)を持っている。しかしめったに鳴らない。たまに鳴っても、100パーセント仕事関係の連絡で、用件など30秒で終わってしまう。念のため書いておくが、僕はヒマな人間ではない。つい先日も、若い人たち数人と話していると、たびたび電話がかかってきて、何度も会話が中断されてうんざりした。そのうち、女性の一人は「私はこれで……」と言って、その場から去ってしまった。休日の前夜である。僕はふと、自分が30を過ぎてしまっていることに気づいた。(つづく)
※今週もコラムはお休みします。
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