ニュース・ダイジェスト 2013年

2013年11月19日

第289回定例会 ヘイトスピーチとメディア

 人権と報道・連絡会の第289回定例会が11月8日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加した。テーマは「ヘイトスピーチとメディア」。
 9月に設立された「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク・のりこえねっと」の共同代表・辛淑玉さんから「レイシズムと日本――私の中にある哀しみ」と題して講演を受けた。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の京都朝鮮第一初級学校に対するヘイトスピーチで京都地裁は10月6日、「在特会の街宣は人種差別」として街宣差し止めなどを命じる判決を出した。同様の行為は全国各地で繰り返されているが、日本社会はこうした「憎悪犯罪」を容認する風潮が強い。辛さんは、各地のヘイトスピーチの実態を映像で紹介した後、在日朝鮮人・外国人、沖縄、被差別部落などに対する差別、いじめ、暴力の実態と構造、その背景にある日本社会の根深いレイシズム、メディアの問題点などについて問題提起。それらの問題をどう乗り越えるか、参加者の間で討論した。

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2013年10月22日

第288回定例会 秘密保護法とメディア

 人権と報道・連絡会の第288回定例会が10 月11日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは「特定秘密保護法とメディア」。
 安倍晋三政権が臨時国会に提出する「特定秘密保護法案」は、権力が国民に知られたくないことを「特定秘密」に指定し、それを漏らした者・漏らさせた者に最高で懲役10年の重罰を科す。憲法21条「表現の自由」に「公益及び公の秩序」という条件をつけた自民党改憲草案の先取りであり、かつて中曽根政権が画策・失敗した国家秘密法を復活させるものだ。10月に入り、大手メディアも危険性を伝える報道を始めたが、一般の関心はまだ低く、自民党は公明党を抱き込んで強行突破する構え。例会では、憲法学者の清水雅彦さん(日本体育大学准教授)が、①自民党改憲草案の表現規制②国家秘密保護法制の展開と内容③秘密保護法案の内容と問題点④国家安全保障会議など他の制度との関連も含め、問題点を報告し、「国会で法案を通させない世論作りを」と訴えて参加者の間で討論した。

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2013年09月21日

第287回定例会 実名報道の犯罪性を問う訴訟

人権と報道・連絡会の第287回定例会が9月13日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは「実名報道の犯罪性を問う訴訟」。2010年に「名古屋偽造文書冤罪事件」で逮捕・実名犯人視報道され、深刻な報道被害を受けた佃治彦さんが8月2日、『朝日新聞』『毎日新聞』『中日新聞』の3社を相手取って、東京地裁に名誉毀損などの損害賠償請求訴訟を起こした。
この事件について、人権と報道・連絡会では10年6月の定例会で佃さんから報告を受けている。この時は例会報告も人報連ニュースの記事も匿名だったが、今回の提訴に際して佃さんは顕名で報道被害を訴えることを決意した。例会では、弁護団の木下渉弁護士が本件提訴の意義、訴状の概要、報道機関の社会的責任と報道のあり方、実名報道の問題点と判例などを詳細に報告、佃さんも事実関係を中心に話した。この訴訟の第1回口頭弁論が例会5日後の9月18日に開かれ、被告3社とも「争う姿勢」を見せた。人報連事務局では、この訴訟を「逮捕時の実名犯人視報道の犯罪を問う初めての本格的裁判」ととらえ、全面的に支援していくことにしている。

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2013年08月13日

第286定例会 狭山事件 50 年――再審と報道の再検証

 人権と報道・連絡会の第286回定例会が7月19日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加、「狭山事件50年――再審と報道の再検証」をテーマに部落解放同盟中央本部狭山担当事務局の安田聡さんが報告した。
 狭山事件は今年、発生から50年の節目を迎え、第3次再審請求審では新たな証拠開示が続いて、再審開始へ大きく期待が高まっている。安田さんは、事件の概要
と裁判の経過、確定判決の構造と再審請求の争点、第3次再審請求の新証拠と証拠開示の現状などをわかりやすく説明、当時の捜査と報道の問題点について詳細に分析・問題提起した。この事件では、被差別部落に対する警察の見込み捜査、住民の差別意識が冤罪の大きな要因として問題になったが、安田さんは警察情報に依存した犯人視報道が差別・偏見を煽った結果、思い込みによる間違った目撃証言を生むなど、報道が裁判にも重大な影響を及ぼしたと指摘した。

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2013年06月26日

第285定例会 「改憲とメディア」検証

人権と報道・連絡会の第285回定例会が6月14日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約20人が参加した。テーマは「改憲とメディア」検証。人報連世話人の山口が、憲法・改憲をめぐるメディアの報道姿勢、その変遷と問題点について、昨年4月に発表された自民党改憲草案の問題点も含めて報告した。安倍晋三首相は12月の連立政権発足後しばらく「改憲」主張を控えていたが、「維新」橋下徹共同代表が3月末、「自民、みんなとともに参院でも改憲発議に必要な3分の2をめざす」と述べると、4月9日には国会で「96条を改正する」と言明。メディアも「改憲・96条が参院選の争点に」と報じた。その後、「96条先行改正」に批判が高まり、参院選は「アベノミクス」宣伝で乗り切る方向に転じたが、参院選に勝てば再び「壊憲」を加速するものと見られ、参院選を前に「安倍壊憲」をどう報道するかが今、メディアの大きな課題になっている。

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2013年05月27日

第284回定例会「大崎事件再審請求棄却と報道」

 人権と報道・連絡会の第284回定例会が5月17日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加した。テーマは「大崎事件再審請求棄却と報道」。再審を求めている原口アヤ子さん(85歳)の弁護団事務局長・鴨志田祐美弁護士から報告を受けた。1979年に鹿児島県大崎町で起きたこの事件で鹿児島地裁(中牟田博章裁判長)は3月6日、再審請求を棄却する決定を出した。事件は原口さんの夫の弟が変死し、親族4人が殺人罪などで逮捕されたもの。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年の有罪判決が確定。出所後の95年に再審請求し、02年に鹿児島地裁が再審開始を決定した。ところが2004年、福岡高裁宮崎支部がその決定を取り消し、その特別抗告が棄却された後、10年に第2次再審請求をした。鴨志田さんは、①警察情報を鵜呑みにした事件の初期報道②第2次再審請求で再審を求める世論を形成したメディアの報道③地裁決定の問題点を中心に報告、冤罪事件における報道役割の大きさを浮き彫りにした。

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2013年04月25日

第283回定例会「福井女子中学生殺人事件の再審開始取り消し決定と報道」

 人権と報道・連絡会の第283回定例会が4月19日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加した。テーマは「福井女子中学生殺人事件の再審開始取り消し決定と報道」。再審請求人の前川彰司さんと佐藤辰弥弁護士から報告を受けた。1986年に福井市で起きたこの事件で、名古屋高裁(志田洋裁判長)は3月6日、再審開始を認めた高裁金沢支部決定を取り消した。前川さんは一貫して無実を訴え、一審判決(90年)は無罪。しかし、二審判決(95年)は懲役7年の逆転有罪で97年に確定、前川さんは出所後の04年に再審請求し、11年11月に高裁金沢支部が再審開始を決定した。佐藤弁護士は今回の決定について、「弁護団が提出した新証拠、再審開始を決めた金沢支部決定を具体的に検討せず、検察の主張を鵜呑みにした」と批判。前川さんは、「証拠は何一つありません。今回は棄却されましたが、最後は絶対に勝ちます」と支援を訴えた。例会には足利事件で再審無罪をかちとった菅家利和さんも参加、前川さんを激励した。

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2013年03月23日

第282回定例会 「本庄保険金殺人事件」と報道

人権と報道・連絡会の第282回定例会が3月15日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加、〈「本庄保険金殺人事件」と報道〉をテーマに、松山馨弁護士から報告を受けた。
99年7月、埼玉県本庄市で金融業などを営む八木茂さんをターゲットに、「保険を掛けられていた知人が次々不審死した」とする疑惑報道が始まった。翌2000年3月、埼玉県警は八木さんと彼が経営する飲食店の女性従業員3人を「偽装結婚」容疑で別件逮捕、同年12月までに4人を3件の殺人・同未遂等の罪で起訴した。八木さんは全面否認したが、他の3人は容疑を認め、さいたま地裁は02年10月、「主犯」とされた八木さんに死刑判決、08年に死刑が確定した。八木さんは現在、再審請求中。松山弁護士は、「科学的証拠が何もなかったにもかかわらず、裁判所は共犯とされた女性3人の自白だけで死刑判決を出した。その背景には、強制捜査に入る前から大々的に展開された疑惑報道の影響、圧力があったのではないか」と指摘、事件への関心と支援を訴えた。

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2013年03月03日

第281回定例会 「陸山会事件」報道

この事件は、民主党元代表・小沢一郎氏が政治団体の土地購入の際、政治資金規正法に違反したとして、東京地検が捜査したものの不起訴処分。その後、検察審査会の2度にわたる「起訴相当」議決で強制起訴、一・二審とも無罪判決で昨年11月無罪が確定した。例会では、同志社大学浅野健一ゼミが、無罪判決と無罪確定に関するテレビ・新聞の報道を分析。これを受け、小沢氏の弁護を担当した弘中惇一郎、山縣敦彦の両弁護士が、捜査と報道の問題点を指摘した。浅野さんはこの事件について「検察とメディアが3年余、小沢氏を『疑惑人』にしたことで『小沢政権』をなくした。世界に例のない検察の政治介入」と批判。弘中弁護士は「そもそも立件するような事件だったのかも含め、メディアは検察の捜査報告書偽造、それに基づく検審議決など捜査の問題点を報道しなかった」と厳しく批判した。

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2013年02月01日

第280回定例会 「尼崎変死事件・誤写真掲載」検証

 人権と報道・連絡会の第280回定例会が1月11日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは「尼崎変死事件・誤写真掲載」検証。
 誤写真被害者の代理人・在間秀和弁護士と、この問題を取材した世話人の浅野健一さんから報告を受けた。昨年10月、多くのメディアが尼崎事件と関係のない女性Aさんの顔写真を被告人Sさんの写真だとして掲載した。Sさんの子どもが19年前、小学校に入学した時の集合写真から誤ってAさんの写真を切り取ったもの。Aさんの相談を受けた在間弁護士が各社に写真の誤りを伝え、Sさんの弁護人・高木甫弁護士も写真が別人であることを本人に確認した。誤報した各社は10月30日から31日、「おわび」を掲載・放送した。在間弁護士は「誤写真掲載でAさんは大きな被害を受けた。19年も前の写真を報道する必要があったのか。報道すべき事実と無関係なことで熾烈な競争をする報道現場が生んだ悲劇だ」と批判。浅野さんは「誤写真掲載に気づいても被害者が訴えていく場がなかったことも大きな問題」として、報道被害を早期に防ぐ報道評議会のような制度が必要と強調した。

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