ニュース・ダイジェスト 2012年

2012年11月19日

第279回定例会 北・拉致報道の10年と今

人権と報道・連絡会の第279回定例会が11月9日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは「拉致報道の10年と今」検証。琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さんが、「感情的民主主義を深めたマスコミの責任を問う」という副題で講演、それを受けて参加者の間で討論した。
2002年9月、小泉純一郎首相と金正日・朝鮮労働党総書記との間で「日朝平壌宣言」が調印された、以来10年、日朝国交回復に向かうはずだった同宣言は、「拉致問題」をめぐる日本側の硬直した対応、「日本の植民地支配」責任を一切問わないメディアの「拉致一色報道」で事実上、反古になった。高嶋さんは、膠着状態下での「家族会」の動揺など、最近の状況を皮切りに、①発端となった9・17日朝会談をめぐる報道の問題点、②日本中を「横田家の一員」にした大政翼賛的報道の実態、③今、マスコミが取り組むべき拉致問題関連のテーマ――などについて問題提起、「マスコミは横田夫妻の言動の後追いをいつまで続けるのか」と問いかけた。

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2012年10月30日

第278回定例会・領土ナショナリズムと報道

 人権と報道・連絡会の第278回定例会が10月19日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加した。テーマは、「領土ナショナリズムと報道」。
 民族問題研究家の太田昌国さんが、この夏以降、日韓・日中間で起きている「領土」をめぐる対立、メディアが繰り広げてきた「領土ナショナリズム」を煽動する報道などについて講演した。
 太田さんは、議論の出発点に置くべきこととして、①日中国交正常化の過程における尖閣問題の「棚上げ」論、②「固有の領土」論と帝国主義の植民地支配の歴史③日本帝国の侵略戦争の「処理」をめぐる国際協定――を挙げたうえで、「尖閣諸島/釣魚列島」問題を中心に、野田政権の「国有化」が引き起こした事態をめぐる報道と言説を詳細に分析。石原慎太郎都知事ら「仕掛け人」たちの言動、マスメディアの論調、評論家・極右雑誌の戦争を煽る文言、日本共産党の見解、民衆心理、海外メディアの報道、中国・韓国からの視線など、多岐にわたって問題を提起、参加者は大きな刺激を受けた。

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2012年09月24日

2012年11・12月(シンポジウム)の予定

 11月定例会は9日(金)午後6時半から、「スペースたんぽぽ」で。テーマは「拉致報道の10年と今」検証。「拉致問題で歪む日本の民主主義」を検証し続ける琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さんに問題提起していただきます。
 12月は8日(土)午後1時30分から水道橋・東京学院3階(120席)で、「憲法からみた実名報道」をテーマに第28回人権と報道を考えるシンポジウムを開きます(パネリストの詳細は未定)。痴漢冤罪事件で実名犯人視の報道被害を受けた憲法学者・飯島滋明さんの「犯罪報道・実名報道は、人権尊重を基本原理とする憲法学で十分に議論されるべきではないのか」との問題提起を受け、憲法学者に報道被害者、ジャーナリストを交え討論する予定です。

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第277回定例会・最近のデモ・運動への弾圧とメディア

人権と報道・連絡会の第277回定例会が9月14日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加、「デモ・運動弾圧とメディア」をテーマに「東電前アクション/麻生邸リアリティツアー国賠訴訟団原告」の園良太さんから報告を受けた。
園さんは昨年9月、「差別・排外主義にNO!9・23行動」のデモ中、「公務執行妨害」で逮捕された(10月に釈放、不起訴)。さらに今年2月、江東区による堅川河川敷公園の野宿者排除に対する抗議行動中に逮捕され、「威力業務妨害罪」で起訴された(6月に保釈、公判中)。昨年の「3・11」以降、反原発運動を中心にさまざまな分野で、かつてない大規模な運動・デモが広がっているが、これに対する警察の妨害・弾圧も強まっている。園さんは弾圧の実態、メディアの報道などについて自身の体験を含め、多岐にわたって問題提起した。

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2012年08月06日

第276回定例会・ゴビンダさんの再審開始決定とネパール帰国

 人権と報道・連絡会の第276回定例会が7月20日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約20人が参加した。テーマは「ゴビンダさん再審開始決定と報道」。1997年に起きた女性会社員殺害事件の冤罪被害者・ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(ネパール国籍)の再審請求審で、東京高裁(小川正持裁判長)は6月7日、「再審を開始し、刑の執行を停止する」と決定した。東京高検が昨年行なったDNA型鑑定で、遺体の残留精液がゴビンダさん以外の第三者(X)のものであることが判明、現場にあった陰毛のDNA型とも一致した鑑定結果を「公判で提出されていれば有罪認定できなかったと思われ、無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたる」と認定した。ゴビンダさんは即日釈放され、家族とともに6月15日、ネパールへ帰国した。
 例会では、「無実のゴビンダさんを支える会」の客野美喜子さんと今井恭平さんが、決定の内容、再審に関する報道――などを報告。今井さんは「新証拠で事実認定がオセロのようにクロからシロに変わったが、これらのシロ認定は原審段階から十分可能だった」「再審でも検察の証拠開示がもっと早ければ、決定・釈放ももっと早まったはず」と裁判所の証拠認定、検察の証拠開示を批判し、問題提起した。

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2012年07月13日

第275回定例会・大阪東住吉事件・再審開始決定と報道検証

人権と報道・連絡会の第275回定例会が6月29日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約20人が参加した。テーマは「東住吉事件・再審開始決定と報道」。
1995年7月、大阪市東住吉区で小学生女児が焼死、母親・青木惠子さんと事実婚の夫・朴龍晧さんが「保険金殺人」容疑で逮捕・起訴され、無期懲役が確定した事件の再審請求審で、大阪地裁は本年3月7日、再審開始を決定した。例会では、逮捕直後から青木さんの弁護活動に取り組んできた斎藤ともよ弁護士が、事件と裁判の経過、再審決定の内容、報道の問題点などを報告した。
2人は逮捕直後、暴力的取り調べで虚偽自白を取られ、「身勝手な母親」などと犯人視報道された。裁判で2人は否認したが、一~三審とも自白を唯一の証拠に有罪判決。弁護団は一昨年、火災再現実験を行い、「火災の原因は放火ではなく、車庫内で車から漏れたガソリンに風呂釜の種火が引火した事故」であることを立証、大阪地裁は放火を認めた「朴自白」の信用性に疑問が生じたとして、再審開始を決定した。

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2012年05月20日

第274回 京都・劇団員の〈窃盗〉実名報道被害

 人権と報道・連絡会の第274回定例会が5月11日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは「京都の劇団員の〈窃盗〉実名報道被害」検証。
 昨年10月、京都市内で劇団員Kさんら2人が、窃盗犯人と誤認され、逮捕される事件があった。芝居の小道具に使えそうな水槽が道端に捨ててあると聞いて探すうち、泥棒と間違われたもの。2人は取り調べで事情を説明し、2日後に釈放されたが、『産経新聞』『読売新聞』が、Kさんの逮捕を実名で報道(1人は未成年で匿名)。『産経』は調書にもない「自白」まで作って面白おかしい記事に仕立て、それがネットにも流れて広がったため、Kさんらは劇団公演ができなくなる事態に追い込まれた。例会では、Kさんらが「事件」の経過、『産経』などの報道内容と実名報道による被害について報告。それを受けて、警察情報を垂れ流す「実名犯人視報道」の実態と問題点について討論した。

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2012年04月28日

第273回 光市事件最高裁判決とその報道検証

人権と報道・連絡会の第273回定例会が4月20日夜、水道橋「スペースたんぽぽ」で開かれ、約20人が参加した。テーマは「光市事件最高裁判決と報道」。
山口県光市で母子を殺害したとして殺人罪などに問われ、差し戻し審で無期懲役から死刑になった元少年の上告審で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は2月20日、上告棄却の判決を言い渡した。事件当時「18歳と30日」の死刑、裁判官1人が死刑に反対するなど異常な判決となったが、大手メディアは判決の問題点より、被害者遺族の感想や元少年のプライバシーに焦点を当て、ほぼ一斉に元少年の実名(旧姓・新姓)を報道、一部は顔写真まで掲載・放送した。例会では、判決後、元少年に面会した浅野健一さんが面会での様子と判決・報道の問題点を指摘。さらに、同志社大学浅野ゼミの長畑雪香さん、尾茂井京さんが、判決に関するテレビ報道を詳細に分析した結果を報告した。

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2012年03月30日

第272回 北陵クリニック事件の再審請求と報道

人権と報道・連絡会の第272回定例会が3月19日夜、水道橋「スペースたんぽぽ」で開かれ、約40人が参加した。
テーマは「北陵クリニック事件再審請求と報道」。仙台市の北陵クリニック准看護師・守大助さんが2001年、「患者の点滴に筋弛緩剤を混入した」として5件の殺人・殺人未遂の罪で起訴され、08年に無期懲役判決が確定した事件で、守さんと弁護団は2月10日、仙台地裁に再審請求した。主な新証拠は、①「筋弛緩剤の成分が出たという科捜研鑑定は誤り」とする志田保夫・元東京薬科大学教授の鑑定意見書②「小6女児の容体急変の原因は筋弛緩剤ではなく、ミトコンドリア病メラス」とする池田正行・長崎大学教授の意見書③「自白は誘導・強制されたもの」とする浜田寿美男・奈良女子大学名誉教授の意見書の3点。
阿部弁護士は、「本件は科学だけで勝負できる事件。私たちはずっと科学裁判をやれと言ってきたが、裁判所は拒否してきた。新証拠は科学で守君の無実を明らかにした。すっきりした再審ができると思う」と話した。

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2012年03月02日

第271回 福井・女子中学生殺人事件/再審と報道

 人権と報道・連絡会の第271回定例会が2月20日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは、「福井・女子中学生殺人事件・再審開始決定と報道」。
 1986年に福井市で起きたこの事件で殺人罪に問われ、一審で無罪判決を受けながら二審で逆転し有罪が確定、服役させられた前川彰司さんが起こした再審請求審、名古屋高裁金沢支部は昨年
11月30日、再審開始決定を出した。これに対し、名古屋高検金沢支部は12月5日、名古屋高裁金沢支部に異議を申し立て、再審開始を決めた裁判官とは別の裁判官により、名古屋高裁で「異議審」が行われることになった。例会では、逮捕直後から前川さんの弁護活動に尽力してこられた佐藤辰弥弁護士から、事件と裁判の特徴、捜査と報道の問題点について詳細な報告・問題提起を受けた。佐藤弁護士は「逮捕後の報道には私も前川君が犯人と思った」と述べ、無罪推定原則を守らず、警察情報を一方的に流し、権力チェックの使命を果たさないメディアを厳しく批判した。

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2012年01月30日

第270回 Aleph(アレフ)弾圧の現状と報道

 人権と報道・連絡会の第270回定例会が1月16日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約30人が参加した。テーマは「Aleph(アレフ)弾圧の現状と報道」。
 昨年11月の元オウム教団幹部の上告棄却以来、メディアは「焦点は死刑執行に」と大々的な死刑キャンペーンを展開。年末に指名手配中の信者が出頭・逮捕されると、信者を「さらし刑」にしながら「死刑執行を遅らせる狙いか」といった憶測報道が続いている。一方、アレフに対する団体規制法の観察処分は繰り返し更新され、足立区では団体規制法以上の反憲法的人権侵害条例が制定されて、自治体主導のアレフ排斥運動が激化している。例会では、こうした状況について、アレフ広報部の荒木浩さん、関連訴訟の代理人弁護士などから、一連の報道の問題点、団体規制法の観察処分に関する訴訟、「警察庁長官狙撃・犯人断定」国賠訴訟など民事訴訟の現状を中心に報告を受けた。

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