ニュース・ダイジェスト 2011年
2011年11月27日
第269回 沖縄南風原町強盗冤罪事件の有罪判決報道検証
人権と報道・連絡会の第269回定例会が11月21日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約15人が参加した。テーマは「南風原町冤罪事件」裁判員裁判の判決と報道。
2009年4月、沖縄県南風原町でパチンコ店景品交換所強盗事件が発生。約2か月後、同町の赤嶺武さん(当時50歳)が強盗致傷などの容疑で沖縄県警に逮捕され、取り調べで「自白」したとして実名・犯人視報道された。その後、赤嶺さんは否認、黙秘に転じ、那覇地検は7月、処分保留で釈放。しかし、那覇地検は昨年2月、赤嶺さんを起訴、赤嶺さんは再勾留されたが、2日後に保釈になった。その裁判員裁判が8~9月、那覇地裁で開かれ、9月17日、懲役8年(求刑12年)の有罪判決が出された。
例会では、この事件を取材して昨年3月の定例会で報告した世話人の山口正紀が、各紙報道、判決要旨などの資料を基に裁判の概要を報告、「判決内容をみると、有罪とするには合理的疑いを入れる余地がいくつも残っている。裁判員たちが予断を持った裁判官に誘導された疑いを禁じ得ない」と指摘した。
赤嶺さんは名前を出して無実を訴えており、顕名で報告します。
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2011年10月28日
第268回 千葉地裁の裁判員裁判を検証ほか
人権と報道・連絡会の第268回定例会が10月17日夜、水道橋の「スペースたんぽぽ」で開かれ、約20人が参加した。主なテーマは「千葉地裁・裁判員裁判検証」。2007年に千葉県市川市で起きた英国人英会話講師死亡事件で09年11月に逮捕された男性Iさんの裁判と報道について、7月の裁判員裁判を傍聴・取材した人報連世話人で同志社大学教授・浅野健一さんと、浅野ゼミの尾茂井京(おもい・みやこ)さんが、「被害者参加」裁判の問題点、法廷通訳の誤訳、報復感情に支配されたメディアの報道などについて報告した。
また通訳問題に関連し、中国人被疑者の取り調べ段階の通訳の誤りが裁判に重大な影響を及ぼしたと思われる「多摩市パチンコ店強盗殺人事件」について、「滞日中国人労働者・陳さん何さんを支える会」の峰修一さんが、再審請求の経過・現状を報告。
さらに今年5月、痴漢冤罪事件で不当逮捕・実名犯人視報道された飯島滋明さん(名古屋学院大学准教授)が、自身の体験に基づいて「実名報道」の問題点を話した。
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2011年10月06日
第267回 ゴビンダさんの再審で新証拠、報道検証
人権と報道・連絡会の第267回定例会が9月12日夜、水道橋のスペースたんぽぽで開かれ、約50人が参加した。テーマは「ゴビンダさん再審と報道」。ゴビンダ・プラサド・マイナリさんが再審請求中の事件について、7月21日付『読売新聞』が朝刊1面トップで《東電OL殺害 再審可能性/遺留物から別人DNA》と報道、東京高検は25日、DNA鑑定結果を証拠開示した。
被害者の体内から採取された精液と、室内に遺留されていた体毛のDNA型が一致(いずれもゴビンダさん以外の男性)というもので、弁護団は26日、「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」として東京高裁に再審開始を要求。9月に入って検察側は、他の未開示証拠の存在を明らかにした。例会では、「無実のゴビンダさんを支える会」の客野美喜子さんと今井恭平さんが、①事件と裁判の概要②今回の鑑定の意義と再審の見通し③この事件における報道――などを報告。お二人は、鑑定結果の証拠価値を否定する検察官らを匿名で報じるメディアの姿勢を厳しく批判した。
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2011年08月06日
第266回 山陽道バス横転事故、精神疾患患者につき実名報道の被害
人権と報道・連絡会の第266回定例会が7月25日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは「山陽道バス横転事故と実名報道被害」。今年2月、広島県内の山陽自動車道で高速バスが横転、12人(乗客10人、乗務員2人)が軽傷を負う事故があった。
乗客の鹿児島大学生Aさんが精神疾患による不安感から「バスを降ろして」と頼んだが聞き入れてくれず、バスのハンドルを握って事故になったもの。警察はAさんを「殺人未遂」の現行犯で逮捕。新聞・テレビは彼の実名を出し、「就職活動に悩み、乗客を巻き添えにして死のうとした」などと警察情報を鵜呑みにしたストーリーを大きく報道した。Aさんは鑑定の結果「心神喪失」で不起訴になったが、「殺人未遂容疑」での逮捕と報道は、鑑定・治療にも重大な悪影響を及ぼし、結果として精神疾患患者について実名報道したのと同じ報道被害になった。
例会では、Aさんの父親と弁護士が、事件の経過、報道の問題点などを報告、「精神疾患患者の事件と報道」について参加者の間で議論した。
自民党政権時代にできた「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(略称:医療観察法)に、厳罰主義の影が濃く、運用にもいろいろな問題があることが明らかとなった。
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2011年07月04日
第265回 反原発デモ・裁判所批判に弾圧
人権と報道・連絡会の第265回定例会が6月20日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約50人が参加した。テーマは「弾圧とメディア」。最近の2件の弾圧事件とメディア・報道の問題について報告を受けた。
1件は「反原発デモ」に対する公安警察の弾圧。5月7日、東京・渋谷で行われた「5・7原発やめろデモ」で、不当逮捕された2人の救援活動に取り組んでいる園良太さんたちから、弾圧の実態と救援活動について報告を受けた。
もう1件は、裁判所自身による弾圧と傍聴妨害。昨年11月、「東京地裁職員に対する暴行・公務執行妨害」などの言いがかりで逮捕・起訴された大高正二さんの公判が5月から東京地裁で開かれている。この逮捕・起訴自体、不当弾圧として争われているが、公判の傍聴希望者に対する裁判所の異様な嫌がらせ、妨害工作について、ビデオプレスの松原明さんに報告していただいた。
2件とも大手メディアが無関心で報道しようとしない点で共通しており、参加者から「メディアは何のためにあるのか」と批判の声が出された。
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2011年06月05日
第264回 人災原発事故とメディアを検証
人権と報道・連絡会の第264回定例会が5月23日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約80人が参加した。テーマは4月定例会に続き「原発震災と報道」。4月定例会では、槌田敦さんから福島第一原発の事故をもたらしたものと事故対応の根本的な問題について詳細な報告を受けた。
5月定例会では、この人災原発事故の問題点が「どのように報道されてきたか・報道されないでいるか」に焦点を当て、上杉隆さん(ジャーナリスト、自由報道記者協会暫定代表)、広河隆一さん(『DAYS JAPAN』編集長)の2人から、それぞれの取材経験に基づいて報告・問題提起を受けた。
上杉さんは、原発問題においても「記者クラブメディア」が事実解明と報道の大きな壁になっている実態を報告。また広河さんには、地震直後に取材したフクシマとこれまで何度も取材に訪れたチェルノブイリの写真と重ね合わせながら、「フクシマの真実」を話していただいた。
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2011年05月10日
第263回 原発災害と報道
人権と報道・連絡会の第263回定例会が4月18日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約60人が参加した。テーマは「原発災害と報道」。東日本大震災発生から1か月余、大手メディアの福島第一原発事故報道は、原発を推進してきた学者たちに事故の状況を解説させ、「安心を」と訴えるばかりで、「なぜこんな事故が起きたのか」、原発の問題点、根本的な原因追及に及び腰だ。例会では、原発の危険性を一貫して訴えてきた著名な物理学者・槌田敦さん(核開発に反対する会)が、「どうした?汚染日本 どうする?」と題し、「福島事故対策できずに1か月、恥ずかしい日本原子力の現実」について約2時間にわたり講演、参加者との間で質疑討論した。槌田さんの講演はメディアを直接批判したものではなかったが、巨大津波を「想定外」とすることで安全対策費用をケチり、甚大な被害をもたらした東京電力と、そのデタラメを容認してきた内閣府・原子力安全委員会などの犯罪性を具体的に指摘、メディアが伝えない「フクシマの真実」を深くえぐった。
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2011年03月22日
第262回 「コンピュータ監視法案」11日に国会上程、メディアに伝えられることなく
人権と報道・連絡会の第262回定例会が3月14日夜、水道橋の東京学院で開かれた。
3月11日に発生した東北・関東の大地震、東京電力の「計画停電」による交通機関の混乱で会場へのアクセスが困難になる中、7人が参加した。
テーマは、「コンピュータ監視法案とメディア」。2004年以来何度も上程され、廃案になってきた「共謀罪」法案のうち、サイバー犯罪条約を国内法化する部分を分離・復活させた法案(日弁連は「コンピュータ監視法案」と命名)が、大地震発生当日の3月11日、閣議決定され、国会に提出された。
例会では、日弁連でこの問題に取り組んできた山下幸夫弁護士から、①サイバー犯罪条約の概要②今回の法案(コンピュータ監視法案)の概要と問題点と、それに関する報道などについて報告を受け、討論。参加者から、この法律が警察権力による「監視社会化」をいっそう進め、憲法で保障された「通信の秘密」を侵す危険なものであるにもかかわらず、メディアがほとんど問題にしないことについて、批判の声が出された。
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2011年02月26日
第261回 大阪地検特捜部に癒着した「毎日新聞」記事
人権と報道・連絡会の第261回定例会が2月21日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは、「郵便不正事件」捜査と報道被害。この事件で、大阪地検特捜部は石井一・民主党副代表や牧義夫衆議院議員の立件を狙い、メディアにさまざまな捜査情報をリーク、各紙に検察の提灯持ち記事が氾濫した。このうち、『毎日新聞』(大阪本社版)が昨年2月、3日連続で報じた牧議員の知人・日本ビジュアル著作権協会の曽我陽三理事長に関する報道は、でっち上げた「非弁活動」を入口に牧議員の「収賄」立件を狙う地検の思惑を垂れ流したもので、大きな報道被害をもたらした。結局、地検は「非弁活動」も立件できず、この捜査に関わった検事らは証拠改竄問題で逮捕・起訴されるに至ったが、『毎日』は一連の記事について訂正も謝罪もしていない。例会では、当事者の曽我さんと、郵便不正事件報道を調査・追及している浅野健一さんから、『毎日』報道の概要・問題点などを報告していただき、検察リーク報道の問題点を再検証した。
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2011年01月26日
第260回 鹿児島の裁判員裁判、死刑求刑が無罪
人権と報道・連絡会の第260回定例会が1月17日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「鹿児島・夫婦殺害事件無罪判決と報道」。鹿児島市で2009年6月に起きた高齢夫婦殺害事件で鹿児島地裁は12月10日、71歳男性に無罪判決を言い渡した。
判決は鹿児島県警のずさんな捜査を批判、検察の証拠隠しの可能性にも言及した。裁判員裁判で5件目の死刑求刑、しかも被告人が全面否認した事件では初めての判決が無罪となり、各紙は1面トップで大きく報道した。
例会では、無罪判決前に新聞のWEB版で捜査批判の記事を書いた新聞記者の宮下正昭さんから、この事件と裁判、報道について報告していただき、「裁判員裁判」を前にメディアが打ち出した「犯人視しない報道」の実態と問題点について、参加者の間で討論した。
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