ニュース・ダイジェスト 2009年

2009年11月26日

第249回 過熱する集団的凶乱取材――最近の事件から

 人権と報道・連絡会の第249回定例会が11月16日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。
 この日は「再燃したロス疑惑報道とメディア訴訟」をテーマに故・三浦和義さんの遺族代理人弁護士から報告を受ける予定だったが、弁護士が都合で出席できず、代わって世話人の山口が「過熱する集団的凶乱取材」のテーマで報告した。「集団的凶乱取材」とは、英語圏で使われている「メディア・フレンジー」を浅野健一さんが日本語化したもの。
 山口は、11月10日夜、英国人女性死体遺棄事件で逮捕された男性の移送の際にメディアが繰り広げた「被疑者の顔」撮影をめぐる大騒動、10月26日、覚醒剤事件で起訴された女優の初公判で傍聴券獲得にアルバイトを大動員したメディアの「やらせ報道」について、取材・報道の概要と問題点を指摘した。
 質疑・討論では、東京・鳥取の「連続不審死」報道や島根の大学生殺害事件も含め、最近再び激化してきた「集団的凶乱取材・報道」に対して、参加者から厳しい批判の声が出された。

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2009年11月02日

第248回 裁判員裁判と報道を検証

 人権と報道・連絡会の第248回定例会が10月19日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「裁判員裁判と報道」検証。8月に東京・埼玉で始まり、10月中旬まで各地で開かれた約30件の裁判員裁判とその報道の問題点について、人報連世話人の浅野健一さんから、東京地裁の事件で被告人や弁護人から取材した結果も含めて報告していただいた。
 浅野さんは、第1号裁判が「死刑事件・否認事件は避けたい」とする最高裁・法務省・日弁連の法曹三者による「談合」で選ばれた「ヤラセ裁判」であり、以後各地で開かれている裁判員裁判が、検察とマスメディアの「共謀」によって「被害者の報復感情を満たすための厳罰化・被告人バッシング劇場」と化していると指摘。裁判員裁判と報道が、公正な裁判を受ける被告人の権利を侵害するばかりか、「大々的に繰り返される実名報道」によって、新たな報道被害を生み出していると批判した。

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2009年09月28日

第247回 JR浦和電車区事件・労働組合運動への弾圧

 人権と報道・連絡会の第247回定例会が9月14日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは「JR浦和電車区事件・二審判決」。この事件は02年11月、警視庁公安部が、JR東労組大宮地本の梁次邦夫副委員長ら7人を「組合の指示に従わないY氏を脅迫し、組合脱退・退職を迫った」として「強要」容疑で逮捕したもの。
 7人は344日間も勾留された。7人は「Y氏は自ら組合を脱退したのであり、まして退職を迫ったことなどない」と主張したが、東京地裁は07年7月、7人に懲役1~2年の有罪判決(執行猶予)。控訴審では一審が認定した「組合脱退の強要・共謀の日時」の誤りが立証されたにもかかわらず、東京高裁は6月5日、「共謀の成立日時」をずらして控訴を棄却した。例会では、無実を訴えて闘う美世志会(7人)の上原潤一さん、弁護団の中村忠史事務局長から、事件と裁判の経過、今後の闘いについて報告を受けた。

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2009年07月26日

第246回 足利事件・菅家利和さんを迎えて

 人権と報道・連絡会の第246回定例会が7月13日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約70人が参加した。テーマは「足利事件の捜査・裁判・報道」。
 1990年5月、栃木県足利市の渡良瀬川河川敷で4歳女児が遺体になって発見され、栃木県警は91年12月、菅家利和さんを逮捕した。一・二審は「被害者の衣服に付着していた体液とDNA型が一致した」とする科警研鑑定を主な証拠として無期懲役の有罪判決。弁護団は上告審で独自に行ったDNA鑑定をもとに科警研鑑定の誤りを指摘したが、最高裁は2000年、上告を棄却した。再審請求では宇都宮地裁は再鑑定要求を退けたが、再審請求抗告審で実施されたDNA鑑定で菅家さんの無実が明白になり、菅家さんは本年6月4日、再審開始決定を待たず釈放をかちとった。
 例会では、佐藤博史弁護士が事件と捜査・裁判の概要、問題点を詳細に報告。続いて、不当逮捕以来17年半ぶりに自由を取り戻した菅家さんから、自白を強要した刑事たちの取り調べ、弁護士も無実を信じてくれなかった一審裁判、獄中生活、釈放の日や再審開始決定への思い、冤罪とメディアなどについて、お話をうかがった。

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2009年06月21日

第245回 富山冤罪事件の国賠訴訟/浅野健一さんの対文春訴訟勝利

 人権と報道・連絡会の第245回定例会が6月15日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「富山冤罪事件国賠提訴」と「浅野健一さんの週刊文春訴訟・二審勝訴判決」。
 2007年1月に発覚した「富山(氷見)冤罪事件」の被害者・柳原浩さんが5月14日、警察(県)・検察(国)、でっち上げの「実行犯」(警察官・検察官)を被告とし、約1億円の損害賠償を求める国家賠償訴訟を富山地裁に起こした。この訴訟は、再審裁判で裁判所が回避した「冤罪の真相究明」を法廷の場で実現し、「なぜ私のところに警察が来たのか」を明らかにさせて、二度と冤罪が繰り返されないようにとの柳原さんの思いから提起された。
 例会では、「富山冤罪国賠を支える会」の福冨弘美さんから提訴の経過・目標などについて報告していただいた。

 また、「週刊文春セクハラ報道訴訟」では5月15日、大阪高裁がセクハラを完全否定する原告全面勝訴の判決を言い渡したが、この裁判の経過、二審判決の意義について、浅野さん本人から報告を受けた。
 『週刊文春』2005年11月24日号が《「人権擁護派」浅野健一同志社大教授 「学内セクハラ」を被害者が告発!》との見出しで、《浅野教授の学内セクハラを、大学当局が認定した》と断定する記事を掲載したのに対し、浅野さんが週刊文春編集者らに損害賠償などを求めた名誉毀損訴訟で、大阪高裁(松本哲泓裁判長)は5月15日、一審・京都地裁判決を変更し、被告・文春に一審認定の2倍に当たる550万円の支払いを命じる判決を言い渡した。高裁判決は、文春が大々的に書きたてた「セクハラ」をすべて完全に否定したもので、2006年1月の提訴以来3年4か月、文春の人権侵害報道を告発してきた浅野さんの闘いは、全面勝利が確定的になった。例会で浅野さんは「自分が報道被害の報告をするとは思いもしなかった」として報告した。

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2009年05月24日

第244回 舞鶴女子高校生殺害事件の報道を検証

 人権と報道・連絡会の第244回定例会が5月11日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。
 テーマは、「舞鶴女子高校生殺害事件」と報道。昨年5月、京都府舞鶴市の高校1年生が殺害された事件で京都府警は4月7日、60歳男性Sさんを殺人容疑などで逮捕した。警察は昨年11月、現場近くに住んでいたSさんを窃盗容疑で別件逮捕し、6日間にわたって自宅を家宅捜索したが、メディアはこれを女子高生殺害事件と結びつけ、Sさんとわかる形で大きく報道。4月の逮捕では実名・顔写真・映像入りで、さらに大々的な犯人視報道を繰り広げた。しかし、京都府警は「逮捕の根拠」についてノーコメント、物証も「自白」もなく、事件は多くのナゾをはらんでいる。
 例会では、この捜査と報道のあり方に疑問をもち、取材を重ねているジャーナリスト・今井恭平さんから、事件の経緯、捜査と報道の問題点などについて報告を受けた。

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2009年04月28日

第243回 「和歌山カレー事件」上告審と報道再検証

 人権と報道・連絡会の第243回定例会が4月13日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは、「和歌山カレー事件」上告審と報道再検証。この事件は、林眞須美さんによる「無差別大量殺人」と大報道され、自白も動機も物証もなく一・二審で死刑判決が言い渡された。上告審では、安田好弘弁護士ら5人の新たな弁護団が現地調査・実験を行ない、最高裁に新証拠を提出、今年2月に開かれた弁論では一・二審判決の誤った認定に全面的に反証した。最高裁判決(4月21日)を8日後に控えて開かれた例会では、この裁判に疑問を抱き、取材を重ねてきたジャーナリスト・片岡健さんから、一・二審判決が有罪と認定した根拠と問題点、上告審の弁論で弁護団が主張した主な論点、片岡さんが取材でつかんだ「報道されない事件の真実」、朝日新聞を中心に繰り広げられた初期報道のデタラメさなどを詳細に検証・報告していただいた。

【参考サイト】
・林眞須美さんを支援する会

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2009年03月25日

第242回 千葉県東金事件の報道検証、「障害」につけこむ取材

 人権と報道・連絡会の第242回定例会が3月16日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは、千葉・東金事件と報道。昨年9月、千葉県東金市で5歳女児の遺体が見つかった事件で千葉県警が12月、知的障害のある男性Kさん(21歳)を死体遺棄容疑で逮捕すると、メディアは一斉に犯人断定報道した。
 新聞・テレビは事件直後からKさんに接触、彼に知的障害があることを知りながら誘導的な取材を行い、事前撮影した写真・映像を大きく掲載・放送、TBSはKさんがカラオケで歌う「独占映像」まで放映した。
 例会では、Kさんの主任弁護人・副島洋明さんから、受任後の弁護・支援活動、知的障害とは何か、報道の問題点、悪質な報道をしたTBS、毎日新聞に対する抗議や申し立てなどについて報告を受けた。約30年間、知的障害者の支援・弁護に携わってきた副島さんの話は、知的障害者と家族の苦しみに無知・無理解な日本社会、とりわけ司法・報道機関のありようを厳しく問いかけ、参加者に深い感銘を与えた。

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2009年03月06日

第241回定例会 韓国・日本のメディア比較/元オウム信者に対する団体規制法3回目の更新

 人権と報道・連絡会の第241回定例会が2月16日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。
 テーマは、①匿名報道主義が定着する韓国メディア②「オウム観察処分」の現在――の二つ。
 同志社大学・浅野健一ゼミは昨年11月、韓国を訪れ、韓国における事件報道の現状、昨年2月から始まった「国民参与裁判」制度と報道、ネット社会と法規制などについて調査した。例会では、校務で出席できなくなった浅野さんに代わり、調査に参加した浅野ゼミのSさんが、韓国では事件報道そのものが減るとともに、「公人は顕名・私人は匿名」という匿名報道主義が定着、市民参加の「国民参与裁判」制度をめぐり、日本の「偏見報道」のような問題は起きていないことなどを報告した。
 また、オウム真理教から改組した「アレフ」(現在、「Aleph」と「ひかりの輪」)に適用されてきた「観察処分」については、Aleph広報担当の荒木浩さんと法務担当のIさんが、今年1月に公安審査委員会が行った3回目の「更新」と団体規制法の問題点を報告した。立法から10年、教団や教団を取り巻く社会状況が変化する中、同法は今や公安調査庁存続の口実にすぎなくなったばかりか、「思想検査法」と化し、人権侵害を引き起こしている。報告では、その実態とともに、「オウムは危険」報道を繰り返すメディアの問題点も指摘された。

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2009年01月29日

第240回 浦安事件の民事判決報道検証/舞鶴事件の報道

 人権と報道・連絡会の第240回定例会が1月19日夜、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは、①浦安事件とメディア②舞鶴・高1殺害事件家宅捜索報道の二つ。
 浦安事件は2004年2月、千葉県浦安市の小学校教員Kさんが担任していた養護学級の女児2人に対して「わいせつ行為」をしたとして逮捕され、実名・犯人視報道されたケース。刑事裁判は一審・二審とも無罪になったが、「被害児」1人と親がKさんと県・市を相手取って民事提訴、ごく一部だが訴えを部分的に認める判決が昨年12月24日出された。例会ではKさんが捜査・報道・刑事裁判の経過、民事訴訟での双方の主張、判決の問題点などについて報告、逮捕報道だけでなく、民事訴訟でも被害者側の主張を一方的に伝える報道で受けた被害を訴えた。
 舞鶴事件については、別件逮捕された男性宅の家宅捜索をめぐる大々的な犯人視報道について、世話人の山口が、「裁判員制度」に向けてメディアの掲げる「犯人視しない報道」が建て前にすぎない実態を報告した。

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