ニュース・ダイジェスト 2007年

2007年12月24日

第229回 仙台・和歌山・恵庭3事件の現状報告

 人権と報道・連絡会の第229回定例会が12月17日、水道橋の東京学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは「仙台・和歌山・恵庭3事件の現状報告」。この3事件は、いずれも捜査段階の犯人視報道が裁判に大きな影響を与え、「証拠なき有罪判決」が出された重大な冤罪事件。各事件について、人報連ではこれまで弁護人などから報告を受け、捜査・裁判と報道の問題点などについて議論してきたが、今回は、各事件の支援者から裁判の現状と支援活動の状況を報告していただいた。恵庭事件は2006年9月に上告が棄却されて有罪判決が確定し、現在は『新潮45』訴訟で上告中。和歌山カレー事件と北陵クリニック事件は、最高裁の審理が来年大きなヤマ場を迎える見通しで、逆転無罪判決を目指し、最高裁への働きかけなど支援運動が広がっている。

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2007年10月07日

第227回 「光市事件」裁判の報道問題、テレビ番組の暴走

 人権と報道・連絡会の第227回定例会が9月10日、水道橋の東京学院で開かれ、約60人が参加した。テーマは「光市事件・差し戻し審と報道」。
 昨年6月、最高裁が二審・無期懲役判決を破棄、審理を差し戻した「光市事件」の差し戻し審が5月に始まり、広島高裁で集中審理が行われている。最高裁審理でメディアは、「遺族の声」を一方的に増幅して死刑を煽り、弁護人非難の大合唱報道を繰り広げたが、差し戻し審ではテレビを中心とした「弁護人バッシング」がさらに激化、安田好弘弁護士を名指しにした模擬銃弾入りの脅迫状が日弁連に送りつけられ、タレント弁護士が弁護団への懲戒請求を呼びかけて4000件を超す懲戒請求が来る「メディア・ファシズム」状況が進行している。
 例会では、差し戻し審から弁護団に加わった2人の弁護人(河井匡秀、新谷桂さん)から、審理の概要・争点・報道の問題点について、また一連のテレビ報道の問題点とそれに対する抗議活動について、〈「光市事件」報道を検証する会〉の島谷直子さんから報告を受けた。

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2007年08月16日

第226回 弁護士による報道加害――懲戒請求により戒告確定

 人権と報道・連絡会の第226回定例会が7月23日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。
テーマは「弁護士による報道加害」。1974年に「首都圏連続女性殺人」と騒がれ、「松戸OL殺人事件」で逮捕・起訴され、二審逆転無罪が確定した小野悦男さんが96年、別の事件で逮捕された。このとき、松戸事件の弁護を担当した野崎研二弁護士がメディアに「実は松戸もやっていたのではないか」とコメント、2003年に出版した単行本でも「犯人説」をふりまいた。このため、74年以来小野さんを支援してきた山際永三・人報連事務局長らが04年3月、第二東京弁護士会に野崎氏の懲戒を請求し、昨年6月、第二東弁が「戒告処分」を決めた。その処分が今年5月、日弁連懲戒委員会の議決で確定した。例会では、山際事務局長が一連の経過を報告、参加者の間で弁護士の倫理、メディアの取材に弁護人はどう対応すべきか、などについて討論した。

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2007年06月26日

第225回 刑事裁判の危機・犯罪被害者の裁判参加と報道

 人権と報道・連絡会の第225回定例会が6月18日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「犯罪被害者の刑事裁判参加と報道」。
 日弁連でこの問題に取り組んできた山下幸夫弁護士、「被害者と司法を考える会」の片山徒有(ただあり)さんから、「被害者参加制度」を盛り込んだ「刑事訴訟法改正案」について報告を受けた。
 この制度は、重大犯罪で被害者や遺族が「当事者」として裁判に参加し、被告人や証人に質問したり、求刑したりできるようにするもの。「加害者」に対する損害賠償請求を刑事裁判で付随して審理する「付帯私訴」制度も「改正案」に盛り込まれた。山下さんは「この制度は近代刑事司法のあり方を変え、法廷を復讐・仇討ちの場にする重大な制度転換なのに、ほとんど議論もなく導入され、厳罰化に利用されようとしている」と指摘。片山さんは、「法廷に出られない被害者もいる。被害者が真に救われる内容ではなく、かえって被害者に大きな負担をかける制度」と批判した。(刑訴法「改正」案は例会2日後の20日、参院本会議で可決・成立した)。今後も裁判員制度と併せて問題点を広く議論して行きたい。

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2007年05月27日

第224回 沖縄返還密約事件・西山元毎日新聞記者の国賠訴訟

 人権と報道・連絡会の第224回定例会が5月21日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。
 テーマは「沖縄密約事件・西山訴訟と報道」。沖縄返還交渉の密約を報じた元毎日新聞記者・西山太吉さんが、不当逮捕・起訴、誤った判決などに対して国に謝罪と賠償を求めた訴訟で、東京地裁は3月27日、請求を棄却した。
 西山さんは71年、軍用地の原状回復費をめぐる「日米密約」をスクープ、翌年、国家公務員法違反容疑で逮捕され、有罪が確定した。しかし、00年以降、密約を裏付ける米国公文書が見つかり、西山さんは05年4月、「密約は違憲行為・違法秘密。違法な起訴で有罪判決を受け、政府のウソで名誉を損なわれた」と提訴した。
 例会では、西山さんを支えて裁判を闘ってきた藤森克美弁護士が「違法密約・権力と向き合う審理をせず、司法の役割を放棄した不公正・偏頗な判決」と地裁判決を批判、判決報道の問題点も指摘した。

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2007年05月06日

第223回 「朝鮮総聯関連」に対する政治弾圧の実態と報道検証

 人権と報道・連絡会の第223回定例会が4月23日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「在日朝鮮人への政治弾圧と報道」。
 安倍「極右」政権が誕生して約半年、在日朝鮮人に対する政治弾圧・人権侵害が全国各地で相次ぎ、警察は昨年11月から今年2月にかけ、全国各地で朝鮮総聯本部や朝鮮学校などを50回にわたって家宅捜索、11人を不当逮捕した。微罪を口実に被疑事実と無関係な施設に大量の機動隊員を動員し、抗議した人たちを逮捕するすさまじい政治弾圧だが、メディアはその問題点を報じるどころか、公安情報を垂れ流し、捜索の模様をテレビで流して朝鮮総聯を犯罪組織のように印象づける報道を繰り返している。
 例会では、「在日本朝鮮人人権協会」の金東鶴さんが、弾圧の背景と実態、報道の問題点などについて、捜索の実態を記録したビデオも交えて報告。かつて「民間次元」だった在日朝鮮人に対する攻撃が、最近は行政・警察による組織的弾圧にエスカレートし、報道がそれを後押ししていると訴えた。

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2007年04月01日

第222回 NHK番組改ざん事件・鹿砦社言論弾圧事件の検証

 人権と報道・連絡会の第222回定例会が3月19日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「NHK番組改変事件訴訟」「鹿砦社言論弾圧裁判」の二つの控訴審判決と、その報道検証。
 「女性国際戦犯法廷」を取り上げたNHK番組が安倍晋三首相らの圧力で改ざんされ、苦痛を受けたとして「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネット)が損害賠償を求めていた訴訟の控訴審で東京高裁は1月29日、NHKが政治家の意図を汲むような番組改変を行ったことを認定し、NHKなど三者に200万円の賠償支払いを命じた。例会ではバウネット共同代表の西野瑠美子さんが判決内容と意義などを報告、判決内容をねじ曲げて伝えたNHKやメディアの姿勢を厳しく批判した。
 また、「鹿砦社」代表・松岡利康さんがパチスロ機メーカー「アルゼ」や阪神球団に関する報道をめぐり名誉毀損罪に問われた裁判で大阪高裁は2月27日、松岡さんの控訴を棄却した。判決は「出版は私的利益を図るもの」として「公益性」を否定し、逮捕・長期勾留という言論弾圧を正当化する危険なものだったが、大手メディアはその問題点をまったく報じなかった。松岡さんは「言論有罪」判決の問題点を報告し、上告審に向けた支援を訴えた。

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2007年03月08日

第221回 恵庭事件 vs 新潮45訴訟、一部勝訴

 人権と報道・連絡会の第221回定例会が2月19日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「恵庭冤罪事件の新潮訴訟判決」(前号ニュースでお知らせしたテーマを事情により変更)。
 月刊誌『新潮45』02年2月号に《恵庭美人OL社内恋愛殺人事件》のタイトルで掲載された記事と「新潮文庫」に対し、損害賠償や「新潮文庫」の出版差し止めなどを求めてOさんが起こした名誉毀損訴訟で、東京地裁は1月23日、訴えの一部を認める判決を言い渡した。判決は、記事の犯人視報道については名誉毀損を認定しなかったが、「窃盗・放火」などに関する記述の名誉毀損を認め、計220万円の損害賠償支払いと「窃盗・放火」記述を含んだままでの「新潮文庫」の増刷・販売差し止めを命じた。例会では、この訴訟を支援してきた人報連世話人の山口が判決内容とその意義・問題点について報告、今後の支援活動などについて討論した。

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2007年02月06日

第220回 麻原裁判報道と弁護人バッシング

 人権と報道・連絡会の第220回定例会が1月15日、水道橋の東京学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「麻原裁判報道と弁護人バッシング」。
 06年3月27日、東京高裁は麻原彰晃・オウム真理教元代表の控訴審で「弁護側が期限までに控訴趣意書を提出しなかった」として公判手続きを打ち切り、控訴棄却を決定した。弁護側が「3月28日に控訴趣意書を提出する」と伝えていた前日に裁判を打ち切り、麻原元代表の死刑を確定させたもの。メディアはその事情を知りながら真相を伝えず、弁護人をバッシングした。しかも高裁は9月25日、松下明夫・松井武の両弁護人について、「訴訟の進行を妨害した」として日弁連に処分を求める「処置請求」を出した。例会では、控訴審から「麻原裁判」を担当した松井弁護士が、接見での麻原元代表の様子、控訴審の経過、バッシング報道などについて報告、「メディアの作為と不作為」を指摘・批判した。

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