ニュース・ダイジェスト 1997年
1997年12月22日
第129回 「教え子に売春斡旋」実は冤罪
人権と報道・連絡会の第129回定例会が12月22日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、誤認逮捕とそれを鵜呑みにした裁判・報道被害と闘う I さんから、報告を受けた。都内で学習塾を経営していた Iさんは96年10月、知人のデートクラブ経営者が児童福祉法違反などの容疑で逮捕された際、クラブ従業員と誤認されて逮捕され、読売新聞などに《女高生に売春あっせん》と大きく報道された。 Iさんは捏造された「自白調書」を基に一、二審とも有罪判決を受け、最高裁に上告中。「塾経営者が教え子を売春に」というメディア受けを狙った警察のリーク、それをチェックもせず流すメディア、それらを追認するだけの裁判。 Iさんは、「いつでも・だれにでも」襲いかかる現代の冤罪=警察・報道・裁判「三位一体」のでっち上げ構造、それとの闘いの難しさを克明に語るとともに、対メディア交渉への支援を訴えた。
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1997年11月17日
第128回 「連続通り魔・犯行自供」報道
人権と報道・連絡会の第128回定例会が11月17日夜、明治大学で開かれ、約30人が参加した。この日のテーマは「連続通り魔・犯行自供」報道。
96年秋から97年夏にかけ、東京・埼玉で約50件起きた連続通り魔事件で、警視庁は今年8月、別件で逮捕した男性が「30件の犯行を自供した」と発表、新聞・テレビはこれを大きく報道したがこの「自供」は捜査員の誘導による虚偽自白であることがその後、明らかになった。例会では、通り魔事件とこの誤報問題を取材しているルポライターの池上正樹さんが、捜査と報道の問題点を報告。警察情報を鵜呑みにした犯人視報道、誤報とわかってもきちんと訂正しないメディアの対応・体質が改めて浮き彫りにされた。
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1997年10月26日
第13回シンポジウム 犯人探し競争をやめて冤罪チェック報道へ
〈犯人探し競争をやめて冤罪チェック報道へ〉をテーマに、第13回「人権と報道を考えるシンポジウム」(人権と報道・連絡会、全国犯罪・非行協議会共催、新聞労連後援)が10月26日午後、明治大学会館で開かれ、約200人が参加した。
アトランタ五輪爆弾事件の報道被害者・リチャード・ジュエルさんが「英雄から爆弾テロリストにされて」と題して講演。これを補足してジュエルさんの弁護士、ワトソン・ブライアントさんが話したあと、松本サリン事件報道被害者・河野義行さん、日弁連「人権と報道に関する調査研究委員会」の弁護士・坂井眞さん、新聞労連副委員長・小林享さんも加わり、浅野健一さんの司会で「日米報道被害の実態と課題」をめぐってパネル・ディスカッションが行われた。講演・討論では、警察のリーク情報をチェックもせずに犯人視報道するメディア、それによる深刻な報道被害、という日米共通の問題が明らかにされたほか、アメリカ以上に人権侵害がおきやすい日本の司法とメディアの現状も指摘され、報道の使命とあり方をめぐり、約4時間にわたって貴重な問題提起や意見が交換された。
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1997年09月08日
第127回 「神戸小学生殺害事件」報道検証
人権と報道・連絡会の第127回定例会が9月8日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ約40人が参加した。テーマは「神戸小学生殺害事件」報道検証。
この事件では逮捕された少年の顔写真掲載が大きな議論になったが、メディア総ぐるみの「犯人像推理」競争、それらと矛盾する少年逮捕にもかかわらず警察発表をうのみにしたセンセーショナルな逮捕報道も問われなければならない。権力チェックを怠り、松本サリン事件誤報の反省を完全に忘れた報道はいったい何を残したのか。例会では、事務局の山口正紀・世話人がそれらの問題点を報告。また、冤罪の視点から現地調査した市民グループ「神戸事件の真相を究明する会」の平井順造さんに調査結果を報告していただいた。
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1997年07月14日
第126回 新聞労連の欧州事情視察報告
人権と報道・連絡会の第126回定例会が7月14日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、新聞労連の小林享・副委員長から「欧州報道評議会視察旅行」の報告を受けた。新聞労連は2月に「新聞人の良心宣言」を採択、報道評議会設立に努力することを決めており、その一環として加盟単組代表や北村肇委員長ら労連役員、それに浅野健一さんも加わり、総勢32人の視察団が5月18日から9日間、スウェーデン、イギリスを訪ね、メディア責任制度の実情を視察した。小林さんは、今回の視察は歴史や国柄、報道の自由、労働組合の関わり方など両国の制度の違いも含め、日本の実情に合った制度作りを進めるうえで大いに参考になったと言い、メディア責任制度の足掛かりとして早ければ年内にも報道被害110番をスタートさせたいと話した。
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1997年06月09日
第125回 渋谷・女性被害者報道を考える
人権と報道・連絡会の第125回定例会が6月9日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加し、「女性被害者報道」をテーマに報告・討論が行われた。今年3月、東京・渋谷区で女性が殺された事件で、被害者が有名大学卒の大企業管理職だったとしてその私生活を暴きたてる興味本位な報道合戦が、新聞、週刊誌を中心に約1カ月も展開された。例会では事務局から報道の経過を紹介したあと、この事件を取材して、「ねじ曲げられた被害者の“素顔”」の見出しの記事で女性被害者報道のあり方に問題提起した全国紙社会部記者の小国綾子さんに、取材の経過や記者クラブ・社内での論議、それらを通じて感じた報道の難しさや反省点などを報告していただいた。
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1997年05月12日
第124回 刑事演じた記者相手に賠償請求
人権と報道・連絡会の第124回定例会が5月12日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、二つの対メディア訴訟報告が行われた。山形県高畠町のひき逃げ冤罪事件に関する対山形新聞訴訟では、提訴以来2年間の審理状況が弁護士から中間報告され、山形新聞と警察の「冤罪責任のなすりあい」状況や山形新聞の主張の矛盾が指摘された。また、日本消費者連盟を中傷した「アエラ」記事に関する対朝日新聞訴訟では5月6日、東京地裁が請求棄却の判決を出したが、記事に問題があることを認めながら報道被害を軽視してアエラを免責した判決の問題点など、日消連事務局から報告を受けた。なお同日に予定されていた台湾の報道評議会の来訪は、中止になった。
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1997年04月14日
第123回 ペルーの人質事件報道を検証
人権と報道・連絡会の第123回定例会が4月14日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。この日のテーマは、ペルー日本大使公邸事件の報道規制と邸内取材をめぐる問題。共同通信・原田浩司記者とテレビ朝日系列の広島ホームテレビ・人見剛史記者の邸内取材に対し、日本政府・郵政省が報道干渉を行う一方、メディア内部からも邸内取材を「突撃取材」などと一方的に批判する報道が展開され、人見記者は不当処分を受けて沈黙を余儀なくされている。例会では、共同通信外信部記者・石山永一郎さんと連絡会世話人の浅野健一さんが、取材や報道規制の実態と報道のあり方について問題提起、さらに「報道の自由を求める市民の会」事務局からも、この問題をめぐる郵政省との話し合いの内容を文書で報告していただいた。
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1997年03月03日
第122回 「新聞人の良心宣言」について
人権と報道・連絡会の第122回定例会が3月3日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加。新聞労連が2月の春闘臨時大会で採択した報道倫理綱領「新聞人の良心宣言」について、新聞労連新研部長・大野圭一郎さんに目的や意義、労連での討論経過などを報告していただいた。宣言は「市民への責任」など10項目にわたり、記者などの行動規範を定めたもの。「犯罪報道」の項では「被害者・被疑者を顕名とするか匿名とするかについては常に良識と責任をもって判断し、報道による人権侵害を引き起こさないよう努める」と、現在の「実名原則」から大きく一歩踏み出しており、参加者から「報道被害をなくしていくうえで画期的宣言」と高く評価する意見が相次いだ。
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1997年02月17日
第121回 「ロス疑惑」の控訴審報告
「ロス疑惑」裁判をテーマに、人権と報道・連絡会の第121回定例会が2月17日夜中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。昨年9月東京高裁で始まった「銃撃事件」控訴審は、一審の「実行犯不詳でも有罪」という前代未聞の不当判決に対し、弁護側・検察側双方が控訴して争う異例の展開。例会では主任弁護人の弘中惇一郎さんから事件の真相、裁判の争点と展望などを報告していただき、参加者の間で討論した。メディア主導の冤罪をどう晴らすかは、連絡会にとって最も重要な課題であり、討論では無罪判決に向けて、いっそう支援の輪を広げていくことを確認した。また、三浦さんから別掲のようなメッセージをいただいた。
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1997年01月13日
第120回 ビデオ『人権と報道の旅』上映
人権と報道・連絡会の第120回定例会が、97年1月13日夜、東京お茶の水の中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、現代人文社から1月10 日に発売されたビデオ、『ドキュメント・人権と報道の旅』を上映した。このビデオは、全国各地で「人権と報道」の講演を続ける松本サリン事件の報道被害者・河野義行さんが、昨年の11月、仙台の「人権と報道」研究会で行った講演を中心とした記録と、昨年9月、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデンを訪ね、各国のメディア責任制度の現状を調査した浅野健一さんの取材記録をまとめたもの。このビデオは、「人権と報道」の問題を考える絶好の“入門編”であるだけでなく、問題の“解決編”としてもレベルの高いものになっており、オンブズマン研究家の潮見憲三郎さんからは、このビデオについて別掲のような感想が寄せられた。
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