「個人情報保護法案」「人権擁護法案」が今国会に上程され、審議されています。
両法案に対し、フリー・ジャーナリストなどによる反対運動に続き、新聞、テレビ、雑誌なども反対キャンペーンを展開しています。ただ、これらの運動や報道には、メディア規制の動きをもたらした報道による人権侵害への反省や、それをどうなくすかというメディア改革の姿勢が乏しく、市民の支持が得られているとは言いがたい状況にあります。
しかし、両法案が、報道の自由、市民の表現の自由を奪う危険な現代版「治安維持法」 であることは、言うまでもありません。人権と報道・連絡会でもこれまで、両法案の本質や問題点について例会で議論を重ね、反対の意思表示をしてきました。
このたび、「マスコミと人権を考える東海の会」の平川宗信さん(名古屋大学教授) から、報道被害者の思いを重視した視点・市民の立場で「人権と報道」の問題に取り組む市民ネットワークとして声明を出そう、との呼びかけがありました。
人権と報道・連絡会は5月定例会で、山際永三事務局長がその経過を報告、参加者の賛同を得て「東海の会」などと共同で声明を出すことになり、5月22日付で「メディア規制法案の廃案とメディアの自己改革を求める共同声明」を発表しました。
メディア規制法案の廃案とメディアの自己改革を求める共同声明
私たちは、長年、報道の自由を守る立場から、メディアの市民に対する人権侵害を批判し、メディア自身による自主的な問題解決を訴えてきた市民グループです。私たちは、そのような立場から、現在国会で審議中の人権擁護法案・個人情報保護法案の廃案と、 メディアの自己改革を強く求めます。
報道の自由は、市民の知る権利に応え、民主社会を支える重要な権利であり、とくに厚い保護が認められるべき権利です。これを権力が法律で規制することは、報道を萎縮させ、市民の知る権利を奪い、民主主義を形骸化させるもので、容認することはできま せん。私たちは、メディアに対する法規制を含む人権擁護法案・個人情報保護法案に強く反対し、その廃案を求めます。
しかし、一般市民に対する、多人数の押し掛け取材、プライバシー報道、容疑者犯人視報道などによる人権侵害は、黙視することができません。メディアは、多くの批判・警告・提案にもかかわらず、「容疑者」呼称の導入、社内「第三者委員会」の設置等の微温的改善を行うにとどまり、問題の解決に真剣に取り組んではきませんでした。それが権力の法規制による介入という事態を招く一因となっていることを、メディアは厳し く自覚すべきです。私たちは、メディアがこれらのことを率直に反省し、次のことの早期実現に向けた具体的一歩を直ちに踏み出すよう、強く求めます。
メディアによる人権侵害は、厳しく批判され、その防止・救済が図られなければなりません。しかし、それは、あくまでも市民を基盤にしたメディアの自律的コントロールによるべきであり、法規制によるべきではありません。私たちは、報道・表現の自由を守る立場から、多くの団体・市民がメディアと協力してその人権侵害を防止・救済する ためのメディアの自主的なシステムを早期に構築し、法規制を排除していくよう呼びかけます。
2002年5月22日
人権と報道・連絡会
人権と報道・関西の会
マスコミと人権を考える東海の会
報道について語る福岡の会
「人権と報道」研究会事務局(仙台)
報道と人権の会(札幌)