【書評】山口正紀「壊憲翼賛報道―04~07年メディア検証」

人報連世話人・山口正紀さんの新しい本が出た。
 「壊憲翼賛報道―04~07年メディア検証」と題されたこの本は、同じ現代人文社から発行された「ニュースの虚構メディアの真実―現場で考えた90~99報道検証」「メディアが市民の敵になる―さようなら読売新聞」に続いて、現代社会がどのように動いているかが正確に分かる事典の役割を果たす。同時にこの3冊は、山口さんという最もナイーブかつシャープなジャーナリストの心の鼓動を伝える伝書鳩の役割も果たしている。

 あわただしく動く社会の事象に対して、いろいろな人がそれぞれの立場から論評を下す。多くの単なるオピニオンは、何の役にもたたない。
 ところが山口さんの言論は、常に市民・庶民の立場に立って過不足なく、強い怒りも押さえられてユーモアに包まれている。そうだ、この問題はこうみればいい、なるほどと納得できる。私のように、しばしば断定的な物言いで他人を挑発しようとする文体とは大違いだ。
 記事の見出しを見るだけでも楽しい。私たちが関わった北海道・恵庭冤罪事件の「『うそは北海道警の始まり』です」、仙台・北陵クリニック事件の「判決も権力チェックの対象だ」、そして光市事件の「公開リンチと化す“テレビ法廷”」など、言い得て妙、本質をえぐる記事だ。
 政治家を責め、裁判官を責める論調は多い。だが、私たちは常にメディアとの関連において事象をみる。つまり権力と民衆の間に存在するメディアという扉が重要で、それをどちらの側からこじ開けるかが問われているのだ。(山際永三)