人報連ニュース・ダイジェスト
【1999年】
人権と報道・連絡会定例会の内容(1999年)
第140回 安田弁護士不当逮捕と報道を検証
人権と報道・連絡会の第140回定例会が1月11日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加。この日のテーマは昨年12月6日、警視庁捜査二課が行った安田好弘弁護士の不当逮捕と報道の問題点。報告者は安田さんが主任弁護人を務めるオウム真理教・麻原彰晃弁護団の渡辺脩弁護士。
逮捕容疑とされた「強制執行妨害」の内容がいかにデタラメなものか、また安田さんがマス・メディアに描かれた「悪徳弁護士」像とは反対に、いかに誠実かつ有能な弁護士であるかなどを話していただき、事務局からも報道の問題点などを渡辺さんが報告。今回の逮捕の政治的意味や、それを伝えずに犯人視報道したメディアの犯罪性などについて討論した。
第141回 別件逮捕を批判しない報道
人権と報道・連絡会の第141回定例会が2月22日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約40人が参加。この日のテーマは2つ。1つは、97年11月6日に東京で起きた殺人事件の捜査過程で、近所に住んでいた女性とその息子さんが98年8月に別件逮捕され、一部の新聞に殺人事件との関連を報道されたケースについて、ご家族から報道被害の実態などを話していただいた。
次には、最近、現代人文社から出版された『アメリカの報道評議会とマスコミ倫理』の著者・朝倉拓也さんから、ミネソタ報道評議会を中心としたアメリカの報道倫理をめぐる現状を報告していただき、日本での報道評議会設立に向けた課題を含めて、参加者の間で討論した。
第142回 盗聴法に鈍感なメディア
人権と報道・連絡会の第142回定例会が3月15日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加。この日のテーマは「組織犯罪対策3法と報道」。同法は98年3月に国会に上程され、自民党が今国会での早期成立を目指しているが、「通信の秘密」やプライバシー侵害の恐れの大きい盗聴法(通信傍受に関する法)をはじめ、その危険な性格・内容に関する報道は少なく、その問題点は市民にほとんど知られていない。例会では、山下幸夫弁護士から組対3法の内容と危険性、同法に関する報道の特徴と問題点について報告していただいた。また、3月3日に開かれた安田好弘弁護士の初公判について山口が報告、支援と傍聴を訴えた。
第143回 ダイオキシン/脳死報道について
人権と報道・連絡会の第143回定例会が4月12日夜、お茶の水スクエアで開かれ、約40人が参加した。この日のテーマは、ダイオキシン報道と脳死移植報道。テレビ朝日ニュースステーションのダイオキシン報道をめぐって、他のメディアがテレ朝報道の一部の誤りを強調して報道全体を否定するようなバッシングを行ったが、これについて「反農薬東京グループ」の二人が報道の問題点とともにダイオキシンをめぐる現状について報告。また脳死移植報道については、ドナーのプライバシーを侵害した報道の問題点について浅野健一さんが検証し、救急医療の現場にいる医師の提言をもとに、今後の移植報道のあり方をめぐって参加者の間で討論した。
第144回 「性」の二重基準で人権侵害
人権と報道・連絡会の第144回定例会が5月17日夜、お茶の水スクエアで開かれ、約40人が参加、『週刊現代』の捏造記事で報道被害を受けた在日韓国人シンガーソングライター、プー・カングァンさんらから報告を受けた。週刊現代は今年2月、プーさんを中心とした市民運動グループについて、「女性信者をストリップで稼がせる新カルト集団」と決めつける悪質なでっちあげ記事を二回にわたって掲載した。例会では、週刊現代記事で事実無根の「教祖」に仕立て上げられたプーさんが「在日の半生」を中心に語り、今回の報道がいかに偏見と歪曲に満ちたものかを参加者に伝えた。また、グループの責任者・菅幸恵さんは、だまし討ち的な取材経過と虚報の実態を報告するとともに、自身がヌードダンサーという職業を選んだ理由を語り、「女性の性」を利用しつつ貶める性差別社会とマスコミの「性の二重基準」を痛烈に批判した。
第145回 BRO決定/最近のオウム報道
人権と報道・連絡会の第145回定例会が6月14日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは「報道被害とBROの問題点」。BRO(放送と人権等権利に関する委員会機構、その委員会がBRC)は3月、「帝京大レイプ事件」報道による報道被害の申し立てに対し、「放送倫理上問題はあったが、名誉棄損とまでは言えない」とのBRC決定を出した。また、サンディエゴ事件報道に関する昨年のBRC決定についても、報道被害者は「BRC決定では被害は救済されなかった」と5月、報道4社を提訴した。例会では、「帝京大事件」のBRC決定について、連絡会の山際永三事務局長と報道被害者の父親Sさんが報告。またサンディエゴ事件については、代理人の山下幸夫弁護士がBRC決定の問題点などを文書で報告した。このほか、最近再び強まっているメディアの「オウム真理教叩き」について教団から報告を受けた。
第146回 大阪道頓堀事件と判決報道
人権と報道・連絡会の第146回定例会が7月19日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは「大阪・道頓堀事件と判決報道」。95年10月、道頓堀で野宿男性が水死したこの事件は、「若者たちの非人間的な殺人」として大きく報道され、2人が逮捕、傷害致死罪で起訴された。しかし大阪地裁は今年5月6日、「共犯」とされたT君に無罪判決を、また大阪高裁は6月11日、「主犯」とされたゼロ君に「2人による意図的投げ込み」を認定した一審・懲役6年の判決を破棄、懲役4年とする減刑判決を言い渡した。判決は、いずれも被告の主張を認めたものだが、事件当時、警察情報を鵜呑みにして伝えたメディアの多くは、それを否定する判決報道にはきわめて消極的だった。例会ではこの事件・裁判を取材するとともに、被告を支援してきたフリー・ジャーナリストの北村年子さんから、判決の意義、報道の問題点を聞いた。
第147回 日弁連前橋大会・オウム排斥運動
人権と報道・連絡会の第147回定例会が9月13日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。この日のテーマは、
・10月14〜15日、「人権と報道」をテーマに前橋市で開かれる日弁連人権擁護大会に向けた提言、
・栃木県大田原市の「オウム進出反対」運動と報道の問題点。
日弁連大会については、世話人の浅野健一さんが、大会実行委員会の勉強会に招かれて行った講演内容や大会の課題などを報告。オウム報道では、連絡会・栃木グループの手塚愛一郎さんが、8月4日に行った現地調査の結果を中心に現状と課題を問題提起した。オウム報道については9月14日、東京都内で「破防法の廃止を求める連絡会・東京」が主催(人権と報道・連絡会協賛)し、「オウム問題と破防法改悪問題を考える」シンポジウム、15日には宇都宮市で連絡会・栃木グループ主催のシンポジウム「オウム真理教信者の転入届不受理問題をめぐって『公共の福祉』を考える」が開かれた。今月号ニュースは2〜4面で、このオウム報道問題を特集する。
第148回 外登法・甲山無罪・日弁連前橋大会
人権と報道・連絡会の第148回定例会が10月18日夜、お茶の水スクエアC館で開かれ、約40人が参加した。この日のテーマは、・外国人登録法・出入国管理法及び難民認定法「改正」と報道の問題点、・甲山事件第2次控訴審の無罪判決と報道、・10月14〜15日、前橋市で開かれた日弁連人権擁護大会の第2分科会「人権と報道」の概要。外登法・入管法「改正」に関してはフリージャーナリストの関口千恵さんが報告、在日外国人の管理強化を狙った「法改正」の問題点を指摘したうえでそれらをきちんと伝えないメディアの姿勢を批判した。甲山判決では、連絡会世話人の山口が報道責任と検証を中心に問題提起(4面に掲載)。日弁連大会については、大会に参加した連絡会員がシンポジウム、大会宣言討議の模様などを報告した(2〜4面で特集)
第15回シンポ あくまでも自主的評議会を
人権と報道・連絡会主催の第15回人権と報道を考えるシンポジウム「報道被害をなくし、権力に介入させない・・自主的な報道評議会を」が11月20日午後、お茶の水の明治大学13号館南講堂で開かれ、約100人が参加した。大分みどり荘事件の報道被害者・輿掛良一さんが冤罪と報道被害の体験を講演。これを受けて日本弁護士連合会、放送と人権等権利に関する委員会機構(BRO)、新聞労連の代表らが、報道被害をなくす道、報道の自由をめぐる状況、報道評議会設立への課題と展望などを会場の参加者とともに話し合った。討論では、権力介入の動きが急速に強まるなかで、新聞協会にも報道倫理の見直しなど新たな動きが始まっていること、警察情報に依存した報道から市民の人権を守る報道への根本的転換がメディアの最大の課題であることなどが確認された。日弁連、新聞労連ともに報道評議会設立に向け、新聞協会や新聞社幹部への働きかけをいっそう強めることにしており、21世紀を目前にした2000年こそ、市民的基盤を持つ自主的なメディア責任制度を確立する大きな転機に・・との思いを強くする実り多いシンポジウムとなった。
第149回 報道の自由と政党の姿勢
人権と報道・連絡会の第149回定例会が12月13日夜、お茶の水の中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。この日のテーマは「報道の自由と政党の姿勢」について。今年8〜9月、「報道の自由を求める市民の会」と人報連が行った「報道の自由に関する政党の意識調査」アンケート結果について、市民の会の塚本みゆきさんから報告を受けた。この調査には各党が正式に回答(自民党は別の文書を送付)。その結果、自民党以外の各党は、報道被害など報道をめぐる問題の解決は権力的な手段ではなく、メディア自身と市民による解決の場を設けることを望んでいることがわかった。塚本さんは「自民党などが強めている報道規制の動きに対し、報道の自由を守るにはメディア自身の抑制と市民を味方にすることが何より大切」と指摘した。