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人報連ニュース・ダイジェスト

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【1996年】



人権と報道・連絡会定例会の内容(1996年)



第110回 「情報公開と官報接待」を検証

 「情報公開と官報接待」をテーマとして、人権と報道・連絡会の第110回定例会が、96年1月8日夜、東京お茶の水・中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。昨年の7月、「全国市民オンブズマン連絡会議」の調査で、約29億円に上る税金が、「食糧費」と称して「官官接待」に使われている事実が明らかにされ、報道機関は一斉に大きく報道した。ところが、マス・メディアの幹部や記者たち自身、長年にわたって食糧費などを使った接待を受けていることは報道しようとしない。例会では、この「官報接待」問題について、「情報公開法を求める市民運動」事務局長の奥津茂樹さんから問題提起していただいた。奥津さんは、情報公開制度で開示させた川崎市の「官報接待」の実態を報告し、「なぜ、記者は役人と食事を共にして親しくしなければならないのか」と疑問を投げかけた。

第111回 「死刑と報道」この5年間を検証

 人権と報道・連絡会の第111回定例会が2月19日夜、お茶の水スクエアで開かれ、約20人が参加した。例会ではまず、山際事務局長が6月の「第12回人権と報道を考えるシンポジウム」の企画案を説明。続いて、「ピース缶爆弾」冤罪事件で国家賠償裁判を闘っている井上清志さんが、昨年秋の国賠一審判決後に「週刊新潮」が行った悪質な中傷記事と抗議行動について報告した。最後に、世話人の山口が「死刑とメディア――'90〜'95年」と題し、この6年間の死刑と報道をめぐる状況変化、特に93年3月の執行再開以降の死刑に関するメディアの積極的な報道姿勢と、その後のオウム報道などによる姿勢の後退を中心に、次のように報告した。

第112回 「オウム・破防法と報道」を検証

 人権と報道・連絡会の第112回定例会が3月11日夜、「オウム・破防法と報道」をテーマに、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。例会ではまず、教団代理人を引き受けた芳永克彦弁護士から、破防法の基本的な問題点や今回のオウム真理教への適用の意味と報道との関連、1月18日の第1回「弁明」で浮かび上がった同法適用の矛盾を、また「弁明」立会人になった当会世話人の浅野健一さんから、「弁明」の実態や報道の特徴を報告していただいた。また事務局の山口が、破防法制定当時と今回を比較した報道の問題点や課題を指摘した。報告・討論では、「オウムは怖い」の感情を煽る一方、現代版「治安維持法」である破防法の危険な内容や、適用の狙いを市民にきちんと伝えないメディアの報道姿勢に強い批判が出された。

第113回 新聞労連・北村委員長が提言

 人権と報道・連絡会の第113回定例会が4月15日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。ゲストは、このほど『腐敗したメディア――新聞に再生の道はあるのか』(現代人文社刊)を出版された毎日新聞社会部記者で、現・新聞労連委員長の北村肇さん。北村さんは、まず「TBS問題」から、「メディア腐敗」の現状と原因にふれ、それに対する“メディア再生の処方箋”として、「体力派」重視から知的労働への転換、遊軍主体の取材システム、署名記事と主観報道、記者室・紙面の市民への開放などを提言。それらを実現する手がかりとして、いま新聞労連で「報道倫理綱領」作りを進めていることや、「新聞評議会」作りの構想もあることを明らかにした。

第114回 TBS問題と報道の自由を討論

 人権と報道・連絡会の第114回定例会が5月13日夜、「TBS問題と報道の自由」をテーマに、中央大学駿河台記念館で開かれた。例会には約40人が参加、「報道の自由を求める市民の会」事務局の塚本みゆきさんが、TBS問題で強まっている報道への権力介入、'93年「椿発言問題」以降、郵政省が検討している「放送監視の第三者機関」をどうとらえるか、報道の自由・放送の自律などについて、同会がマス・メディアに出した質問書の回答を中心に報告・討論した。またテレビ局が取材したビデオを「見せてはいけない」という見解が自明のようになっている議論に関して、事務局の山口が「なぜ、だれに見せてはいけないのかを議論すべきだ。報道される側の市民が放送前・後に自分に関したビデオを見るのは、報道被害を防ぐための当然の権利」と問題提起した。

第12回シンポジウム 英PCC・モーガンさんの講演

 「日本報道評議会設立に向けて――イギリスに学ぶ」をテーマに、第12回人権と報道を考えるシンポジウムが6月22日午後、東京・お茶の水の中央大学駿河台記念館で開かれ、約160人が参加した。イギリス報道苦情委員会(PCC)元代表理事、ケネス・モーガンさんが「メディア責任制度の重要性――イギリスの現在」と題し、政府とメディアが報道規制をめぐってせめぎあうイギリスの現状と、報道倫理と報道の自由を守るPCCの活動について講演。パネル・ディスカッションでは、松本サリン事件報道被害者・河野義行さん、同志社大学教授・渡辺武逹さん、新聞労連委員長・北村肇さんにモーガンさんも加わり、報道の自由、報道される側の権利、報道倫理綱領を中心に、日本報道評議会設立に向けて、具体的な課題と展望を話し合った。

第115回 報道評議会の具体的試案を報告

 人権と報道・連絡会の第115回定例会が7月15日夜、中央大学駿河台記念会館で開かれ、約20人が参加した。6月の第12回人権と報道を考えるシンポジウムで討論された「報道評議会設立への課題と展望」を具体化するためのたたき台として、世話人の浅野健一さんが「報道倫理綱領」試案と「日本報道評議会運営要綱」試案を報告。浅野さんは、新聞など活字メディアが中心になって報道評議会を作り、それを放送メディアにも広げていくという構想を提案、その具体化のために新聞協会などへの働きかけを強めていこうと提唱した。例会翌日の16日には、新聞労連が「新聞人(記者)の倫理綱領案」を発表、来年1月の臨時大会での採択に向けて、各労組・研究者も含めた幅広い討論を呼びかけた。

第116回 報道が作る同性愛者差別を批判

 人権と報道・連絡会の第116回定例会が9月9日夜、中央大学駿河台記念会館で開かれ、約20人が参加、「同性愛者差別を作る報道」をテーマに討論した。日本のマス・メディアは差別をなくす報道に消極的で、差別表現の形式的言い換えに終始する傾向が強いが、「同性愛」に関しては、言い換えどころか思い込みによる歪んだ情報を流して「笑いのネタ」にしている。例会では、同性愛者差別をなくすための講演・出版活動に取り組む一方、『週刊金曜日』などでメディア批判を続けている伊藤悟さん、やなせりゅうたさんに、日本社会の同性愛者に対する偏見、そうした偏見と差別を作りだす学者やメディアの問題点について事例や体験をもとに報告していただいた。

第117回 渡辺武達氏のメディア改革論

 人権と報道・連絡会の第117回定例会が10月14日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、同志社大学教授・渡辺武逹さんの講演をもとに、メディア改革の方向を討論した。渡辺さんは、日本のマス・メディアが抱える病理を分析、その問題点を解消する方向として「積極的公正中立主義」と、それを支えるための準行政的・司法的権限を持つ非政府機関「日本マスメディア委員会」設立を提案した。この構想は、これまで人権と報道・連絡会で考えてきたメディア責任制度(報道評議会、プレス・オンブズマン制度)と理念・方向性は同じだが、準公的な性格と公的財源を持つ点では異なった新しい改革案。特に放送法の規制対象となっているテレビに関し、渡辺さんが提唱した「日本映像資料館」構想などの試案は、例会参加者に多くの示唆を与えた。

第118回 小林よしのりの「ゴーマニズム」批判

 人権と報道・連絡会の第118回定例会が11月11日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加、「ゴーマニズムの犯罪」をテーマに話し合った。マンガ家・小林よしのり氏が最近、「軍慰安婦」問題、薬害エイズ問題、犯罪報道などに関し、人権と市民運動を主な攻撃目標にして、事実の歪曲や問題のすり替え、偏見に基づく主張を精力的に作品化している。この、「マンガによる新たな報道犯罪・被害」について、「軍慰安婦」問題に取り組むジャーナリスト・川田文子さん、HIV訴訟を支える会のメンバー・阿部正子さん、小野悦男さんの冤罪に関する事実の歪曲問題で出版社と小林氏に抗議している浅野健一さんの三人から、事実経過や問題点を報告していただいた。

第119回・特別シンポジウム 松本サリン事件の河野さんが講演

 人権と報道・連絡会の第119回定例会は、特別シンポジウム「マスコミを市民の手に/一日も早く報道評議会設立を」として、共同通信労組との共催(新聞労連、毎日新聞労組後援、東京大学社会文化研究会協力)で12月14日午後、毎日ホールで開かれ、約180人が参加した。共同労組・原英俊委員長の主催者挨拶の後、松本サリン事件の報道被害者・河野義行さんが「事件報道への提言」と題して講演。続いて河野さん、日弁連・人権と報道に関する調査研究委員会の野村務弁護士、新聞労連の北村肇委員長をパネリストに、連絡会世話人の浅野健一さんの司会でパネルディスカッション。討論には、毎日新聞社会部の小川一記者、原・共同労組委員長も加わり、報道被害を生む構造、報道の自由と権力介入、報道評議会設立への展望などについて意見を交わした。