人報連ニュース・ダイジェスト
【1995年】
人権と報道・連絡会定例会の内容(1995年)
第100回 アエラの日消連中傷報道批判
人権と報道・連絡会の第100回定例会が、95年1月9日夜、東京お茶の水・明治大学大学院で開かれ、約30人が参加した。テーマは、「アエラの日本消費者連盟中傷報道」。朝日新聞社発行の週刊誌「アエラ」は、昨年10月10日号に〈消費者運動の「破産」〉と題した6頁の特集記事を掲載した。記事は、日本消費者連盟が「恐喝」まがいのことをしていたかのように印象づける記述など、日消連と参与の竹内直一さんを中傷する内容が中心。このため日消連は、朝日新聞社に記事の訂正・謝罪を求めてきたが、朝日側は「名誉棄損にはならない」と開き直っており、日消連は、訴訟を検討している。例会では、竹内さん、日消連運営委員長の富山洋子さんらに、記事の問題点、交渉経過を報告していただいた。
第101回 産経残酷物語の再現を許すな
人権と報道・連絡会の第101回定例会が、2月6日夜、お茶の水スクエアで開かれ、25人が参加した。テーマは「新・産経残酷物語との闘い」。昨年1月、産経資本のリストラ攻撃に反対し、「労働組合・反リストラ・マスコミ労働者会議・産経委員会」が結成された。産経資本は、産経グループ内に初めて誕生した〈まともな労働組合〉をつぶそうと翌2月、日本工業新聞論説委員だった新組合委員長の松沢弘さんを名目だけの千葉支局長に不当配転、さらに都労委で配転問題を審査中の9月、理由も示さず懲戒解雇した。例会では松沢さんに、'60年代からの「産経残酷物語」の実態と今回の「リストラ」の意味、新組合結成に至る闘いの経過や展望などを報告していただいた。
第102回 阪神大震災の報道を徹底検証
人権と報道・連絡会の第102回定例会が、3月6日夜、お茶の水の中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは「阪神大震災報道」。例会では、現地での取材ぶりを取材した世話人の浅野健一さん、震災報道に携わった全国紙記者らが、ヘリ取材の弊害、自衛隊の権限強化論、建設省に誘導された報道など今回の一連の報道の問題点・反省点を報告。さらにボランティア活動で現地を訪れた人なども議論に加わって、被災者・市民の立場に立った災害報道はどうあるべきかを話し合った。
第103回 葬られた、問題提起する記事
人権と報道・連絡会の第103回定例会が、4月3日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは、「反権力・問題提起報道と記者の闘い」。マス・メディアの中で、官庁・企業などの発表モノを無批判に掲載する一方、問題意識をもった原稿、権力批判的な記事がボツになったり、扱いを小さくされたりする傾向が、全国紙・地方紙を問わず強くなっている。そんな流れに対して、記者はどう闘っていくのか。例会では、ある地方紙の記者Iさんが、問題提起的な原稿をボツにしようとする編集幹部の姿勢、それとの闘いについて報告、「ほんとうに書きたいことの書ける新聞にするために、おかしいことはおかしいと言える記者の連帯を」と話した。
第11回シンポジウム カーシュさんが記念講演
第11回人権と報道を考えるシンポジウム(主催=人権と報道・連絡会、協賛=新聞労連、現代人文社)が、5月13日午後、明治大学会館で開かれ、約150人が参加した。連絡会発足10周年を記念して、スウェーデンの元プレスオンブズマン、トシュテン・カーシュさんをお招きした、今年のシンポのテーマは、「メディア責任制度を日本に」。第・部では、カーシュさんが「スウェーデン報道倫理の現在――市民の人権を守り、報道の自由の拡大を」のテーマで講演。第・部パネルディスカッションでは冒頭、松本サリン事件で犯人扱いされた報道被害者・河野義行さんに特別報告していただき、それを受けて、新聞労連副委員長の井口幸久さん(西日本新聞記者)、弁護士の内田剛弘さん、オンブズマン研究家の潮見憲三郎さん、それにカーシュさんの4人が、連絡会世話人・浅野健一さんの司会で討論。報道被害の現状、マス・メディアの構造的問題点、記者のあり方、メディア責任制度実現への課題や展望を話し合った。
第104回 松本・地下鉄サリン報道を検証
人権と報道・連絡会の第104回定例会が、6月12日夜、明治大大学院で開かれ、約70人が参加した。テーマは「松本・地下鉄サリン事件報道の検証」。例会では、連絡会事務局の山口が、(1)松本事件報道と「おわび」記事、(2)地下鉄事件とオウム報道――の2つに分けて報道の問題点を総括的に報告した。これを受けて、さまざまな形でこの事件の報道にかかわった記者、逮捕されたオウム関係者の救援に関わる「人権110番」の千代丸健二さんや弁護士、オウム真理教教団関係者などが発言。権力チェックの役割を完全に放棄したマス・メディアが警察と一体となって生み出した「警察=メディア・ファシズム」の危険な実態をめぐり、参加者の間で活発な議論が行われた。
第105回 冤罪を合作した新聞・警察を提訴
人権と報道・連絡会の第105回定例会が、7月10日夜、明治大大学院で開かれ、約40人が参加した。テーマは「高畠・佐藤事件・報道被害訴訟」。1984年、山形県高畠町でひき逃げ事件が起き、無実の佐藤治一さんが逮捕された。しかし'92年、一審で無罪が確定。佐藤さんは今年3月、山形新聞、警察、検察に、百万円の損害賠償と謝罪社告掲載を求める訴訟を起こした。事件は、特ダネを狙った山形新聞記者の“岡っ引き通報”が引き金になった〈警察・メディア合作冤罪〉だが、山形新聞社は無罪確定後も謝罪を拒んでいる。例会では、都合で出席できなくなった佐藤さんに代わって支援者の三角忠さんに事件と報道、裁判、提訴に踏み切った経緯などを話していただいた。
第106回 みどり荘事件の無罪獲得を報告
輿掛さん、おめでとう――。人権と報道・連絡会の第106回定例会が9月11日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約60人が参加した。1981年に大分市で起きた「みどり荘事件」で不当逮捕され、一審大分地裁で無期懲役判決を受けた輿掛良一さんが、6月30日、福岡高裁で逆転無罪判決をかちとり、逮捕から13年半ぶりに無罪が確定した。この事件は、特ダネを狙ったメディアが冤罪に加担した典型的な事件。例会には輿掛さんをお招きし、長い雪冤の闘い、報道による苦しみなどについて詳しくお話をうかがうとともにメディアへの謝罪要求についても話し合った。また、輿掛さんの弁護人・鈴木宗嚴弁護士から、この事件の報道批判レポートも寄せられた。
第107回 「サリン捜査と図書館」を討論
人権と報道・連絡会の第107回定例会が、10月16日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは「読書の秘密を犯したサリン捜査」。今年4月、警視庁が「サリン関係図書の閲覧者調査」と称し、国立国会図書館の昨年1月以来の、約53万人分の利用データを押収する「事件」があった。だれが、いつ、どのような本を閲覧したかというプライバシーが安易に警察に渡されたもので、「オウム捜査何でもあり」「今回は例外」の風潮のもと、「利用者の読書の秘密を守る」べき図書館の基本的ルールが破られた。例会では、この問題で国会図書館に抗議し、事実経過の公開を求めてきた「敗戦50年問題連絡会」の天野恵一さんに、国会図書館との交渉で明らかになった問題点、この問題をきちんと伝えないメディアの報道姿勢などを問題提起していただいた。
第108回 メディアの戦争責任を取材報告
人権と報道・連絡会の第108回定例会が、11月20日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加。世話人の同志社大学教授・浅野健一さんが今、調査研究に取り組んでいる「大新聞・通信社によるアジア侵略」をテーマに報告した。戦時中、日本の大新聞や通信社が「大本営」報道で侵略戦争を煽り立てたことはよく知られているが、その一方で、アジア各地で日本軍とともに侵略戦争に積極的に加担、現地の新聞社を接収し、記者に虚報を報じさせていたことは、あまり知られていない。浅野さんは昨年から今年にかけて、フィリピン、インドネシア、台湾、マレーシア、シンガポール、韓国を回り、日本軍統治下の新聞社でペンの自由を奪われていた人たちから取材。その結果をもとに、日本のマス・メディアの「もう一つの侵略戦争責任」を問いかけた。
第109回 沖縄・米兵性犯罪と報道を検証
人権と報道・連絡会の第109回定例会が、12月11日夜、明治大学で開かれ、約30人が参加した。テーマは「沖縄・米兵性犯罪と報道」。9月に沖縄で小学生が米兵に襲われた事件で、沖縄では事件直後から性犯罪の根源である基地撤去を求める大きな運動が起きている。地元紙はこうした動きを大きく伝えてきたが、「本土」では地位協定問題などの「政治問題」としてしか報道されず、基地の存在や性犯罪を告発する女性たちの声はあまり伝えられていない。また本土メディアによる無神経な取材も問題化している。例会では「沖縄女性の会」の金城ヤス子さんに、沖縄の基地と性犯罪の歴史・現状を報告していただき、事務局から報道経過を報告した後、参加者の間で討論した。