人権と報道・連絡会の第190回定例会が1月19日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは、安田弁護士弾圧事件・一審無罪判決と報道。98年12月、警察・検察が住管(住宅金融債権管理機構)と共謀し、死刑廃止運動のリーダーで「オウム事件」麻原弁護団の主任弁護人を務めていた安田好弘弁護士に対して「強制執行妨害」容疑をでっち上げ、逮捕・起訴した事件の裁判で、東京地裁は12月24日、警察・検察の捜査を批判する完全無罪の判決を言い渡した。
例会では安田弁護士が、裁判の経過や判決の意味・感想とともに、でっち上げの背景にあった麻原裁判の弁護活動妨害など「隠された権力の意図」を暴露、住管で権力と一体化した弁護士も含む司法の頽廃、権力犯罪に加担したマスコミ報道などについて徹底的に批判した。
人権と報道・連絡会の第191回定例会が2月16日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは、・インターネット新聞『日刊ベリタ』の活動、・「報道被害者支援ネットワーク・東海」の計画・・の二つ。
『日刊ベリタ』は大手メディアの「体制翼賛化」が進む中、〈市民による市民のためのオルタナティブ・メディア〉として創刊された日本で初めての本格的なインターネット新聞。例会では永井浩編集長が「9・11」以降の大手メディアの報道と対比しながら『日刊ベリタ』の報道内容を紹介、インターネットメディアの可能性と課題などについて報告した。
また「報道被害者支援ネットワーク・東海」については、4月スタートを目指してネットワーク作りに取り組んでいるメンバーの一人・山本邦晴さんが、3月に開く発足記念シンポジウムの内容や今後の活動計画の概要を紹介し、併せて人権と報道・連絡会の協力を訴えた。
人権と報道・連絡会の第192回定例会が3月15日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは「仙台・北陵クリニック事件」(メディアは「筋弛緩剤事件」と呼称)。2001年1月、宮城県警が「筋弛緩剤を点滴に混入して患者の殺害を図った」として、同クリニック准看護士・守大助さんを逮捕、5件の殺人・同未遂の罪で起訴したこの「事件」について、守さんの弁護人・阿部泰雄さんから、裁判経過と報道の問題点を報告していただいた。阿部さんは「患者の死亡・症状は、医療ミスや他の原因ですべて説明できる。この事件には殺人などの事件性は存在しない。守さんは医療ミスを隠蔽するために仕組まれた冤罪の被害者」として、検察側主張を詳細に分析・批判。さらに、警察情報を鵜呑みに犯人視報道を繰り広げたメディアの犯罪性も厳しく問いかけた。裁判は2月に結審、3月30日に仙台地裁で判決が言い渡される。
「恵庭裁判を考える――控訴審無罪判決をめざして」と題した集会が3月21日午後、札幌市の北海道大学学術交流会館で開かれた。恵庭冤罪事件被害者支援会、恵庭冤罪事件支援会・東京、恵庭事件弁護団が共催、昨年3月に「可能性」だけで懲役16年の不当判決を受けたOさんの支援を道民に訴えたもので、約300人が参加し、雪冤に向けて大きな一歩を踏み出した。集会では、冤罪・報道被害者・山田悦子さん(甲山事件)、河野義行さん(松本サリン事件)、三浦和義さん(ロス疑惑)の3人が冤罪の怖さや恵庭事件への思いを語り、弁護団・支援者が裁判経過や弁護・支援活動の経過を報告、いっそうの支援を訴えた。支援会・東京からも人権と報道・連絡会の山際永三事務局長ら12人が参加、翌22日に控訴審第1回公判を傍聴した後、現地支援会の案内で遺体発見場所や事件関係現場を実地調査し、改めて一審判決のひどさを痛感した。
人権と報道・連絡会の第193回定例会が4月12日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは、・週刊文春「大分・聖嶽(ひじりだき)洞穴遺跡捏造疑惑」報道をめぐる名誉毀損訴訟・二審判決、・「逮捕令状国賠」訴訟・一審判決・・の二つ。文春訴訟は、01年の「疑惑」報道後に自殺した大学名誉教授の遺族が文春を名誉毀損で訴えたもので、福岡高裁が一審に続いて原告の訴えを認めるとともに、掲載ページを指定した謝罪広告掲載を命じた。
また、逮捕令状国賠は、明白なアリバイがあるにもかかわらず指名手配を続けた警察と裁判所に賠償を求めたもので、東京地裁は、裁判所の責任は認めなかったものの、警察の指名手配の違法性は認め、原告一部勝訴の判決を出した。例会では、それぞれの訴訟の原告が、裁判の経過と判決の意義について報告、参加者の間で、各事件における報道の問題点について討論した。
人権と報道・連絡会の第194回定例会が5月17日夜、明治大学で開かれ、約30人が 参加した。テーマは「立川・反戦ビラ弾圧事件と報道」。自衛隊官舎のポストにイラク 派兵反対を訴えるビラを入れた「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人が2月27日 「住居侵入罪」に当たるとして警視庁公安2課と立川署に逮捕・起訴された問題で、逮 捕された大西章寛さんとメンバーの井上森さんから、逮捕・取り調べ、長期勾留の実態 や弾圧との闘いや公判の状況を報告していただいた。
また、市民の「表現の自由」に対する重大な侵害を問題にしないばかりか、実名犯人 視報道で弾圧に加担したメディアについて、連絡会の中嶋啓明さんが報道の概要と問題点を報告した。
人権と報道・連絡会の第195回定例会が6月14日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約70人が参加した。テーマは〈イラク・人質事件と「自己責任論」報道〉。
4月に起きた日本人拘束事件の被害者・今井紀明さんに、イラクでの体験、「自己責任論」バッシング、今後の活動などについて話していただいた。今井さんは、家族も対象にしたバッシングのすさまじさ、「自作自演論」などのデマ報道に「言葉で表現できない怒りを感じた」と言い、今も不当に米軍に拘束されているイラクの人々の苦しみと自分の拘束体験を重ねて「やっぱり何とかしたい。イラクだけでなく世界中に問題はいっぱいある。一人一人、何ができるか考えていかなくては」と話した。また、イラクで取材活動を続けるフリージャーナリスト・綿井健陽さんも発言、イラクでの「人質事件」の受けとめられ方と日本の「自己責任論」の落差などについて話した。
人権と報道・連絡会の第196回定例会が7月12日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは「熱海署不当逮捕事件と報道被害」。今年5月、熱海市で割烹旅館を経営する山本はるみさんが「元夫の従業員Sと共謀して元従業員男性の郵便貯金通帳と印鑑を盗み、60万円をだまし取った」として、窃盗、詐欺などの容疑で逮捕された。彼女は地元紙などに犯人視報道されたが、容疑は事実無根で、釈放・不起訴処分となった。同時に逮捕されたSさんは起訴されたが、「通帳は病気で倒れた男性から預かった。お金を引き出したのは入院費用のため。一部流用したことはあったが、すでに返済済み」と初公判で無罪を主張した。例会では、山本さんと娘の麻衣子さんが不当逮捕と警察発表鵜呑み報道による被害を報告、Sさんについても「流用は民事で解決できるもので、逮捕・起訴するような事件ではなかった」と支援を訴えた。
人権と報道・連絡会の第197回定例会が9月6日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。テーマは「冤罪JR浦和電車区事件」と報道被害。2002年11月、JR浦和電車区で働くJR東労組の組合員7人が、前年2月に労組を脱退し、7月に退職した元組合員に「組合脱退・退職を強要した」として警視庁公安部に「強要」容疑で逮捕・起訴された。この退職をめぐるトラブルは本来、労働組合の団結権をめぐる問題だが、新聞・テレビは警察発表を鵜呑みに犯人視報道したばかりか、逮捕された組合員を「革マル派」とする事実無根の公安情報を垂れ流した。例会では逮捕後344日間も勾留され、裁判闘争中のJR東労組大宮地本副委員長・梁次邦夫さんから、「事件」の概要、裁判の現状、「過激派キャンペーン」などの報道被害について報告していただいた。討論では「刑事裁判で冤罪を晴らすうえでもメディアとの闘いが重要」と、誤報を流した新聞に対するメディア訴訟などについてアドバイス、意見が出された。
人権と報道・連絡会の第198回定例会が10月18日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。テーマは「アルカイダ冤罪と報道被害」。今年5月、公安警察にでっち上げ「微罪」容疑で逮捕され、メディアに「アルカイダ幹部と接触」「アルカイダの資金・拠点作りに関与」などと大々的に報道をされたバングラデシュ国籍のイスラム・モハメド・ヒムさんと代理人の古川武志弁護士から、不当逮捕と報道被害の実態を報告していただいた。
ヒムさんは結局「アルカイダと無関係」として釈放されたが、この逮捕と報道でヒムさんが経営する国際電話プリペイドカード販売会社は顧客や銀行から取引を断られるなどして膨大な赤字を抱え込み、会社事務所も家主から追い出された。ヒムさんは「いったい私がどんな悪いことをしたのか。警察とメディアに何もかも奪われた。私はもう死んでいるんです」と涙まじりに悲痛な思いを訴えた。
「弾圧・冤罪・裏金作り――警察の犯罪・メディアの現在」をテーマにした人権と報道・連絡会主催の第20回人権と報道を考えるシンポジウムが11月20日午後、明治大学で開かれ、約100人が参加した。「9・11」事件以降、小泉政権が「テロとの戦い」と称して「戦争ができる国作り」を進める中、戦争に反対する市民や労働運動への公安警察の政治弾圧、不当逮捕、冤罪が相次いでいる。刑事警察のずさんな捜査、人権侵害も後を絶たず、その一方では組織的な裏金作りも次々と明るみに出、警察の暴走、不正、うそつき体質に対する市民の批判はかつてなく高まっている。
今回のシンポジウムでは、こうした警察の犯罪、それに加担するメディアの人権侵害について、冤罪・報道被害者の体験を聞くとともに、警察の組織犯罪を追及し、これまでの事件報道のあり方を見直そうとするメディアの取り組みについても現場記者から報告を受けた。
第199回 立川反戦ビラ無罪−熱海事件報告
人権と報道・連絡会の第199回定例会が12月20日夜、中央大学駿河台記念館で開かれ、約40人が参加、「立川・反戦ビラ弾圧事件」判決と「熱海署不当逮捕事件」その後について報告を受け、討論した。「立川」では12月16日、東京地裁八王子支部で他の2人とともに無罪判決をかちとった大洞俊之さんが、今回の弾圧の特徴と裁判の経過、判決の内容・意義、無罪判決を引き出した全国的な支援、判決をめぐる報道などについて報告した。「熱海」については、7月定例会の後で始まったSさんの裁判結果と「人質司法」の実態、今後の闘いについて、山本麻衣子さんが報告した。
なお前回ニュースで予告した「恵庭冤罪事件」問題は時間の都合で延期し、1月に控訴審の現状と「新潮45」の新たな人権侵害報道を合わせて報告・討論することになった。