自治労音協通信

 2面  NO45号/2001.8.15発行

わがまま音楽紀行(連載第15回)★タイ編

大阪市職労 宮本雄一郎

アユタヤを散歩するゾウさん         

1 梅雨です

6月です。6月といえば梅雨の時期ですが、みなさんお元気でお過ごしでしょうか。私は梅雨の時期がそれほど嫌いではありません。というよりも、梅雨の時期が好きです。大阪の夏の暑さは耐え難いものですが、夏前の梅雨の時期というのは室内で過ごすのに適当な気候だと思います。そのせいか日本の歌には雨をテーマにしたものが多いように思います。「快適な雨」というのがあればいいのですが、みなさんの町の梅雨はいかがでしょう。

2 ライブでした

いつものように早速話は変わります。今回は、私のわがままで行ったミニ・コンサートの報告です。場所は大阪市内の真田山公園近くにある「風まかせ・人まかせ」という店です。名前から想像できますが、かなり変わった店主の営業するヘンな店です。ところで、ライブが終わってから気付いたのですが、自分ひとりでライブをやるというのは、私にははじめての経験なのでした。
「風まかせ」は下町にある、二〇人も入るといっぱいになる小さな飲食店です。店には音響装置は何もありません。だから生のギターと生の声だけで歌うという、アンプラグドも究極の「原始的」な場所であるといえるでしょう。私が聞き手の立場に回ると、生のギターと歌だけで延々と自作の歌を歌われるのは、正直言ってついていけません。
同じ味付けの料理ばかりを続けて食べさせられているように感じて、「もうええわ、満腹や」と言いたくなるのです。でも、それが分かっていても、一人のライブゆえにギターと歌だけという構成は他に変えようがありません。だから、単調さを避けるためにゲストに来てもらったり、日本のロック音楽の始まりとなる「上を向いて歩こう」や「時計を止めて」など数曲を取り入れました。
当日は、音楽を通じて知り合った仲間やバンドのメンバー、数十年前の高校時代の友人、アジアを一緒に旅行している友人、そのまた近所の人達やこどもたちまで駆けつけてくれました。せまい店がほぼ一杯になり、私の尊敬する社会派シンガーソングライターの山本隆俊さんと生のギターだけのライブとなりました。
反省を込めた報告になりますが、歌というものは、特に実際の生の歌では、なかなか自分の思いどおりには行かないものです。最近私がよく聴くボサノバの歌手が一見淡々と、ただただ正確に、そして何気無く歌っているように聴こえること。目立った派手さのない着実な歌の、その本当のすごさというものにこのとき思い至りました。
自分の表現したいことが音にならないもどかしさ、うまく伝わらずに空回りする思い、自分の実力はしょせんこの程度かという落胆と限界を感じる瞬間でした。やはり、課題はそれだけ大きく、だから音楽をやるんだということを再認識したのです。最後までつきあってくれた辛抱強い友人たちに心の中で感謝をして、ひとりだけのライブは終了しました。
会員の皆さん、大阪に来たときはUSJもいいですが、是非「風まかせ」という「変わった店」にも寄ってみてください。

3 個人旅行者ですー何語でジャズは歌う?

さて、話は音楽紀行に戻ります。前号では、クリスマスのバンコクでホテルを探しあてて、タイスキ鍋をつついたところまででした。私と友人が泊まったホテルは、裏技での格安料金でゲットとはいいながら、一応は一流ということになっている巨大ホテルです。前庭は広大で、表通りからホテルのフロントに着くまでに歩いて3分くらいかかります。
その途中の通路ではロックのライブをやっていてテーブルと椅子が置かれ、オープンエアのビアガーデンという雰囲気です。その時ふと気付いたのですが、日本で「ビアガーデン」というと、誰もがビルの屋上を思い浮かべるようです。日本には一体どうして「地上のビアガーデン」が少ないのでしょうか。通りがかりの通路にビアガーデンがあり、音楽をやっているという、当地では当り前の事実が、私には不思議であり新鮮に写ります。
通路に面した所には旅行社や美容院があって、店の人が表に出ておしゃべりをしています。まるで下町の露地裏の夕暮れ時という雰囲気です。ホテルに入れば、カフェでジャズの生演奏をやっています。時期がクリスマス、そしてホテルでのジャズといえば、高級な雰囲気を想像します。
しかし、南国はホワイトクリスマスとは無縁です。なにせ一年中が夏ですし、オープンなのです。「ううーっ、暑うー」といいながらサンダルでペタペタとホテルを歩いていたら、ちょっとジャズをやっているという程度のお手軽な環境です。ジャズバンドは、女性ボーカルにピアノ、ベース、ドラムという小編成でメンバーはすべてタイ人です。
曲がはじまります。私の知っているスタンダードナンバーです。そして、やはりというか、予想したとおり女性ボーカルの歌は英語です。ジャズ歌手が英語で歌うというのは日本と同じです。いや、おそらく世界中が同じ傾向なのかもしれません。タイ語や現地語のジャズというのがどこかに存在するのでしょうか。
次の訪問地で現地語のジャズを探してみる楽しみができたなあ、などと思いつつ、しばらくタイ人の奏でるジャズの曲に耳を傾けてみました。(つづく)

アユタヤの夕暮れ

●目次ページに戻る

●タイトルページに戻る

●1面に戻る

●3面に進む