聖女県
(四百字原稿用紙・換算=23枚)
…………「流行通信」1984年11月号に発表。三部作「インク壜のなかの雷雲」の第2部に当たる。
息苦しい政治的党派性と奇怪な神秘主義に染め上げられた新興宗教組織において、ふとしたことから数十年前の謎めいた殺人事件の真相が検証されてゆく。緊迫した推理小説仕立てで物語が進行しながら、「障害者」や「差別」をめぐる極限的な論議が展開され、一人の女性の孤独な内面が浮かび上がってくる、掌篇小説というジャンルで作者がこれまでのところ、自らの代表作と考えるものの1つ。
著者のこれに先行する書き下ろし小説『旅する人びとの国』上下2巻(1977年〜1984年/1984年・筑摩書房刊)と同様、すでに1984年の時点で「オウム真理教」事件を予言していたという要素も持つ作品であり、また二人称小説という困難なナレーションの実現をめざした作品でもある。【臙脂色表紙ノートから】
【「収録作品・全7篇の内容」へ戻る】
【著書一覧ページへ戻る】
【日本語版・目次へ戻る】
【表紙へ戻る】