1)『イタリアの引き出し』
内田洋子著『イタリアの引き出す』(阪急コミュニケーションズ)を読んだ。内田洋子さんのイタリアについての新刊エッセイで(60編の掌編)、装丁といい、カラー写真の配し方といい、ほんとうにすてきな本だ。
「引き出しの中のイタリア(あとがきに代えて)」から
時節とともに、町と人と自分も移り変わっていく。一つ一つの場面を取りこぼさないように、拾って歩く。
集めてきたものを、引き出しに大切に保管する。ときどき出して、そっと眺めてみる。
するとバラバラに入れたはずの無関係の断片が繋がり、拾ったときには気がつかなかったことが突然、明らかになったりする。
それは、大事にしまっておいた思い出がいっせいに息を吹き返し、共演する舞台を見るような瞬間なのである。
なお、このエッセイは「フィガロ・ジャポン」のウェイブサイトに現在も連載中である。
2)『カテリーナの旅支度』
内田洋子著『カテリーナの旅支度』(集英社)を読んだ。私の好きな作家の内田洋子の最新作で、イタリアに生きる人々を描いた20の短編が入っている。とても繊細で感受性豊かな本だ。そのうちいくつかをあげる。未来のエネルギー源を研究するルイジはその資質と実力を評価され大学に残ると誰もが期待したが、逆にその実力が疎まれ研究室に残れなかった。そして、山から伐採した木を建築資材として売る仕事をする父の元に帰り、山の木々と対話して生きる父の姿を見、子供の頃に父と山に入った経験を思い起こすなかで、父の生き方を学び直す。そして、今はあたらしいエネルギー源の開発を目指す研究所の所長として活躍する。『里山資本主義』を思い浮かべる話だ。(「赤い小鳥の絵」)東洋学(日本学)を専攻生するドナテッラはナポリから日本に留学する。その彼女は下宿先(彼女の友だちの私宅)と国会図書館と神保町の古本屋街の三角形で結んだ線上を動く。まさに本とともに生きる人生である。なんか身近に感じる話だ。(「めくるページを探して」)エクアドルからイタリアに働きに来たデルマとの出会いのなかで、イタリアの外国人差別を描く短編。(「硬く冷たい椅子」)それぞれが心が洗われる掌編であり、今年行く予定で中断したイタリア旅行(シチリアに行くつもりだった。)に来年は絶対行こうと思わせた小説集だった。なお、内田洋子の作品には、『ジーノの家、イタリア10景』(文藝春秋社)、『ミラノの太陽、シチリアの月』(小学館)、『イタリアの引き出し』(阪急コミニュケーション)等がある。
3)『皿の中に、イタリア』
内田洋子著『皿の中に、イタリア』(講談社)を読んだ。内田洋子は私の好きなエッセイストで小説家だ。その新刊書だ。「あまりカラブリアには関わるな」と言われる貧しいイタリア南部の出身の青空市場の魚屋の三兄弟との出会いと交流が縦糸になって話は進む。魚、ワイン、ソラマメ、トマト、オリーブ、チーズ、パン・・様々な食材とイタリアの人々の生活とが鮮やかに描かれた20編の掌編。とても楽しく読んだ。魅力的な話が続くが、そのひとつに、ミラノの大手のスーパーの買いつけ担当者が南部のサルデーニャ島に出かけ、待ち合わせ場所で羊の大群に取り囲まれ、「サルデーニャ島へようこそ」と地元産のチーズとワインを突きつけられ、その味に仰天する話。欧州圏外の外国人がイタリアで暮らすのは困難を極めるが、そんな中で南米出身の露天商が貧しいイタリア人女性にそっと屑野菜を差し出す話。オリーブはイタリア南部のブーリア地方が名産地であるが、北部のリグリア地方のオリーブも、二期作ができ、小ぶりのだが、おいしい。「プリマドンナのような南部産のオイルと違い、野菜や魚、肉の後ろに控えて主役の魅力を引き立てる」名脇役というオリーブの話。「食べて暮らす。日常の断片を、パンのかけらや肉片、野菜の切り口に見る、なによりのごちそうは、噛み応えのある仲間なのだ。」(あとがき)
4)『ウーナ・ミラーノ』『食べてこそわかるイタリア』(シルヴェリオ・ピズとの共著)
内田洋子さんが好きで、旧作をアマゾンで手に入れた2冊だ。お連れあいのシルヴェリオ・ピズとの共著である。アマゾンは特に中古本で重宝している。
内田洋子、シルヴェリオ・ピズ著『ウーナ・ミラノ』(講談社文庫)を読んだ。この本は「ミラノで暮らすさまざまな年令、職業、趣味の人が、どういう生活をしているのかを紹介し」、「いろいろな時間帯のミラノで、何が起きているのか。登場する12の話で、町を一周できるように構成し」、タイトルの「ウーナ・ミラノ」は「<あるミラー>という意味で、十人十色のミラー、あなたのミラノを探しに行きませんかというお誘いのつもり」(「あとがき」)ということで、ほんとうに趣味のよいミラノのガイドブックだ。今年のイタリア旅行をまだ一度しか行っていないミラノをもう一度訪ね、ミラノからナポリ等の南イタリアを回ろうかと最初考えていた。それで、この本を入手したのだった。結局、シチリアの旅になったが。さて、ミラノを再訪する機会があるかどうか。もう1冊、内田洋子、シルヴェリオ・ピズ著『喋るイタリア』(平凡社新書)も買ったが、これは旅のためのイタリア語入門書としよう。
『ウーナ・ミラノ』(講談社文庫)を読んだ。この本は「ミラノで暮らすさまざまな年令、職業、趣味の人が、どういう生活をしているのかを紹介し」、「いろいろな時間帯のミラノで、何が起きているのか。登場する12の話で、町を一周できるように構成し」、タイトルの「ウーナ・ミラノ」は「<あるミラー>という意味で、十人十色のミラー、あなたのミラノを探しに行きませんかというお誘いのつもり」(「あとがき」)ということで、ほんとうに趣味のよいミラノのガイドブックだ。今年のイタリア旅行をまだ一度しか行っていないミラノをもう一度訪ね、ミラノからナポリ等の南イタリアを回ろうかと最初考えていた。それで、この本を入手したのだった。結局、シチリアの旅になったが。さて、ミラノを再訪する機会があるかどうか。もう1冊、内田洋子、シルヴェリオ・ピズ著『喋るイタリア』(平凡社新書)も買ったが、これは旅のためのイタリア語入門書としよう。(*現在のところ、事情でイタリアの旅~シチリア~には行けていない。ぜひ実現したい。)