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韓国の抵抗の映画監督チョン・ジヨンの作品を見る 



 

 

1)「南営洞1985」

 「南営洞(ナミヨンソン)1985」(チョン・ジヨン)を見た。先に私がスペイン語講座で通っているアジア図書館でチョン・ジヨン監督の講演会があったので聞きに行った。韓国戦後史と民主化闘争史のなかでのチョン・ジヨン監督の映画制作の位置づけのお話しは大変興味深かった。お話しを聞いていて、以前の監督の「ホワイトバッジ」(1992年作品、韓国のベトナム参戦と帰還兵の帰国後の後遺症・生活を扱った映画で、アン・ソンギ主演)を見たことを思い出し、「韓国で(今でもこの問題を取り上げるのは難しいと聞いているが)この映画を公開したときに反発や反対があったのではないか」と質問をした。当時、派兵された軍人の戦友会等の上映反対運動があったとのことだ。「南営洞1985」は監督の新作である。軍事独裁政権下(この時期は光州事件の後、全斗煥政権下)、主人公のキム・ジョンテ(パク・ウォンサン)は民主化運動に身を投じていたが、南営洞にある公安警察に逮捕、拉致された。そこで北朝鮮の指揮のもとに国家転覆の暴力革命を図ったスパイであるとの嘘の自白を厳しい拷問によって強要される。その拷問の技師イ・ドゥハン(イ・ギョンヨン、名脇役とのことだ)は拷問を「工事」という。その緻密に計算された拷問は、悲惨で目を覆うばかりであったが、映画は真正面からそれをとらえ、国家権力による暴力を告発し、圧巻であった。韓国の民衆化闘争の底力を感じさせる、きりっとひきしまった映画だった。

2)「南部軍/愛と幻想のパルチザン」

 「南部軍/愛と幻想のパルチザン」(チョン・ジヨン)を見た。チョン・ジヨン監督の1990年作品である。朝鮮戦戦争前後の韓国南部のパルチザン=南部軍(歴史的に摩擦された南朝鮮労働者党の系譜を引く)ドラマだ。実に苛酷な歴史的事実の踏まえた作品だが、主人公イ・テ(アン・ソンギ)を中心に交錯する人物像とその演出には感嘆した。パルチザン兵士たちのダイアローグのなかで、詩人のキム・ヨン(チェ・ミンス、この俳優はとてもいい)が「我々の力で日本軍を克服できなかった事がすべての原因だ。この戦いで南や北が勝つことはないだろう。勝つのは、アメリカでありソ連だ」と語るが、これが監督の描きたかったことだろうと思った。この作品の前作「ホワイト・バッチ」を再度レンタル・ビデオで見て、3作品をとらえ直そうと思った。

3)「折れた矢」

 チョン・ジヨン監督の2作を見たので、以前見た「ホワイトバッジ」をレンタルビデオ屋で探したが、(DVD化されているのに)なかった。確かこの頃に趙博さんが河合塾でやっていた「韓国映画祭」で見たはずだ。他にチョン・ジヨンの作品がないか調べたが、「折れた矢」(2012年)があったので、僕には珍しくDVDを借りてきて見た。この作品は実際にあった大学教授キム・ギョンホの解雇事件の裁判を扱ったアン・ソンギ主演の映画で、司法の腐敗を告発し、抵抗の精神に満ちあふれた大変パンチがある映画だった。また、労働者弁護団だった頃の挫折経験が原因でアルコール中毒のパク・チュン弁護士が「南営洞1985」の主人公のパク・ウォンサンだった。なかなかいい俳優だと思った。
(2014・5・16) 

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