書名:
天は人の下に人を造る |
「福沢諭吉神話」を超えて | 著者: 杉田聡著 | ||
価格(税抜): 2,000 | シリーズ: | 発行: 2015年1月 | ISBN: 4-7554-0250-0 |
天は人の下に人を造る 杉田聡著 46判並製 本文13級 303頁=定価2000円+税 ISBN978-4-7554-0250-0 C0036 人間平等観を鼓吹し、デモクラシーを日本に伝え、啓蒙主義者として明治時代をリードし、差別を憎む明治のスーパースターという福沢諭吉神話の虚妄を、全著作を検証し、徹底的に打ち砕く。4半世紀も一万円札に君臨する福沢を一刻も早く引退させよう。 もくじ はじめに 福沢神話としての「天は人の下に人を造らず」 7 第一章 福沢は「天は人の上に人を造らず」と本当に主張したか ─福沢は人間の平等を否定し、むしろ差別を容認・強化せんとした 11 「自国の独立……その他は、他日なすところあらん」 ─「啓蒙」期にはすでに国権主義が芽生えている 12 「我輩畢生の目的は、ただ国権皇張の一点」 ─すべては国権拡張に従属する 16 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」 ─典型的な福沢諭吉神話 23 第二章 「貧富を問わずに人才を作るは、前金を払うて後の苦労の種子を買うもの」 ――貧民には最低の教育しかいらない 35 「銭あり才あるものは上等の学校に入るべし」 ――福沢は選別教育の必要を強調する 36 「最も恐るべきは貧にして知ある者」 ─福沢は貧知者を生まない教育を模索する 40 「教育の過度を防ぐは、財産の安寧を維持するの一法」 ─貧知者が生まれぬよう授業料を高くせよ 42 「もっぱら富豪の子弟を教うるの門を開かしむるこそ知者の事」 ─貧知者が生まれぬよう官立学校を廃せよ 44 「年齢の制限は児童を遊惰に導いて悪風に染めしむる」 ─子どもの遊びの権利も福沢の眼中にはない 48 「断じて政事に関するを得せしめず」 ─文部省からの独立にも限度がある 50 「学問のすヽめ」の放棄 ─士族の遺伝子を残すためには選別教育こそ必要 58 「報国致死はわが社中の精神」 ─慶応義塾の建学の精神 61 「ただ普通の教育・知見のみ、高尚なる学育は第二のこと」 ─女子に高等教育はいらない 67 第三章 「明治憲法はいかにも完全無欠」 ――人権伸長は国権拡張に従属する 73 人権は「栄誉・生命・財産」のみ ─自由権の軽視 74 「国のためには財を失うのみか一命をも投げ打ちて惜しむに足らず」 ─福沢は政府の存在理由を問おうとしなかった 80 「〔明治憲法は〕国民の権利を重んじて残すところなき」 ─「法律の範囲内において」という制限があるのにか? 84 「妨げとなる者を遠ざけるは、至極もっともなる出来事」 ─言論・集会・報道の自由の制限 87 「信教の自由」事件も「学問の自由」事件も福沢には届かない ─弾圧事件への追随 90 「英国風の党派政治……にわかに同意を表するを得ず」 ─国会開設時期尚早論から、国権拡張のための国会へ 94 「天下の駄民権論を圧倒し、政府真成の美意を貫通せしめん」 ─福沢は民権重視に背を向ける 101 第四章 「海陸軍人の精神を制して、その向うところを知らしめる」 ――帝室がもつ超政治的な機能 105 「日本人民の精神を収攬するの中心」 ─帝室は人民・軍人を制する 107 「帝室は政治社外のものなり」 ─政争外におかれた絶対主義的天皇の政治的威力 109 「御親征で全軍勇躍」 ─帝室の超政治的な力が求められている 113 「仁義・孝悌・忠君・愛国の精神を煥発し、聖意あるところを貫徹せしむべき」 ─明治国家の倫理的支柱たる帝室と「教育勅語」 119 「無きものを造るは、既に有るものを利用するにしかず」 ─華族も利用せよ 124 「帝室のために生死するものなりと覚悟を定めよ」 ─臣民の分としての「報国の大義」 125 第五章 「無遠慮に地面を横領して、わが手をもって新築するも可」 ――国権拡張・対外進出は福沢の悲願 131 「戦争もまた甚だ有益なるもの」 ─外戦・外患への介入のすすめ 132 「朝鮮国務監督官に兼任し、万機の政務を監督することとなし」 ─福沢は韓国併合への道を掃き清めた 139 「西洋人がこれに接するの風にしたがって処分すべきのみ」 ─福沢はアジア分割を主張した 144 「主権は純然たる独立国に対する議論」 ─朝鮮の主権など問題にならず 148 「実際はこれを征服したるものと見なし」 ─福沢は朝鮮の保護国化をめざした 156 「日本の兵は文明の兵にして、人民の私有を略奪するごとき卑劣は犯す者なし」 ─日本軍=文明の軍隊という妄信 165 「チャンチャン」、「豚」、「豚尾」のたれ流し ─社説でさえ使われる差別用語 168 「出先の者の心得違い」、「野外の遊興」 ─一国の皇后が殺された未曾有の凶悪事件だというのにか?! 175 「一人も余さず殺戮して醜類を殲ぼすべし」 ─抵抗する台湾島民は皆殺しにせよ 180 第六章 「地主と小作人(資本主と職工)の関係は極楽世界」 ――児童労働・労働時間の制限は不要である 185 「狼狽して方向に迷う」文明国 ─福沢は労働立法に反対する 186 「地主と小作人の関係甚だ滑らかにして情誼の温かなる、父子のごとし」 ─福沢は地租軽減に反対する 188 「資本主と職工との関係も地主と小作人に同じ」 ─父子のごとき関係に法律はいらない 194 「妻子とともに空腹を忍ぶの外なし」 ─労働時間の制限は無用である 199 「たとい工場に行かざるも、とうてい就学の見込みはあるべからず」 ─児童労働の制限も不要と福沢はみなす 203 「無数の貧民をその地に移して耕作に従事せしむる」 ─貧民は朝鮮・台湾に移民させよ、中国も無限の広野 206 「人民の食物は腐敗の悪物」 ─貧民への冷淡さと「おためごかし」 213 第七章 「男女を同権にするがごときは衝突の媒介」 ――女の領域は家、その美徳は優美さ 215 「さしむき自力をもって殖産に従事せんとするも難きこと」 ─労働権を軽視する福沢女性論は男女平等論とは無縁である」216 「男女を同権にするがごとき平均論は衝突の媒介」 ─良妻賢母主義の原形 219 「裁縫の嗜みなき者は女子にして女子にあらず」 ─家事・育児は女の天職 221 「新家族の苗字に中間一種の新苗字を創造して至当ならん」 ─偕老同穴論が前提されている 226 「夫婦間の権利については、条文の規定一点の疑いを容るるところなく」 ─福沢は「明治民法」に全面的な賛意を示す 229 「家会を開設し、婦人女子に家政参与の権を与えたき」 ─女に参政権はいらない 232 「無遠慮なるべからず、差し出がましく生意気なるべからず」 ─「女徳」へのこだわり 234 「内実は不品行を犯すとも、これを秘密にして世間の耳目に隠すべし」 ─ 239 「娼妓に依頼して社会の安寧を保つの外あるべからず」 ─良家の娘を守るために公娼制は不可欠 242 「内地においてさえ娼婦の必要は何人も認むるところ」 ─娼婦の出稼ぎは人民の移住に伴うべきもの 247 「人間以外の醜物」、「人類の最下等にして人間社会以外の業」 ─薄幸な貧しい女性をそこまで指弾するか?! 251 終 章 天は人の下に人を造る、人の上に人を造る ――「福沢諭吉神話」を超えて 255 「〔明治〕政府のお師匠様」 ─福沢は一九四五年にいたる枠組みをつくった 257 「天は人の下に人を造る、人の上に人を造る」 ─「有様」を変えがたいものにする天与の条件 264 一万円札からの引退を! ─真実の福沢像が理解されれば引退は当然である 275 文献一覧 281 引用著書・論説一覧 291 あとがき 302 |