■‥‥「周辺事態法案」に関する質問書目次 ‥‥■
▼「周辺事態法案」に関する質問書
▼T 「地方自治体への協力要請」について
▼U 港湾・空港の使用について
▼V「建物・施設・医療機関・物資など」について
▼W 地方自治体職員の動員について
▼X 戦争マニュアル」という日米新ガイドライン関連法案全体について
愛知県知事・神田真秋 様
1999年4月29日
「周辺事態法案」に関する質問書
前略
私たちは、先に(1999年1月25日付)前愛知県知事に対し「周辺事態法案」に関連する4項目の質問書を差し上げました。
2月1日付を以て回答をいただき、同時に県議会議員の紹介により愛知県県民課の4名の方々との話し合いの場を設定していただきました。
私たちの最大の懸念は、この法案の内容が明らかな戦争協力法であり、米軍の戦闘行動に地方自治体あげて協力をさせられるという点にあります。
このような法案自体、世界に誇る憲法九条の理念に大きく反しています。
素朴な疑問として、地方自治体は何をどのように協力せねばならないのか、協力しないときはどうなるのか(協力しないこともあり得るのか)、どこからどのような指令がくるのか、職員の人権はどうなるのか、私たちの生活にどんな影響があるのか。
さまざまな不安にかられて質問しましたが、残念ながら満足な回答は得られませんでした。法案成立後に考える、県自体が十分な情報を得ていないというお答えで、私たちは行政当局の「楽観的」な姿勢に少なからず不安を増幅させながら辞しました。
県民の生命や財産を守り、生活の安定を図ることが地方行政の最大の使命ですし、国と地方とは従属関係ではないはずです。もっと主体的に国に意見を述べたり、県民生活への支障を予期すれば断固として拒否する姿勢をとるべきではないかと考えます。全国でおよそ200カ所の県市町村議会が反対決議を採択したり、国への意見書を提出していると聞きますが、愛知県の動きは今ひとつ不鮮明です。新知事は、開かれた県政を望まれていると聞いております。県民課の方々も、「いつでもおいで下さい」とおっしゃいました。
私たちは、4月27日の「法案衆議院通過」を痛恨の思いで見ました。小渕総理の米国への「手土産」とも言いますが、自国民のみならずアジア諸国民衆を不安に陥れる重大な法律を、政党間の談合で決めた政治に深い失望と怒りを覚えまさしく「戦争前夜」という思いを強くしております。
私たちの不安と疑問に対し、ぜひとも重ねて応えていただきたく、以下に項目を挙げました。ご多忙とは存じますが、誠意ある回答をよろしくお願い申し上げます。
敬具
代表世話人・水田 洋
【追記】回答は、文書にて5月12日(水)までに下記宛にお送り下さい。
検討の後、再び県当局との意見交換を致したく存じます。話し合いの場を設けていただきますようお願い申し上げます。委細は後ほど連絡させていただきます。
不戦へのネットワーク事務局
【送付先】名古屋市昭和区白金1−13−10
TEL/FAX 052−881−3573
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(質問)
T 「地方自治体への協力要請」について
政府は周辺事態法案の第9条第一項に「地方自治体の長に協力を求める」としていますが「正当な理由があれば断ることができる」ともしています。
また今年3月12日の衆議院本会議の場で、強制するものではない。制裁的な措置をとることはない」と答えています。
しかし、野呂田防衛庁長官は、2月1日の衆議院予算委員会で「地方自治体の長が要請を受け入れた場合に、その自治体の職員が協力しない場合は、地方公務員法によって責任を問われる」、「一般的な協力義務としては協力するのが当然」と述べています。
「強制しない」ことと「義務」ということは相反することであり、総理の説明と防衛庁長官の発言は、全く整合性を欠くものです。これに関して質問いたします。
- 「正当な理由」とありますが、どのような理由ならば「正当」であるとお考えですか。あるいは、県として「どのような理由が正当であるか」と、国にその内容を照会されましたか。
県当局のお考えと、国の回答とをお教え下さい。
- 防衛庁長官は、「義務」であると発言しています。これは周辺事態法案の案分の解釈とも総理説明とも異なる見解です。私たちは、防衛庁長官の越権行為であり「恫喝」とも受けとれる危険な発言であると思っています。
このような発言に対して、県はどのように思われますか。
- 周辺事態法案には罰則規定がないとはいえ、港湾法など個別の法律を改正して制裁措置を盛り込むこともできます。そのような懸念について、県はどのような対応をされますか。
- 地方公共団体の長が職務命令を発すれば、職員は従わねばなりません。職員の健全な職場環境を保証すべき長が、職員を危険な状態に置くような職務命令を出すべきではないと考えますが、どのようにお考えでしょうか。
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U 港湾・空港の使用について
東海三県には在日米軍の施設はありませんが、航空自衛隊各務原基地や小牧基地、陸上自衛隊守山駐屯地、春日井弾薬庫など軍事的な施設が数多くあります。小牧からはカンボジアやインドネシアなどへC130輸送機が飛び立っています。また、日本でも有数の軍需産業の拠点ともなっており、これらの施設が「敵」からの攻撃の的になる恐れは充分あります。県民の不安の大きな要因ともなっている港湾・空港について質問します。
- 名古屋港は市民が利用する商業港です。外国からの客船の出入りも多く、平和と友好の海の玄関であると言っても良いでしょう。
名古屋港管理組合の海務課は「今回の内容では(註・4月23日付/国が地方自治体や民間に求める協力項目について示した内容)港湾の営業にどのような影響を及ぼすのかまだわからない。法案成立後に全国の大規模港との間で受け入れ対策について話し合う予定である」と言っていますが(註・朝日新聞4・24付)、国は、米軍や自衛隊艦船の港湾使用許可を求めているのです。観光や行楽で楽しむ人々の大勢いる港湾に軍艦や軍隊が入るのですから、影響がわからないではすまされません。
影響の詳細、その対応についてぜひ明らかにして下さい。
- 周辺事態法が成立すれば、日米地位協定に基づく平時の米艦船入港が日常化する恐れはありませんか。
もしそうなった場合、どのような対応を講じられますか。
- 政府は「非核三原則」を主張していますが、アメリカは「核の有無を明かさない」政策をとっており、あいまいなままで米艦船の寄港が繰り返されています。
しかし神戸方式とも言われる神戸市議会決議や核搭載の有無を文書で提出させようとする小樽市や「非核証明書」の提出を求める「港湾施設管理条例」改正案の議会提出を試みた高知県のようなさまざまな試みが全国でなされています。国の妨害で廃案になった場合もありますが、県民・市民がこれを支持するのは当然だと思われます。
愛知県も、「核」の有無についてもっと厳しい態度で臨むべきではないでしょうか。核搭載艦船が名古屋港にやすやすと入港した事実が、後になって判明した場合の管理責任はあまりに重いと言わねばなりません。
核の事故も起きる可能性があります。県民の安全のために、神戸方式のような「核を持ち込ませない」取り組みをなさるつもりはありませんか。
- たとえば、韓国にいる二万人ほどの日本人の救出に空は向かないそうです。有事の際の救出には艦船でないと対応できないと軍事評論家は言っています。名古屋港(あるいは蒲郡港か?)が使用される恐れは十分にあります。
その際のシュミレーションはどうなっていますか。
- 名古屋空港は軍民共同の使用です。米軍機は昨年21回飛来したそうです。給油のためと言いますが、有事の際に、民間機が間断なく飛び立つ空港を軍事優先に使用するとなれば、さまざまなトラブルの発生が予期されます。
軍民両機の接触事故とか騒音、旅客や近隣住民への人権侵害などに県はどう対応されるおつもりですか。
また平時における米軍機の飛来について、県は事前通知を受けているのですか。
- 沖縄を見るまでもなく、米軍基地が存在するだけで一般住民への物理的・精神的重圧はすさまじいものがあります。いかに軍事は国の専権とはいえ、被害を受けるのは地域住民です。住民の立場を尊重して、県は空港や港湾の軍事利用を拒否するべきではありませんか。お考えをお示し下さい。
- 1994年「核疑惑」の際に、アメリカが出した文書によりますと、県内のどの施設が使用されるかということについて言及しているそうです。
この情報について細部を入手されていますか。
情報の詳細をお聞かせ下さい。
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V「建物・施設・医療機関・物資など」について
- 政府のまとめた自治体協力の具体例によりますと「地方公共団体の物品や施設、土地の一時的な貸与」とありますが、それらは具体的には何をさすのでしょうか。ことに「施設」を使用するのか、ぜひ知らせて下さい。(発電所や学校まで含まれると聞きましたが、本当でしょうか。)
@ 施設‥‥
A 物品‥‥
B 土地‥‥
C 何のために必要でしょうか。
D 一時的とはどういう意味なのでしょうか。
- 「地方公共団体の車両による輸送」とか「給水」とか「公立医療機関への患者受け入れ」とか「危険物貯蔵所の設置許可」など多数の項目がありますが、これらの許認可の手続きはどうなっているのでしょうか。
長が認めたら即時認可となるのでしょうか。
また、県・市・町・村議会などへの報告はどうなっていますか。
認可された結果、事故などが起きた場合の補償や責任の所在はどうなっていますか。
- 法案では「米軍・自衛隊・避難民・救出された邦人の傷病者について、その受け入れを依頼することが想定される」とあります。
自衛隊病院は全国に17あり、病床数は約2800。岐阜病院(各務原)は病床100だそうです。防衛庁はその半分は埋まっていると答えています。
平時ですら半分埋まっている自衛隊病院とほぼ満杯の県立病院へ傷病者が殺到すること自体が「周辺有事」どころか「戦場」そのものと考えます。
このような依頼を想定している「有事」そのものに反対することが、県の任務だと思いますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせ下さい。
- 「人員及び物資の輸送」とありますが、輸送の際には交通渋滞や交通事故危険物輸送ではそれに伴う安全性の問題、さらには軍事輸送優先となれば、日常生活必需品の流通疎外など、県民生活への多大な支障が想定されます。
どのような影響がどのような形で出てくるのか、調査研究をなさっていますか。その対策についてもお聞かせ下さい。
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W 地方自治体職員の動員について
- 「水道・清掃・土木・医療・公園・港湾など」多くの地方自治体職員が、戦闘行動の「後方支援」に「協力」させられるという仕組みになっているそうです。しかも、職務命令という形で「強制労働」させられるのであれば、それは憲法の定める基本的人権の侵害であり、労基法にも違反していると考えます。
県当局のお考えをお聞かせ下さい。
- 上記に関して、「弾薬・武器の輸送で撃墜されないという保証はない」と従事させられた職員が攻撃目標となって死傷する可能性を、「高村外相は否定しなかったということです。(2月23日/参議院予算委員会答弁)
この件について、あなたの命令に基づいて職務遂行した職員が死傷した責任をどうお考えになりますか。
このような危険な職務を命じるおつもりでしょうか。
- 多くの県職員が戦争協力に動員された場合、本来の職務に大きな障害を招くことは必至です。公務員は「全体の奉仕者」となっており、あくまで全体のために職務を全うせねばなりません。
国からの「要請」という名の「強制」に屈するのではなく、職員やその家族、そして、県民全体の福祉に全力を挙げることが長としての職務であると思います。いかがでしょうか。
お考えをお示し下さい。
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X 戦争マニュアル」という日米新ガイドライン関連法案全体について
- 「後方支援」という言葉は、前方ではないが戦争には参加しているという意味です。戦争を放棄し、再び惨禍を繰り返すことがないと決意して、わずか55年しか経ておりません。
愛知県は、前述のように「戦争」と全く無縁であったとは言いがたい面があります。武器産業や軍事施設を抱えております。攻撃目標となり得る地域です。平和で安定していればこそ安全であり得ましょう。有事などを起こしてはなりません。あくまで平和的外交を推進し、近隣諸国から愛される国をめざすべきです。そのための提言を進んで行うように求めます。
お考えをお聞かせ下さい。
- 愛知県は、情報公開に関して全国ワースト1と言われております。
戦争協力というような重大な件に関して、あまりにも情報収集や公開が遅れていることが理解できません。積極的情報を集め、公開するお気持ちはありませんか。
「周辺事態法」についても、県民にていねいに親切にわかりやすく情報公開をして下さい。
- 全国で200を越す地方自治体が、周辺事態法案に反対、もしくは慎重審議を求めて決議をしたり、国へ要請をしたりしています。
愛知県はこの法案をどう受けとめているのでしょうか。
少なくとも、戦争反対の立場で、国の独走を許さない声明なり、地方の意志を尊重するようにという要請なり、あるいは自県の職員に強制させられないという意志なりを国に示すべきではありませんか。
戦争協力法案に対する県の立場を明らかにして下さい。
以上
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