今こそイラクからの撤退を実現していただくための申し入れ書(2007年1月27日) |
航空自衛隊小牧基地司令 浮須一郎様
隊員の皆様
浮須一郎基地司令、隊員の皆様、本年最初の申し入れに参りました。よろしくお願いします。
すでに防衛庁は省になり、久間長官は防衛大臣になり、皆様の海外任務は選択の余地のない本任務となってしまいました。これを食い止めることが出来なかった私たちに無力感がないとは言いません。イラクはやはり遠いところの出来事なのでしょうか。世間の関心が急速になくなりつつあることを街頭でのチラシ配りを通してひしひしと感じています。毎日の暮らしに追われる庶民にとって、空自隊員200名の皆さんが現地でいかに大変な任務についているかと言うことなど、我関せずなのでしょうか。これに反比例して、安倍政権の発言はますますエスカレートするばかりです。12日のブリュッセルNATO本部で安倍総理は次のように発言しました。「今や日本人は世界の平和と安定のためならば、自衛隊を海外に出すことをためらわない」と。NATOが今、アフガニスタン派兵問題を最優先課題にしている軍事機構であることを承知の上の発言です。また、24日、塩崎官房長官はネパールに自衛隊派遣を検討して行くと述べています。内戦からやっと一時休戦になったに過ぎないというのに。
人々の無関心と憲法を無視する日本政府の狭間で、浮須指令や隊員の皆様、そして私たちも振り回されているというのが偽らざる現状ではないかと思います。こうした中でも、現地の隊員の皆様の過重な負担が瞬時もやむことはありません。また、それを思えば私たちの活動を支援してくださる人々の声も、決して多くはないと言いながら、絶えることはありません。ブッシュに強いられている現地のギリギリの状況を考えると、気を取り直して今年もまた、日本政府がイラクから撤退を決断するまで、浮須司令や隊員の皆様に一日も早い撤退に向けた決意をしていただくことを願って、私たちピースアクションは申入れを繰り返し、要求し続けたいと思います。
さて、皆様すでにご承知かと思いますが、久間初代防衛庁長官が24日、「開戦の判断が間違っていたと思う」と、ブッシュ大統領のイラク開戦を批判しました。「日本は支持ではなく、理解するというくらいが一番いいと当時発言したが、今もその心境に変わりはない」と、当時の小泉政権の方針に疑問を示しました。事務所問題で週刊誌に新たな疑惑を書かれる中、国会が始まる一日前を選んでの発言です。例え翌日に「政府の決めたことに従う」と釈明したとしても、新防衛省トップの言葉であることに違いはありません。2月中旬来日するチェイニー副大統領を意識し、2月下旬にKC767空中給油機の引きわたし式で皆様と対面することを意識しているはずです。遅きに失したとはいえ、全自衛官とその家族に責任を持つ防衛庁長官を二度も務めた人の、考え抜いた上の重い発言だと私たちは受け止めています。これは「開戦は間違っていた。その間違いを支持して自衛隊を派遣したことも間違いだった」と言う論理になります。間違いを正すのであれば、すぐに撤退するという結論しかありません。
すでにブッシュの新しい作戦がバグダッドで始まり、これに対してイスラム聖職者協会が「民族皆殺し(ジェノサイト)作戦が始まった」と非難しています。700万人の大都市バグダッドの北側からクルド民兵が、南側から増強されるアメリカ軍が包囲し、バグダッドを第二のファルージャにするべく攻撃する。そして、勝利する。これが10日に発表されたブッシュ新戦略の核心です。大統領はもう妄想の世界に入っているとしか思えません。今までの失敗を取り戻すためにもう一度チャンスをくれと議会に呼びかけたのが23日のブッシュ一般教書演説です。若い兵士達を更に戦死させ、バグダッド市民を無差別に殺すチャンスをもう一度与えてくれと言っているのです。こんなことのために、皆様のC130を利用させてはなりません。バグダットへの離着陸がどんなに危険な任務であるか、私たちには伝わっています。危険があってもそれに値する価値のある任務ならば絶えられるかもしれません。しかし、日本政府が皆様に押し付けているのは、日本の防衛とは無関係な、ブッシュ一派の大義のない「負けいくさ」に協力し、バグダッドから永久に恨みを買うことになる任務なのです。
アメリカ軍は、今やベトナム戦争敗北時と同じプロセスに入っています。1968年1月のベトナム民衆のテト攻勢による敗北にも関わらず、「もう一度大きな勝利を得るまでやめられない」と言って、結局5万人の戦死者を出して撤退した、あのプロセスです。バグダッドという巨大な年ジャングルで勝利するためには皆殺し作戦を覚悟せざるを得ません。そんなことに皆様を協力させるわけにはいきません。そんなことに県営空港の滑走路を使わせるわけにはいきません。
旧防衛庁は、イラクから帰った隊員達の自殺率は、そうではない隊員達の2倍であると国会で認めています。昨年11月、空自浜松基地の若い隊員が自宅で自殺したと報道されました。基地内での上官による暴行の繰り返しが原因とされています。浜松基地からも空自隊員がイラクに派遣されています。責任ある立場の人たちは、若い隊員の皆様はどう考えているのでしょうか。基地の外に向けて自由に発言していただきたいと思います。マスコミに話しかけてください。私たちに話しかけてください。現在の憲法がある限り、皆様と私たちを含めた基地の外の人々との間には話し合える共通の土俵があるのです。交戦権をもつ人々とは安心して話すわけにはいきませんが、交戦権のない皆様とは安心して話しができるのです。今こそ皆様の苦労や困難を世間に伝えるべきだと思います。2月下旬に小牧基地に来られる久間大臣に、せめて「いつまでアメリカに付き合うのか」と質問してください。これは直訴ではなく、穏やかな質問行為に過ぎません。
1月20日バグダッド近辺で攻撃用ヘリ「ブラックホール」が墜落し、12名が死亡。各地の戦死者をあわせてこの日だけで24名の戦死者を記録しています。旧式ロケット弾に対してフレアーをばら撒いても通用しません。妄想の世界に引きずりこまれる前に、一日も早い撤退の決意を固めてください。
プロである皆様に長々と述べましたが、最後にお願いをいたします。妻であり、母である第11次派遣隊の女性パイロットのことが気がかりです。出発された以後の消息を私たち県民にぜひともお知らせください。
以上、よろしくお願い致します。
2007年1月27日
有事法制反対ピースアクション