有事法制反対ピースアクション

イラクからの撤退を求める申し入れ書

航空自衛隊小牧基地  上田基地司令様
隊員の皆様

 今月もまた、上田基地司令と隊員の皆さまに、私たちの声を届けにまいりました。
イラクでは、昨年末の国民議会選挙を経て、当初1月にも予定されていた正式政府が5月20日に発足しました。しかし、治安を担当する閣僚が決まらないままの見切り発車で、政府がめざす「治安回復」と「国民融和」の実現はまだまだ不確定です。正式政府発足後も、イラク市民の犠牲者が絶えません。ユニセフは、開戦前の2002年には深刻な栄養失調の子どもが全体の4%だったのが今では9%、2歳未満では12〜13%にものぼるという調査結果を発表しています。治安の悪化が、一番弱い立場の子どもたちに深刻な影響を与えています。また、湾岸戦争や今回のイラク攻撃でアメリカが使った劣化ウラン弾によるガンや白血病の被害も深刻な事態になっています。

 これらの原因は全て、米英の「大量破壊兵器がある」「フセイン政権とアルカイダガ関係がある」などというでたらめの理由により起こされたイラク攻撃とその後の占領政策の失敗にあります。イラク攻撃開始前、十数年に渡る国際社会からの経済封鎖の中でかろうじて生き延びてきた人たちに、また新たな犠牲を強いたのが、米英と多国籍軍として参戦している国々です。言うまでもなく小泉首相は、いち早く米英のイラク攻撃を支持し、この侵略と不当な占領に加担しました。「人道復興支援」というならば、自衛隊の派兵ではなく経済制裁で疲弊をしているイラクの人たちに直接役に立つ支援をすべきでした。

 陸上自衛隊は7月にも撤退が行われようとしていますが、この小牧基地から派兵されている航空自衛隊は、バグダッド空港などへ活動地域の拡大が既定方針として言われています。しかもその任務は「安全確保支援」で、米軍の物資や武装米兵の輸送です。これらは明らかに米英の兵站=後方支援活動であり、イラクの人たちを殺す側に立っています。
5月6日にはイラク南部バスラで駐留英軍のヘリコプターが墜落し、4人が亡くなり、19日はC130輸送機が使用をしているタリル空港に迫撃砲3発が着弾しています。空自が活動をする地域もまた安全ではないのです。

 一向に治安は回復されず、派兵の延長が示唆される中、繰り返し行かざるを得ない隊員の皆さまや家族の皆さまには心配の種は尽きないと思います。しかし、その声を公にすることはなかなか難しく、時には様々な厳しい不利益を被ることを覚悟しなければならないとは思います。隊員の皆様の中には「世界平和に貢献したい」「世のためになる仕事をしたい」など様々な理由で自衛隊という職業を選択されたと思います。しかし、上田基地司令や隊員の皆さまに踏みとどまって考えていただきたいのです。

 5月14日、自民党の防衛族の1人で、防衛政務次官、衆院安全保障特別委員長などを歴任した箕輪登氏が亡くなられました。箕輪氏は、自衛隊のイラク派兵は憲法や自衛隊法に違反をすると、札幌地裁に裁判を起こしています。自衛隊や国防に対する考え方は、私たちと相容れないものはありましたが、その箕輪さんでさえ、自衛隊のイラク派兵という現実に対し、裁判という手段で何とか止めたいとまさに命を振り絞って闘ってこられました。そこまで憲法は破壊されつつあるということです。戦後これまで日本は紛争や戦争で一人の命も奪ってきませんでしたし、自衛隊員もまた一人も殺されませんでした。それはひとえに憲法があるからです。そのことを肝に銘じて、今進んでいる憲法の破壊=イラク派兵という事態を考えていただきたいのです。箕輪さんが残された遺言を心にしっかり受け止めてください。全ての自衛隊がイラクから撤退するように意見具申をしてください。

 「何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい 平和的生存権を負った日本の年寄り1人が やがて死んでいるでしょう。やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国が どうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして 欲しいなとそれだけが本当に私の願いでした。」

以上

2006年5月27日
     有事法制ピースアクション


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