2006年1月28日、航空自衛隊小牧基地への申入れ行動を行いました。小牧基地の渉外室長との間で、来年度導入される空中給油輸送機配備のついてや航空自衛隊が現地で行っている任務についてやり取りをしましたが「把握していない。いえない」という回答でした。
現地部隊に対し、イラク特措法の安全基準を厳守させ、C130輸送機の一刻も早い撤退を求める申入れ書 |
航空自衛隊小牧基地 上田 益三 基地司令様
隊員の皆様
今年2006年こそ小牧基地にお邪魔する必要がなくなることを願って、私たちは活動と続けてまいりました。しかし、今年後半以降、私たち市民にとっても、上田基地司令や隊員、家族の皆さまにとっても、更に過重な負担と危険な事態を、小泉政権が押し付けてくることがはっきりしてきました。撤退の出口が見えないまま、県営空港の滑走路が、専守防衛ではなくアメリカのイラク占領のために更に1年使われ、陸自撤退以降、皆さまの小牧基地が国内唯一、最大の協力基地になってしまうことを絶対認めるわけにはいきません。
イラクに対するアメリカの行動は、どんな言葉で飾ってみても、侵略・占領以外のなにものでもありません。毎日若いアメリカ兵が殺され続けています。その十倍以上のイラク市民が殺され続けています。もう充分ではないですか。上田基地司令はじめ隊員の皆様、ご家族の皆様も、もう充分勤めを果たされていると思います。もうこれ以上、よその国の人々に対する殺人の協力者であることを辞めましょう。この共犯の第一の責任は小泉首相にあります。命令で動いているとはいえ、責任の第二は皆様です。税金で協力がなされている以上、それをストップできない私たち日本国民に第三の責任があります。少なくとも、毎日殺されつづけているイラク市民は、占領下において、そう判断せざるを得ないでしょう。
私たちは一日でも早く共犯者であることを辞めたいのです。私たちは、自分たちだけが正義の意見を持ち、何のやましさもないなどと認識してはいません。上田基地司令はじめ隊員の皆様、どうか私たちの心情を率直に受け取ってください。話し合える共通の土俵はまだあると信じて、新年最初の申入れに参りました。
さて、皆様もご承知のようですが、日本に対して強く派遣延長を要求してきたブッシュ政権は、その裏で密かに撤退準備に入り、すでに16万人体制から2万2千人を撤退させました。この撤退の流れは、部分的であれ11月の中間選挙まで続くと判断されます。支持率低下を回復するために「勝利するまでイラクにいつづける」と言い続けていた自分の言葉と反対のことをやらざるを得ないほどブッシュ政権は追い詰められていることになります。何の目的で闘っているのでしょうか。戦争の大義名分を信じられなくなった軍隊は、急速にその戦闘力を失ってしまいます。ましてや他の部隊の撤退が始まっていると知れば、ここで犬死はしたくないと思うのは当然でしょう。指揮官も兵隊も浮き足立ってしまいます。サマワの陸自の宿営地での引きこもりを笑っていたアメリカ兵は、もう笑う余地はありません。
こうした状況の中で、アメリカ兵の戦死はとどまらず、1月に入り、7日・13日・16日と、バグダット以北でロケット弾による米軍ヘリの墜落が連続しています。小泉首相と防衛庁は、この軍事情勢を承知しながら、C130輸送機の輸送範囲の拡大をブッシュ大統領に確約したわけです。イラクの武装勢力側からは、米兵と銃をイラクに運ぶための「米軍の足」とみなされるC130輸送機は、今年後半以降の陸自撤退以降も、更に危険な任務を押し付けられることになります。
今の憲法に基づく自衛隊法が改悪されていない以上、皆様のイラクでの任務は自衛隊法第三条の本来任務である「わが国防衛」とは関係ない雑則任務であり、命令が限度を超える過重な負担になったとき、「本来任務に戻せ」と上部に要求することは、法的にも人道的にも正当な行動です。また、現地部隊に対し、「イラク特措法第8条第5項」を厳守し、危険が予測される場合、迷うことなく活動を休止することを厳命することは、多くの部下の命を預かる司令官の最大の責務であると私たちは理解しています。また、特措法第9条により、小泉政権と防衛庁長官に対し、安全確保義務の厳守を要求することは、命に関わる任務と命令を受ける皆様にとっては、当然の権利であると私たちは理解しています。不測の事態が起きる前に、上田基地司令にはその責務を実行していただき、また、隊員の皆様にはその権利を行使していただきたいのです。皆様の最高司令官である小泉首相は、いまだにブッシュ大統領の言うことを聞いていれば何とかなるだろうと考えています。現地の軍事情勢に関係なく、思いつきの政治判断で、皆様に命令を出し続けています。今国会中に、小泉首相は、自衛隊法の第3条を変えて、海外任務を「本来任務」に格上げする法案の準備に入っています。本来任務に余裕があり、かつ平時のみ活用できるという付随任務であった「海外派遣」が、本来任務になることで、全ての縛りをとくことになります。つまり、志願だとか意見を聞いてとかいう手続きを踏まないで皆様に命令を下すことができるようになります。
靖国神社参拝問題及びアメリカ牛肉輸入問題など、小泉首相のなすこと全てが事態の悪化を招いていますが、9月を待たず責任を放棄してしまいかねません。残った重荷は誰が背負うことになるでしょうか。自衛隊員をイラクに派遣した最高責任者は、せめて全ての自衛隊員の撤退を見届けてからやめるべきです。首相が自衛隊員の皆様全員の無事な撤退を見届けることなく、隊員や家族の皆様に対し、自らの政治判断によって多大な負担をかけたことにも触れずに引き下がることは許されません。
私たちが申入れの中で何度も引用させていただいている溝口基地司令の次の言葉「平時における活動が海外派遣の大原則であり、アメリカが勝手にはじめた戦争に、日本はどこまで付き合うのか」という問いに、今こそ真剣に向き合わざるを得ないときだと考えます。
安全地帯からのお気楽な物言いと、私たちを見ていらっしゃるかもしれませんが、基地の外でのこのようなささやかな申し入れだけでも、実は、かなりの決意を必要とする時代になっています。皆様も制服を脱げば私たちと同じ市民・県民である限り、諦めることなく、皆様の無事な撤退が実現するまで、今年もまた繰り返しこの正門前にお邪魔するつもりです。
以下上田基地司令に対し、申入れを致します。
1. 私たちの思いを知っていただくために、申入れ書を他の隊員の目にとまるよう基地内に掲示してください。
2. 隊員の皆様の意見が、私たち市民・県民に届くように、何らかの配慮をしてください。
3. 現地部隊に対し、特措法8条5を厳守するように強く命令をしてください。
4. 小泉首相と防衛庁長官に対し、特措法第9条のいっそうの厳守をお願いしてください。
5. C130輸送機の一刻も早い撤退に向けた準備を開始するよう意見具申してください。
以上
2006年1月28日
有事法制反対ピースアクション