上田益三小牧基地司令様
私たちは「有事法制反対ピースアクション」という市民団体です。私たちはこれまで、前任の溝口司令に対して、何度となく申し入れをおこなってきました。私たちの切実な願いを聞いていただき、想いを届けるためです。これまで私たちが届けた申し入れ事項の多くは、残念ながら実現してはいません。それでも、私たちの想いだけは、基地司令をはじめとする自衛隊員のみなさんの届いていると確信しています。そんな気持ちで「申し入れ」を続けています。上田基地司令も前任の基地司令同様、真摯に私たち市民の声に耳を傾けられるよう切にお願いいたします。
今日も、イラクから自衛隊を撤退することをお願いに来ました。
アメリカのパウエル国務長官は、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったことを認めました。いったい何のために、多数のイラクの市民が、子供が、女性が、そしてお年よりが、殺され傷つけられたのでしょう。まちがいだったというのです！この不正義は徹底して糾（ただ）されなければなりません。なぜブッシュ大統領の責任は問われないのでしょうか？なぜ米軍はいまだにイラクにいるのでしょうか？小泉首相はアメリカをいち早く支持し、自衛隊を派遣しました。しかし大もとの前提が間違っていたのです！小泉首相と政府の責任が問われなければなりません。自衛隊はひき返さなければなりません。
また、アナン国連事務総長は、アメリカのイラクへの戦争は違法だったと述べました。小泉首相がどうむきになっても、アナンさんの認識が世界の認識であることはまちがいありません。アメリカに追随して、自衛隊派遣したことにより、イスラム諸国では反日感情が広がっています。イラクでは日本人人質事件をみるように、日本と日本人は「敵」となってしまいました。アフガニスタンでは日の丸が焼かれたそうですし、穏健なイスラム国においても、人道援助での入国さえ、日本人にビザが降りにくくなったというような事実もあります。これが自衛隊の「人道援助」への各国の反応です。皮肉なことに、自衛隊のイラク派遣は、長年善意で積み重ねてきた日本人の草の根の人道援助と平和活動の努力を貶（おとし）める結果となりました。あるNGO団体は自衛隊が来ると反日感情が高まるので、撤退すると言っています。世界の人たちの日本と日本人、そして平和憲法への信頼がゆらいでいます。日本の国連安保理の常任理事国入りも、「アメリカの票が一票増えるだけ」というのが世界の目です。
自衛隊員のみなさんが急迫した状況のなかで過酷な任務に就いている事実は忘れてはなりません。自衛隊員の「イラクの人の役に立ちたい」という気概を否定してはなりません。しかし、これが現実です。イラクへの自衛隊派遣は取り返しのつかない過ちだったと、私たちは思います。
しかしながら、イラクでは、「暫定政権」移譲後の今も、依然として、米軍の攻撃と反米組織の抵抗が終わることがありません。そして、自衛隊は、イラクの反米抵抗組織から今にも攻撃されようとしています。政府はサマワの迫撃弾の攻撃は散発のものだから、まだサマワは非戦闘地域だなどとしています。自衛隊員が殺されるかもしれないという時に、こんな対応なのです。状況を見れば、事態が急迫していることは明らかです。しかし自衛隊が、イラクで戦争をすることは許されていません。戦ってはいけないのです。直ちに撤退する以外道はないのです。私たちはそう考えます。
今、政府は、次々に過ちを重ねています。大義なく自衛隊を派遣し、人道援助を言いながら米軍を支援し、多国籍軍へ参加し、交戦権のないまま自衛隊員を戦わせようというのです。私たちは、過ちを正すことなく、それを積み重ね、ついに地獄へとつき進んだ不幸な過去の歴史を持っています。私たちは「再びの道」を歩いてはなりません。
上田基地司令様。航空自衛隊は創立５０年です。原点に立ち戻り、悲惨な過去の歴史に学び、過ちを積み重ねることなく、イラクからただちに引き返すべきです。
オリンピックやプロ野球の記事に押しやられ、イラク関連の新聞記事は小さくなっています。そこには毎日何十人、何百人の死を伝えています。命の価値が軽んじられています。自衛隊員やそのご家族は今何を思っておられるのでしょうか。イラクの人たちの悲しみと怒りはどれほどのものでしょうか。私たちは、これ以上人が命を落とすことのないように、悲しみが広がることのないように、願っています。すべての人が心をとりもどすように、願っています。上田基地司令が、私たちのこうした想いを汲んでくださり、自衛隊のイラク撤退の意見を上申されるよう切にお願いします。事態は急を要します。
自衛隊は撤退してください！
一、自衛隊の派遣地域は「非戦闘地域」ではないので、今すぐ自衛隊を撤退すること。
二、１２月１４日に期限の切れるイラクへの自衛隊派遣を延長しないと表明すること。
以上のことを、上田基地司令より小泉首相、石破防衛庁長官に意見具申してください。
２００４年９月２５日 有事法制反対ピースアクション