航空自衛隊小牧基地司令への申入書 |
申し入れ書
航空自衛隊小牧基地司令 溝口博伸様
私たちは、名古屋の小さな市民グループですが、この半年あまり、力の限りを尽くして、一日も早くイラクから自衛隊を撤退させるよう、繰り返し小泉政府に求めてきました。
しかし、小泉首相の独断による「自衛隊の多国籍軍への参加」を前にして、いまや当事者である基地司令を始め、隊員の皆さまに直接申し入れる以外にないとやって参りました。今月末、6月30日を以って、皆さまは多国籍軍のアメリカ軍司令官の指揮下に置かれることになります。今まで一人も殺さず、殺されずに「専守防衛」の任務を遂行してきた自衛隊が、発足50年目の7月1日を目前にして、多国籍軍に参加すること。このような重大な局面を迎えて、本日6月27日、やむにやまれず申し入れに参った真意をご理解いただきたいと思います。
6月23日、韓国人、金 鮮一(キム ソンイル)さん殺害という悲報を受けて、自身も人質の一人となった北海道の今井紀明さんは、「主権移譲前夜の今、米国を中心とする占領当局への反感が凄まじい勢いで広がっている。イラク全土はひどい戦争状態で、国連決議1546号による国連統治に切り替えても、沈静化するとは思えず、危険は日本の自衛隊にも及ぶ。もう占領政策の誤りを考え直すべきだ」と、マスコミにコメントしています。
はっきりさせておかねばならないことは、米英が、でっち上げの理由で、小国イラクを攻撃し、侵略し、今なお殺しつづけているということです。占領されているイラクの人々が抵抗するのは、侵略・占領への抵抗権として国際的にも許されていることです。6月30日、主権が暫定政権に移譲されますが、抵抗勢力はそれを認めず、米英軍の傀儡政権とみなして抵抗が一層強まることは必至です。こんな状態の中で、皆様が多国籍軍に参加することになるわけです。しかも、抵抗勢力の攻撃基準がより鮮明になってきました。米英軍に協力している部隊かどうかによって、攻撃対象を絞ってきているということです。
サマワに駐留する陸上自衛隊が孤立しないために、オランダ軍の7月15日駐留期限切れを前にして、外務省は駐留延長願いをオランダ政府に働きかけたと言います。
では、クウェートを中心に200人が活動する皆様の航空自衛隊はどうでしょうか。防衛庁は6月中旬に、C130輸送機による輸送業務を発表しました。これまで陸自隊員750人、米兵85人をクウェートからイラクへ送ったという内容です。抵抗勢力は、日本の空軍がC130を使って武装米兵をイラクへ送り込んでいると理解しています。更に、6月30日以降は、米軍指揮下の多国籍軍の輸送部隊として認知される事態を迎えるわけです。小泉首相は、「今までと何ら変わりません」と繰り返
し主張していますが、なんと独りよがりの無責任な発言でしょうか。問題は、イラクの人たちがどう見るかということで、何ら変わりがないなどと言えるはずがありません。
6月22日、C130が利用するタリル飛行場近くで、自動車爆弾による爆発があったと防衛庁に連絡が入りました。サマワ南方約100キロの飛行場です。離陸着陸地点を制圧されたらひとたまりもありません。これがイラクの現状です。
今、陸自より空自の方が、危険性が高いというのが私たちの認識です。すでに皆さま充分ご承知のことを長々と述べましたが、こうした事態の進行を見ると、小泉首相は、意識的に皆さまを一歩一歩「殺し、殺される」状況へと追いやっているとしか考えられないのです。そこをわかっていただきたく、申し上げました。
現地の実情がほとんど伝わってきませんが、砂嵐や気温50度を超える猛暑の中、隊員たちが黙々と作業をしているというニュースを見ました。一日も早く撤退をして欲しいと願う私たちは、小泉首相の独断決定が現場の隊員に更に大きな困難を押し付けるだけであると思っています。憲法9条を持ち出すまでもなく、多国籍軍参加にいかなる法的根拠もありません。重大な問題が閣議決定だけで済むのであれば、法律も国会も必要ありません。
私たちは、参院選での主権者の審判を待っているわけにはいきません。溝口司令も制服を脱げば、私たちと同じ国民・市民の一人です。部下の皆さまも同じです。私たちは市民である皆さまに呼びかけます。また、命令に従わねばならない立場もわかっているつもりですが、意見具申という制度と権利とが、旧日本軍にすらあり、それを行使した軍人もいたわけですから、1700人の部下を持つ立場と、一人の市民としての立場、主権者としての立場との双方から、多国籍軍に参加することの意味と、そこから生まれる重大な危険性について、十分に部下全体に話をし、意見を求め、それを尊重し、勇気を持って上司に対して意見具申をしていただきたいのです。部下の安全、生命を守りきることが上官の第一の責務だと私たちは考えます。
皆様から見れば当該ではない立場で何を、と思われるかもしれませんが、だからこそ精一杯声をあげなければなりません。東京では、反戦平和のビラを官舎に入れただけで逮捕され、アメリカ大使館に平和を呼びかけただけで家宅捜査をされるという時代になっています。
最後になりましたが、私たちは、小泉政権に対し、さらに粘り強く、一日も早く撤退命令を出すことを要求します。新しい部隊を送らないように要求します。イラクの人々の現状、6月30日以降の隊員の皆さまのことを考え、ここ、基地正門前に立つことにしました。
平和を願い、殺し殺される愚かな繰り返しを断つために、市民の責務として私たちは以下の申し入れを致します。
1) アメリカが指揮する多国籍軍に参加する危険性を十分に隊員に周知してください。その上で、部下の選択を尊重し、何らそのことによる差別待遇のないようにしてください。
2) これ以上の「海外派兵」は、本務である防衛任務に支障のあることを、小泉首相と石破防衛庁長官に対し、意見具申してください。
3) 隊員もイラクの人たちも「殺すな、殺されるな」。そのためには、一日も早くイラクから撤退してください。
今後も市民の声を聞いてくださることを切に願って以上、申し入れます。
2004年6月27日
有事法制反対ピースアクション