1992年12月、韓国・光州市にある朝鮮大学の地下食堂にて。周囲をとりまく円形の壁一面に描かれた壁画には、力強いタッチで、南北の統一を喜ぶ民衆の歓喜とそれを阻むものに立ち向かう若者や労働者・農民・子どもを背負ったオモニの姿があった。
機動隊に立ち向かうオモニのクワを持つ節くれだった手と鋭い眼差しが、この国の人々の並々ならぬ決意を表わしている。
南北統一を阻むもののひとつとして描かれた「自由の女神」に竹槍を突き刺す若者は、中国の天安門で、ふぬけた「自由」を夢想し、張りぼての「自由の女神」をシンボルとした若者とはちょっと違うようだ。その話をソウルの慶煕(キョンヒ)大学への留学経験のある人に話したら、彼女が留学中、大学の正門に星条旗が敷いてあって、それを踏まなければ構内へ入れない仕掛になっていたと教えてくれた。
大学が冬季休暇中とあって、食堂はテーブルやイスが壁画周辺に無造作に積み上げられ、照明設備か、暖房設備かの工事中だった。(写真/遠藤京子)