翌1995年8月には、朝鮮語版『さだ子と千羽づる』が出版されました。私たちは、日本語版制作のときの趣旨から、第二ステップとしての外国語版は、まずアジアの国の言葉、とりわけ朝鮮語版を作りたいと考えました。日本政府の植民地支配は、朝鮮民族の方々に現在まで続く取り返しのつかない被害をもたらしていす。また日本に強制的に連れてこられたなかには、広島・長崎で被爆された方がたも数多くおられます。それが、朝鮮語版制作の最大の理由でした。
現在、私たちはこの朝鮮語版の普及活動をおこなっていますが、日本人が原爆という「被害」の事実について語ることへの抵抗は大きく、なかなか広がっていないのが実状です。しかし私たちは今後も、当然、問われねばならない日本の加害責任をきちんと追及しながら、同時に私たちを脅かしつづけている核兵器の恐ろしさをも訴えていきたいと思っています。
『さだ子と千羽づる』英語版1996年8月6日発行
1995年8月刊行の朝鮮語版と当時に出版する予定だった『さだ子と千羽づる』英語版の作成は、翻釈を依頬していた欧来人たちとの間で「原爆観」、「英語という言語の世界支配」の問題に関する見解の対立から、出版が延期になっていました。
しかし新たな翻訳協力者も見つかり、英語版“SADAK0 AND HERSENBAZURU”が、できあがりました。
英語版の本文は、滋賀県立八幡商業高校を1994年に卒業した生徒のみなさんが、当時の授業で英訳に挑戦したものを下に、SHANTIのメンバーが協力して完成しました。より若い世代との共同作業ができたことは、この本の主旨から言っても、たいへん嬉しいことでした。あらためて、みなさんにお礼申し上げます。
英語版制作過程で起こったできごとについては、オーロラ自由アトリエ発行の『蜚語』第16・17号で特集しています。興味を持たれた方は、ぜひお読みください。