季刊総合雑誌「批判精神」第5号


特集/沖縄が解放されるとき

《徹底対談》言いたいことの何もない日本に向かって…………新川明・山口泉
 『反国家の兇区』『新南島風土記』『琉球処分以後』『日本が見える』等で名高い沖縄の「反復帰」の思想家・新川明氏に、戦後生まれの日本人として作家・山口泉氏が聞く。欺瞞的なサミット開催、高良倉吉氏ら琉球大学三教授による新たな日本への同化思想「沖縄イニシアティブ」の登場、そして「守礼の門」二千円札発行によって最終的に完成されようとしている日本への「再併合」の状況を撃つ新川氏の「沖縄」への思いは深い。氏の新著『沖縄・統合と反逆』にも示された戦後半世紀余りに及ぶ透徹した思想的営為が、分かりやすく全面展開される。20世紀末、沖縄の最良の知性が贈る、21世紀・沖縄(と日本)への痛切なメッセージ。31ページ、43000字に及ぶ徹底対談。
【対談の主な内容】■日韓民衆連帯と日沖民衆連帯■戦後日本の「平和思想」のどうしようもなさについて■サミットの何が問題か■沖縄に「連帯」しに来る人々の不快について■「反日」思想はいかにして可能か■富村順一氏の東京タワー占拠事件■靖国神社のおぞましさ■「沖縄の心」はどこにあるか■県知事選のほんとうの問題点■大田昌秀知事の「応諾」こそがターニングポイントだった■『沖縄の自己検証』批判■そして「沖縄イニシアティブ」が出てきた■まず「日本国憲法」への幻想を棄てること■「反復帰」論と「独立」論の違いについて■新崎盛暉氏への反論■「琉球共和社会憲法草案」について■「情念」こそが沖縄人を支える■波照間永吉氏の八重山祭祀歌謡研究■伝統文化と普遍的人間性■共同体と自立した個人■民族文化をどう捉えるか■「沖縄」が日本によって商品化される危険性■70年の国政参加選挙について■新たな文化的同化主義への対処■表現素材としての日本語と沖縄語■「クレオール」的なるものとは■小林秀雄を否定しきれなかった日本文学の限界■大岡昇平をめぐって■大城立裕氏の現在について■文学と文学賞をどう考えるか■新しい沖縄文学の可能性について■大江健三郎氏とのかかわり■絶えまない自己確認を続けること

【あらかわ・あきら】 ジャーナリスト。1931年、沖縄生まれ。55年琉球大学を中退して沖縄タイムス社入社。同社八重山支局長、『新沖縄文学』編集長、『沖縄大百科事典』編集長、編集局長、社長、会長を勤め、95年退任。著書『新南島風土記』(78年・大和書房=「毎日出版文化賞」受賞)『琉球処分以後』(81年・朝日新聞社)『反国家の兇区』(71年・現代評論社/96年・社会評論社)『沖縄・統合と反逆』(00年・筑摩書房)ほか。
【やまぐち・いずみ】 作家。1955年、長野県生まれ。東京藝術大学を中退して文筆活動に入る。著書『旅する人びとの国』(84年・筑摩書房)『世の終わりのための五重奏』(87年・河出書房新社)『アジア、冬物語』(91年・オーロラ自由アトリエ)『悲惨鑑賞団』(94年・河出書房新社)『「新しい中世」がやってきた!』(同・岩波書店)『ホテル・アウシュヴィッツ』(98年・河出書房新社)『永遠の春』(00年・同)ほか。

■その他の特集内容■
◆沖縄かがやけ! 御万人のイニシアティブで!……太田武二
●在関東沖縄人として琉球・沖縄文化を通じ、基地撤去などを訴える「命どぅ宝ネットワーク」を担う筆者が、現在の沖縄の閉塞状況を問う。
◆沖縄サミット《苦悩怪談》……小屋敷琢己
●高良倉吉らによる「新たな同化思想」を批判し、また日本のメディアにあふれる安易な沖縄論を完膚なきまでに痛罵する。気鋭の研究者による全面展開。
◆沖縄独立論の水準……真久田正
●30年前、衆議院傍聴席から、返還協定反対を叫んだ沖縄青年同盟3名のうちの1人である筆者が当時を 振返りつつ、今、沖縄に必要な真の自立を熱く説く。
◆韓国での米軍問題熱風……呉珍娥(宮内秋緒/訳)
●日本以上に深刻な韓国での米軍犯罪を告発する市民運動の現場からの報告。韓国と沖縄との連帯の可能性を探る。
◆天皇制は退け……在日沖縄のオジサン・沖島正 
●自ら「在日沖縄人」と規定する筆者の切実な天皇制批判。
◆辺野古レポート……島宏史
●復帰前の1970年、基地の町で「コザ暴動」は起きた。その中心地・胡屋(ごや)十字路付近で暮らす若者の目に、現在の沖縄はどんなふうに映っているのか。
◆サミット直前の沖縄……新田選 
●事実上の戒厳令状況となった沖縄からの、重苦しい最新レポート。これでも「サミットは平和の祭典」か?
【巻頭エッセイ/批判の眼】井家上隆幸・渡辺武達・黒沢洋一郎

【その他の連載など】
◇ナカネヒデキの隅田川アナキスト会議……中根秀樹 
◇いまここにいる人たち 第4回……三井貴也
◇日常感覚「経済学ノート」……浜田甫 
◇神戸より―― 第4回……森下綱子 
◇数学と自由――湖畔数学セミナー 第15回……永島孝 
◇轍の跡――平均時速15キロの旅……小林中也 

【特別アピール】在日外国人「障害者」の年金訴訟に支援を
【米国滞在日誌】ゴアが来た!…… 安倍陽子
【詩】わたしの内を奔る火のために……李龍海
【連載童話】ムンペ 最終回……卞記子
【連載長篇小説】オーロラ年代記……山口泉
『蜚語』第24号……遠藤京子
 ▲物言わぬは腹ふくるるの業▲芸能界超井戸端会議▲ふりかけ通信

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