禁断の極秘文書・日本放送労働組合 放送系列
『原点からの告発 ~番組制作白書'66~』25

メルマガ Vol.25 (2008.04.08)

第3章 人と機構

3 もう黙ってはいられない
   ――サービス部門は訴える――

C 業務内容、業務形態への圧倒的な不満

3 改善がおざなりにされているサービス業務に対する不満

 現状に則さなくなったにもかかわらずその改善を行わず業務基準にある
からとか、機構上そうなっているからという理由で放置されたムダな業務
や不合理な業務形態がサービス部門にはたくさんある。

―― 映画用危機の管理の項に本部機器の保管(2)、撮影課への長期貸出(3)、という文句がある。ところが毎年購入された機器はただちに撮影課に渡され保管される。この際長期貸出しのかたちをとるのだが、これは半永久的貸出しで戻ってくるのは老朽化して返納する時である。従って(2)の保管は映画課ではありえない。また移動の激しい撮影機材を映画課の人間がどうしてチェックできよう。どうしてもこれは撮影課のデスク体制の中で管理されるべきである。従って(2)と(3)の項はけずり、撮影課に次の職務基準を設けるべきだ。①撮影機材の受入れ、保管、運用を行う。そしてこれを行うセクションを作り人員を配置すべきである。――

 生フィルム予算はかつて映画部が持っていて規制していた。しかし番組単価制が施行されるとともに各制作部課の担当になった。ところが依然として現物生フィルムの貯蔵、払出し業務を映画課が行っている。予算管理、使用量の計画性などの点からやはり各制作部総務が現物管理すべきである。また現像外注予算だけ切り離されて映画課管理になっているが番組単価制の精神からすれば当然各制作部への移行を研究すべきである。現像の窓口についても伝票や仕上りフィルムをわざわざ映画課を経由させる利点はあまりない。作業プロセスの単純化という点からも5現の窓口なりに一本化すべきである。(業4)――

 単純なプロセスなり一貫した作業過程を組織的に分割して担当させると
いう悪しき分業化が行われている。NHK的組織の複雑さという奴である。

―― 外部調達映画が放送されるまでにはデータ集め、試写、企画、提案、選考、編成、演出、放送といったプロセスがある。ところがデータと試写によってどんな映画があるかを知っているだけなのが映画課、提案、企画権のあるのがデータ不足の現場、編成方針は編成、予算を持っているのが計画管理、映画を選定するのが総局次長中心の選考会、購入の契約は用品課、実際にフィルムを通関、検査するのが映画課、それを受け取って演出放送するのが現場、終了したものを返却するのが映画課といったややこしさである。1行程の間に各局部課が入り乱れて各々の権限を行使する。データのある所に金と提案権なく、演出する現場は当てがいぶちを放送するという不満をもつ。映画は市場に出ているものだから速戦即決を要する。しかるに込み入ったプロセスのため小回りがきかない。編成権の独立独歩は作品の良し悪しはともかく、所定時間枠や長さや色彩云々という物理的属性を優先させたがる。(業4)――

 エラーや不正を出さないために相互チェックする利点は分るがこれではあまりにも船頭多くして……である。権限と責任の分断は仕事の充実感という点からもモラルを低下させる。このNHK的な組織の複雑さが組織の勇断を躊躇させる。トランジスター工場と違って放送産業は分業化するほどかえって優秀な作品のできる可能性は減少する。ほかにも細分化の非能率を訴えている。

―― 課ないし班の仕事が錯綜しているために資料の相関がうまくいかず利用者に不便をかけている。作成整理部門と貸出窓口の分離をなくし、4課のバラバラな貸出窓口を一本化することが望ましい。(業5)――

 サービス部門に特徴的なのは以上に述べたような不都合がなかなか改善
されないことに加えて、どこにも行き場のなくなった仕事が安易に押し付
けられてくるという二重苦である。

―― 本来の業務から離れている電送受信業務はむしろ外信部やTVニュース部においた方がいいのではないか。それでなければせめて自動化を採用して誰でも操作できるシステムにしてAP電等と同様に運営すべきである。さもなくば人員不足にますます拍車をかけ業務能率の低下をきたす。(業4)――

―― なぜ部の半数近い人間が著作権本来の仕事でない沖縄に対する番組提供業務をやならければならないのか……疑問にかられる。(業2)――

4 サービス部門の典型としての総務部

 そしてこの雑務一手受けたまわり所の代表が各局の総務部である。性格上他のセクションに押し付けにくいものは何でも総務部にもってくるという常套手段がとられる。元来がサービス部門である放送業務局の総務部は種々なはみ出し業務のるつぼである。

―― 総務部は元来その局の管理業務(給与、計理)を行う所であるがサービス部門たる放業局を総括する総務部には異質の存在ともいうべき業務、美術管理、スタジオ管理、放送料などのセクションがある。これは機構改革などのごとに迷子になって総務局に居候してきた部門である。(業1)――

 そして総務部は各部課との接触業務ばかりであるため色々な点で誤解されたりすることが多い。

―― 次に出た不平不満は一般職員が他部局の仕事を理解していないという不平である。これは3~4年ごとの頻繁な場当たり的機構改革にも原因があり。伝票の遅滞一つとってみても協会の研修制度の不徹底にも起因している。関連部局がスムースにいくためにも、もっと科学的な機構にすることや研修制度の充実化が望まれる。(業1)――

 場合によってはこの総務と他部門等との相互不理解から無意識のうちに結果として重大な規制行為を行っていることがある。

―― 経営の合理化の名の下に押し寄せる各種の圧力の受付としての機能を要求されて、知らず知らずに自由な制作活動をある意味で規制する役割を果たしているのではないかという疑問が生れる。そのためにも放送番組に対する理解を深めて自分自身の放送に対する主体性を確立してからスタートとする必要性を痛感した。(報10)――

―― 制作上の条件が他動的に決められてゆく現在、制作上の無理が生じPDの労働強化等が発生している。こうした無理を生じる手助けを我々がしていたことに気付く。番組への理解からではなく管理のサイドからのみ業務を行っていなかっただろうか。(報10)――

 いずれにせよ典型的なサービス部である総務部が業務の上からも、機構上も一番陽の当たらない下積みの取扱いを受けていたこと。そのことが種々の障害が生じてきたことを改めて思い起こしてみなければならない。