編集長の辛口時評 2006年2月 から分離

ホロコースト・イスラエル・ムハンマド風刺漫画騒ぎの因果関係

2006.02.06(2019.8.21分離)

http://www.asyura2.com/0505/holocaust2/msg/625.html
ホロコースト・イスラエル・ムハンマド風刺漫画騒ぎの因果関係

 昨年末、12月8日にイラン大統領がホロコーストを「神話」、「創作」、「作り話」だと宣言したが、その前段には、「イスラエルを地図から抹殺せよ」との発言もあった。イスラエルを認めないのはイランの国是である。

 年が明けて2月の初めからは、以下の朝日新聞の報道のような、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画の騒動となった。


http://www.asahi.com/international/update/0204/001.html
「不適切」とデンマーク首相 風刺漫画問題
2006年02月04日00時26分

 イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画を欧州各国の新聞や雑誌が掲載し、イスラム世界で激しい反発が広がっているのを受け、デンマークのラスムセン首相は3日、イスラム諸国などの大使ら70人以上と会談し、風刺漫画の掲載について不適切だったとの考えを示した。だが、漫画を掲載し、問題の発端となった同国の日刊紙ユランズ・ポステンが謝罪したことを歓迎するとしながらも、イスラム諸国側が求める国としての謝罪は拒否しており、事態は沈静化していない。

 ユランズ・ポステンが漫画を掲載した直後、ラスムセン首相は抗議を申し入れたイスラム諸国の大使11人との会談を拒否していたが、3日の会合にはこれらの大使も招いた。2日夜には、中東などで視聴者が多い衛星テレビ、アルアラビアに出演。イスラム教徒が侮辱されたと受け止めているとの認識を示し、「深い苦痛を感じる」として、事態の沈静化を図った。

 それでも騒ぎは拡大。デンマークを本拠とする乳製品会社は3日、イスラム世界で拡大している不買運動の影響で、毎日180万ドル(約2億1000万円)の損失が出ていることを明らかにした。


 風刺漫画そのものの発端は、昨年9月にデンマークの新聞、Jyllands-Postenの記事にある。この新聞は、12の戯画化されたモハメッドの姿を描き、その中の一つはターバンの中にある導火線に火のついた爆弾を頭につけていた。これに対してイスラム諸国で大きな怒りが広がった。

 この漫画を、ノルウェーのキリスト教原理主義者系の新聞Magazinetが、今年の1月30日に再掲し、それが広がったのである。

 昨年9月のデンマークの新聞は、いわば伏線で、今年の1月30日以降の騒ぎが、本格的な事件である。

 この中間には、このノルウェー紙の漫画再掲の直前、今年の1月25日のパレスチナ評議会の選挙でのハマスの圧勝がある。

 設立憲章で「イスラエルせん滅」を掲げているハマスの圧勝は、イラン大統領による「ホロコースト神話」、「イスラエルを地図から抹殺せよ」などの発言と呼応する。

 以下は日経の報道である。


http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060127NTE2INK0326012006.html
パレスチナ評議会選、ハマスが圧勝か・中東和平に影響も

 【エルサレム=森安健】25日投開票のパレスチナ評議会(国会に相当)選挙でイスラム原理主義組織ハマスが圧勝し、過半数を獲得したもようだ。ハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ氏は「全132議席中、70議席は獲得した」と表明。与党ファタハ(パレスチナ解放機構主流派)のクレイ・パレスチナ自治政府首相もハマス勝利を認め、全閣僚が辞表を提出した。

 ハマスは設立憲章で「イスラエルせん滅」を掲げ、米国やイスラエルが「テロ組織」と認定している。政権に参加するハマスがどういう姿勢をとるかで、中東和平交渉の流れは大きく変わる。パレスチナ中央選挙管理委員会は26日午後7時(日本時間27日午前2時)に公式結果を発表。これを受けてハマスは政権の運営方針などを明らかにする見通し。

 ブッシュ米大統領は26日朝、「米国の同盟国であるイスラエルのせん滅を憲章に持つ限り(ハマスは)和平の当事者にはなり得ない」と述べ、中東和平を巡ってハマスとは交渉しないとの立場を明確に示した。 (07:02)


 「ホロコースト神話」の動機は、「イスラエル建国」の異常な狂信にある。異常な狂信こそが、異常な神話の根源である。ホロコースト・イスラエル・ムハンマド風刺漫画騒ぎには、明白な因果関係がある。その根源に、「イスラエル建国」があるのである。

 「イスラエル建国」は、1947年の国連総会のパレスチナ分割決議を根拠としているが、イランやパレスチナのハマスは、この決議を認めていないのである。

 以下は、拙著『アウシュヴィッツの争点』の「パレスチナ分割決議」関連部分の抜粋である。


http://www.jca.apc.org/~altmedka/aus-31.html
『アウシュヴィッツの争点』
第4章:イスラエル・コネクションの歴史的構造
(その31) パレスチナ分割決議を強行採決した国連「東西対立」のはざま

 [中略]

 イスラエルという国家は、現地のアラブ諸国こぞっての反対をおしきって採択された国連決議によって建国されている。国家としての存立基盤が不確かなのだ。一九四七年にパレスチナ分割を決議したさいの票決は、賛成三三(アメリカとソ連をふくむ)、反対一三(全アラブ諸国をふくむ)、棄権一〇(それまでの委任統治国イギリスをふくむ)というきわどい結果だった。

 [中略]

 パレスチナ分割決議は、内容そのものも、当時の人口比率で約三分の一、国土の七%しか所有していなかったイスラエル側に約五六・四%の土地を配分するなど、問題点だらけだった。

 もともとパレスチナ地方に住んでいたユダヤ教徒の人口比率は、一九世紀半ばまで五~七%だったと推定されている。

 [中略]

パレスチナの運命を決定したのは、国連全体ではなく、国連の一メンバーにすぎないアメリカだった。パレスチナ分割とユダヤ人国家創設に賛成するアメリカは、国連総会に分割案を採択させようと躍起になった。分割案が採択に必要な三分の一の多数票を獲得できるかどうかあやしくなると、アメリカは奥の手を発揮し、分割反対にまわっていたハイティ、リベリア、フィリピン、中国(国府)、エチオピア、ギリシャに猛烈な政治的、経済的な圧力をかけた。ギリシャを除いたこれらの国は、方針変更を“説得”された。フィリピン代表にいたっては、熱烈な分割反対の演説をした直後に、本国政府から分割の賛成投票の訓令を受けるという、茶番劇を演じさせられてしまった」

 [中略]


http://www.jca.apc.org/~altmedka/aus-69.html
(69)終章:核心的真実

 [中略]

極秘情報暴露の「脅迫」というイスラエル建国の裏話

『ユダヤ人にたいする秘密の戦争』という六七〇ページの大著が一九九四年一〇月に発行されていた。

 [中略]

 アメリカ最大の財閥ロックフェラーは、ドイツ最大の財閥I・G・ファルベンとの協力関係を戦争中も維持し、影響下にある南米の石油のドイツへの輸送をつづけていた。

 中南米問題の調整役をホワイトハウスから請け負っていたこともあるネルソン・ロックフェラーの位置づけは、ことのほか大きかった。ヨーロッパの九票にたいして、中南米には一九票もあったのだ。

 ベン・グリオンらの脅迫作戦は基本的に成功した。だが、国連決議のつぎは戦争だった。


 国連総会の決議には、「強制力・拘束力」はないのである。
 以下は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の関連箇所である。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%80%A3%E5%90%88
国際連合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 [中略]
総会
 総会は、全加盟国で構成され各国が1票の表決権を有し、国際連合の関与するすべての問題を討議する。全会一致制で半ば機能不全に陥っていた国際連盟の反省から、総会の評決には重要問題については3分の2、一般問題については過半数で決する多数決制を取り入れた。ただし、総会の決議は加盟国または安全保障理事会への勧告までしか権限は無く、強制力・拘束力をもっていない
 [中略]
安全保障理事会
 国際連合では安全保障理事会の権限が強化され、軍事参謀委員会の助言に従って国連軍を平和維持のために行使する権限が与えられた、安全保障理事会の常任理事国である5大国が拒否権を持っているため、冷戦時代は紛争当事者でもある常任理事国同士の対立により効果的に機能できなかった。また、国連の主要機関の中で安全保障理事会の決議のみが、法的強制力・拘束力を持つ