送信日時 : 2001年 5月 9日 水曜日 11:09 PM
件名 :[pmn 14741] 25 億円宇宙旅行の男に鎮魂歌なし?
空想科学小説気違い「だった」木村愛二です。
米軍放送に入ってくる各種「無線電話」(日本での初期の表現)では、チトーとかのアメリカの大富豪の2,000万ドル宇宙旅行は、それほど派手ではないものの、事前と事後のトップ記事でした。ABCの時事解説、ポール・ハーヴェイは、「かつてソ連は、宇宙を資本家の遊び場にするのを許さないと豪語していたのに、われわれの反対にもかかわらず、云々」と、指を銜えて見ているのが悔しいという感じをも込めて、慨嘆していました。
ところが、それらの報道の中に、なぜか、私が即座に思い出したアメリカの人気作家、ハインラインの小説のことが一度も出てこないのです。もう手許にはないので、武蔵野市立中央図書館から借りてきました。『月を売った男』(The Man who sold the Moon)と題し、その題の中編(1953)を中心とする5編、創元文庫の本です。
ソ連が先駆けた宇宙競争の前の作品で、「月を売った男」との連作、「鎮魂歌」(Requiem)は、かなり有名で、アメリカの宇宙競争への応援歌のようなものです。月旅行したさに、それを一般人に予約で売って月開発会社を創り、大富豪になったハリマンは、妻の猛反対で自身は月に行けず、超多忙の果てに、老人になってから、「失踪」までして、その夢を果たします。
ただし、彼の会社は、国連から独占権の許可を取る際、「何人も肉体的に耐えうるという資格なしには、宇宙に出していかん」条件を決めてしまったので、しまったこととなり、場末のサーカスのロケットの操縦士に操業停止覚悟の豪華違法取り引きを持ちかけて、操縦士が逮捕にきた保安官補を軽く殴り倒すなどの活劇の末、「狂気号」(Lunatic)と名付けた中古ロケットで月に到達し、夢の月の地面に座ったまま、至福の死を迎えるのです。
「至福の死」でも、やはり、縁起が悪いからでしょうか、それとも、アメリカのメディアも日本と同じく健忘症なのでしょうか。2,000万ドルの狂気の物語としては、少し寂しい気がしました。ハインラインは、元海軍の軍人だったとかで、発想は、いかにもアメリカ風の鼻に付くところがありましたが、小説としては、実に面白いのでした。
ああ、それにしても、日本円で25億円、「パラダイス」の一語が感想だったそうですが、極楽蜻蛉よりも極道遊び人でしょうか。
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